【森川葵インタビュー】20代最後にやりたい“諦めがつかない”こととは? エッセイ集に詰め込んだ思い

【森川葵インタビュー】20代最後にやりたい“諦めがつかない”こととは? エッセイ集に詰め込んだ思い

2024.07.05 11:10

取材・文:瑞姫

撮影:稲垣佑季

編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部

大人になると、上手に生きるためのコツに“期待しない”が挙げられるほど、“まあ、仕方ないよね”とあっさりと諦めざるを得ないことが増えていく。そして、いつしかそれは当たり前になっていく。だって、その方が楽だから。

けれど、森川葵さんの初エッセイ集『じんせいに諦めがつかない』を読んでみると、案外私たちは諦めたふりをしながら、人生におけるほとんどの物事に諦めがついていないことに気づく。

芸能人として数多くのドラマや映画に出演し、成功しているであろう“森川葵”という完璧なようにみえる人物に、諦めがつかないなんてことはあるのか? と少し斜に構えながら読み始めた本だったが、エッセイの中で見せる彼女の素顔は、平凡な日常を生きる私たちと同じようなことで悩んだり、大なり小なり諦めのつかなさを持ちながら生きる、一人のアラサー女性と変わらなかったのだ。

今回は初のエッセイ発売日に29歳の誕生日を迎えた森川さんに、連載・執筆を経て変わった自身の心境の変化と、同じように“じんせいに諦めがつかない”人への、生き方のヒントを聞いた。

■2年半以上の連載を経て変わったこと

文章を書くのが昔から好きだったという森川さん。昔からブログはよく更新していたそうだが、「ブログは私のことを好きな人だけが見るという形だったので、自分の言葉が広まることはないなと思っていた」という。

だからこそ、今回のエッセイの元となる小説現代の連載が決まった時は「自分の言葉が自分のことを知らない人の目にも届くことがあるのかな、とうれしい気持ちと、変に伝わらないといいなという不安な気持ちが入り混じっていた」と、当時の素直な心境を明かしてくれた。

「私は話すのが苦手なんですけど、自分の気持ちを文章にすると伝えられる。書くことは、ちゃんと自分の気持ちを伝える手段ですし、書くことによって、自分のことについて自分で気づくこともできました。自分が好きなようにブログを書いていた時は、ただ思ったことを書いていたし、人に伝わらなくてもいいやと思って書いていたんですけど、『じんせいに諦めがつかない』は人に伝えたい、人に知ってもらいたい、本当に心の中で思っていることを書いていて、その時に自分ってこんなことを考えていたんだなって気づけました」

とはいえ、ドラマやバラエティ出演など、多忙な中での毎月のエッセイ執筆は、きっと“大変だった”の一言では言い表せないようなものだっただろう。「毎月となると自分で何が言いたいんだろう? 何を書きたいんだろう? と思うことが増えていきました。絞り出すのが大変でした」と振り返る森川さんだが、一体どうやってその課題を度々乗り越えていたのか。

「思いつかなくなった時は、もう“無理なものは無理!”と書かないようにしていたのですが、何か作品を観たり、人と話したりするのはした方が良いなと思いました。自分の中になかったものがインプットされるし、その中に何か題材が落ちていたりしました」

悩んでも答えが出ない時は出ない。自分の中に新しい視点を取り入れることは、悩みを解決する鍵になる。2年半以上にわたった連載で、徐々にできあがっていったという文章の書き方や向き合い方。森川さんにとっては文章を書く上での気づきだったが、これはきっと現代を生き、度々なかなか答えが出ないことについて悩みがちな私たちについても言えることのように思う。

さらに森川さんは、その中で徐々に変わっていったという自身の変化についても教えてくれた。

「人と会うことが昔より好きになりました。話すと気づかなかったことに気づかせてもらえるというか、自分一人で悩むと考え込んじゃうけど、誰かと話すと大した悩みじゃなかったなって思えたり。昔は自分のことに精一杯で、完全に一人でいる方が好きだったんですけど、今は人の意見を受け止められる幅も広げられたのかもしれませんね」

■「自由にふわふわと頑張りすぎずに生きていきたい」

エッセイにはさまざまな分野にわたって26個、森川さんの“じんせいに諦めがつかない”エピソードが載っている。同世代のアラサー女性におすすめしたいものを一つ教えてくださいとお願いすると、森川さんは悩みながらも「これがいいと思います」と『ARE YOU READY?』を挙げてくれた。

「今日より若い日は来ない」で始まる、「もう若くないし……」で諦めがちになりながらも、ひとかけらの希望を捨てきれずにいる自分にも刺さったエッセイだ。

「20代、30代の女性が悩む“これからどういう人生を送りたいか”についても書いてますし、自分の仕事が今楽しくて、でも諦めきれなくて、子どもを産むことを考えても、仕事をしたい気持ちもあるとか、そういうことを書いています。その中でも“今が一番若い”というのを自負しながら生きていくという話です」

インタビュー中、実際に言おうか迷っていた言葉をぶつけてみた。冒頭でも書いた、“森川葵”という完璧なようにみえる人物はじんせいに諦めがつかないことなんてあるのか? ということだ。そう思う人は私だけでないだろうと思ったからだ。

すると、森川さんは「ありますよ。いっぱい」と柔らかく笑い、「プレッシャーに感じた経験もたくさんありますよ」と明かしてくれた。

「プレッシャーがそもそも嫌いなんです。とにかくもう自由にふわふわと、がんばりすぎずに生きていきたい。だから、普通の人だとプレッシャーに感じることを、プレッシャーに思わないようにしているんです。プレッシャーだと思った瞬間に“大変なこと”になるので、多分なんとかなるでしょう! って気持ちでなるべく乗り越えるようにしてます」

アラサーになると、仕事はできて当たり前。やったことがないことも、「〇〇さんならできるよ」なんて言われて任されることも多いだろう。そんな人へはどうアドバイスを送るかと聞いてみると、森川さんらしい答えが返ってきた。

「会社員としての仕事だったら、ある程度のプレッシャーは必要かもしれないけれど、自分一人で背負いすぎず、周りに相談してプレッシャーを少しでも減らすのが大事なんじゃないかなって思います。一人でできると思わないし、なんでも教えてもらいながら、乗り越えていくことが多い。何かあった時は誰かが助けてくれると思います」

■じんせいに諦めがつかない私たち

エッセイをきっかけに、色々と考えてみると、人生は思いのほか諦めがつかないことだらけなのだと改めて気づかされた。普通のOLだけど、本当は好きなことで生きてみたいなとか、婚活中で理想の人がなかなか見つからず現実を見始めているけど、本当はハイスペイケメンにハリーウィンストンの指輪でプロポーズされたいなとか。

表の自分とは裏腹に、頭では捨てきれない理想をぐるぐると妄想していたりして、意外にも多くの人が人生に諦めがついていないのだろう。でも、アラサーになると「もう諦めなよ」とか「現実を見な」と言われることが一気に増えてくるのである。

そんな“じんせいに諦めがつかない”人へメッセージを求めると、森川さんは「諦めなくていいんじゃないかなと思いますよ。だからこそ私は今回『じんせいに諦めがつかない』というタイトルにしてるんです」と背中を押すような言葉をくれた。

「諦めちゃったら自分が楽しくないし、諦めない方が自分が楽しいと思うんです。実際にかなえばすごく幸せだし、かなわなかったら『上手くいってないな、自分の人生』って思うけど、諦めないことこそ、人生なんじゃないかなって。諦めちゃったら楽しくなくなっちゃうと思うんです。悩みすらも楽しめるような生き方が良いなって思います」

最後に、そんな森川さんが20代最後となる年にやりたい、“まだ諦めがつかないこと”について聞いてみると、目を輝かせながらこう話してくれた。

「いろんな人と出会ってコミュニケーションを取りたいですね。ワイルドスピードバラエティをはじめたくらいから、“時間がもったいないかも!”って思うようになってきたんです。だんだん体力もなくなっていくし、時間って無限じゃないなって気づき始めたので、尊敬できる人に出会って、話を聞いて、まだまだ自分っていろんなことできるなって感じたいです」

子どもの頃は「諦めないで!」と言われることがほとんどだったが、大人になると“諦めがつかないこと”はどこか往生際が悪いように見られることも増えてくるように思う。

けれど、“じんせいに諦めがつかない”ことこそ、きっと多くの人が持っている当たり前であり、その諦めのつかなさこそが、「まだやれるかも」「こんなこともできるかも」と、人生の希望、まだ見ぬ可能性へのわくわくをくれる、生きることのそのもののおもしろさなのだと、森川さんの言葉で改めて気づくことができた。

大抵のことは、諦めがつかない。だからこそ、私たちは希望を持って生きていける。森川さんの言う“じんせいに諦めがつかない”生き方こそが、人間らしく、楽しみながら生きるコツなのだと考えると、自分の諦めのつかなさも愛し、これからの人生も、少し肩の力を抜いて楽しめる気がした。

じんせいに諦めがつかない(講談社)

多才な女優・森川葵さん初のエッセイ集。2年以上にわたる小説現代の連載を加筆修正。書き下ろしを加わえた全26篇のエッセイと自身による手描きのイラストが収録されています。

このエッセイを読んでくださるみなさまが、何かを感じ、拾いあげ、確かに私もなぜだか人生諦めきれないかもなぁと思ってくれるだけで出版される意味があるのかと思う。――森川葵

URL:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000389265

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