10年前に放送された坂元裕二脚本作が配信中＜問題のあるレストラン＞

2025.06.20 07:30

連続ドラマを見る際に、作品選びのポイントとなることは何でしょう。好きな原作ということや、出演する俳優陣のファンだったり、前評判の良い話題作であったり、ヒット作のスタッフが再集結して制作していたりなどなど、気になる点は人それぞれあるだろう。今から10年前に放送されたドラマ「問題のあるレストラン」(2015年、フジテレビ系)は、真木よう子主演、坂元裕二脚本の作品である。犯罪被害者と加害者家族の交流を描いた「それでも、生きてゆく」や結婚や家族の在り方をテーマに置いたラブコメ「最高の離婚」などのヒット作を手掛けた坂元脚本は、少し複雑な環境で生きる登場人物たちによって視聴者に大きなテーマを呼びかけるスタイルが多い印象だ。現在配信中の第1・2話を紹介する。 (以下、ネタバレが含まれます)

主人公・たま子がビストロレストランを開店する

FOD・TVerでは、イチオシ作品が毎日更新される「#ドラ活浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンを開催中で、「問題のあるレストラン」は第1〜3話が無料公開されているほか、全話を順次無料配信している。

今作は、職場で理不尽な目に遭った主人公の田中たま子(真木)が、友人や元同僚とビストロレストランを開店させるドラマ。社会や家庭で我慢をし続けてきた女性たちの戦いを描く。

第1話は、真面目で働くことが大好きな独身女性・たま子が、カリスマ社長・雨木(杉本哲太)率いる大手飲食会社“ライクダイニングサービス”で、セクハラやパワハラが日常的に横行されていることに対して辟易する。それでもたま子は、物件や料理人探しに奔走し、やがて優れた腕を持つシェフ・門司(東出昌大)と出会う。そんな折、たま子は、高校時代の友人でもある同僚・五月(菊池亜希子)が、屈辱的ともいえるひどいセクハラを受けた上に異動させられたことを知り、ある復しゅうを決行。

職を失ったたま子は、元同僚でプライドばかり高い東大卒の結実(二階堂ふみ)、家出中のフリーターで人間嫌いの千佳(松岡茉優)、高校時代の同級生で子どもを連れて家を出た専業主婦・鏡子(臼田あさ美)、前の会社の同僚だが謎の多い奈々美(YOU)、女装好きのゲイという理由で仕事を得られなかった一流パティシエのハイジ(安田顕)に声をかける。

たま子たちは自分を“不良品”と蔑む専業主婦・鏡子の心を救う

続く第2話。たま子はビストロをオープンさせるべく、表参道にある“獅子丸ビル”屋上の格安ペントハウスを借りた。たま子、ハイジ、千佳の3人は店の階下で共同生活を送りながら、経費節減のため、可能な限り自分たちの力で準備を進めようとしていた。

同じころ、息子を連れてファミレスを訪れた離婚調停中の専業主婦・鏡子は、奈々美と出会う。奈々美は、東大卒の結実はともかく、鏡子はたま子の店に参加すると思った、と告げた。すると鏡子は、一度も働いたことがなければ料理もできない自分は不良品だと言い出す。たま子たちが、資材を搬入していると、それに気づいた門司や藍里(高畑充希)、土田(吹越満)ら、“ライクダイニングサービス”社の面々が近づいてきた。たま子たちが、門司がシェフを務める新店舗“シンフォニック表参道”のすぐそばでビストロをオープンさせることを知った土田たちは、口では応援しているなどと言いながらも完全にバカにしている。

第1・2話で描かれるのは、たま子を中心とした社会で理不尽に虐げられてきた面々と、彼らを小バカにして威張ってくる大企業の人々らの対比。女性だからというだけ、性的マイノリティーなだけなどといった理由で自由を奪われているたま子たちが集まって、起死回生を図っていくストーリー。

第2話で夫からモラハラを受け、自信も社会経験もすべて奪われた形の専業主婦・鏡子が卑屈な発言ばかり繰り返していたところがリアルだった。料理も「私の料理はまずい」と悲観的になっていた鏡子だったが、本人が思い込んでいるだけで実際は飲食店で即戦力として働けるほどの腕があったのだ。たま子が「誰？どんな言葉があなたをそう思わせたの？」と強く問うシーンは、彼女の良さを切り取っており、脚本担当・坂元の傷ついた人を救いたい思いが込められていたように感じる。どんなレストランになっていくのか、10年前の作品を見返してみたい。