飲み屋に臆病『ケンコバのほろ酔いビジホ泊』／テレビお久しぶり#155

2025.06.06 19:00

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『ケンコバのほろ酔いビジホ泊　全国版』(BS朝日)をチョイス。

飲み屋に臆病『ケンコバのほろ酔いビジホ泊』

ケンドーコバヤシが日本全国のビジネスホテルを訪れ、付近の飲み屋で一杯やる番組、『ケンコバのほろ酔いビジホ泊』。内容は本当にそれだけ。超自然体のケンコバがしっぽりとした雰囲気を演出する、大人の番組である。それにしても、「しっぽり」という言葉がこれほど似合う芸能人がいるだろうか。

そんなミスターしっぽりが今回訪れたのは阿佐ヶ谷！私の最も好きな街。TVerの番組一覧を眺めていて、「阿佐ヶ谷」という文字が入ったらとりあえず見ることにしている。なんとケンコバは阿佐ヶ谷に初上陸とのことだが、私は中央・総武線沿いを東京の中心と考える典型的な中央線ユーザーなので、彼はさぞ水中でも長く息を止められるのだろうと思った。阿佐ヶ谷で酸素を補給せずとも東京で生存しているのは驚きの一言である。

とはいえ……私も阿佐ヶ谷についてはよく知らない。住んでいたこともあるし、人生で最も多くの思い出が詰まっている街が阿佐ヶ谷だ。しかし、飲み屋街としての阿佐ヶ谷はまったく知らない。むしろ、酒飲みではない私からすれば、”チェーンの居酒屋の少ない街”である。目利きの銀次か鳥貴族、餃子酒場、ダンダダンくらいかな。かぶら屋と四文屋はあるけど、かぶら屋とか四文屋って、あんまりチェーン店という感じではないよね。「チェーンで飲むのはなんかなあ……」という人でも、四文屋には行くだろうし。私は、酒が特に好きでない分、いかにもチェーンっぽい感じに安心を覚える。「まあ、とりあえず鳥貴族にしとけば、ひどいことにはならないだろう」といった具合に。

私は、もう30歳を目前にしているにも拘わらず、「飲み屋に入ると怖い目に遭うんじゃないか」という緊張感を未だに持っている。チェーンなら大丈夫とする理屈もよく分からないのだけど、とにかく私は、飲み屋が怖いのだ。友人から居酒屋に誘われても、「そこ大丈夫なところ？」と必ず聞く。「大丈夫って何が？」と聞き返されるので、「食べログ見せて」と返す。大丈夫そうなら「大丈夫そうだね」と言い、大丈夫じゃなさそうなら「大丈夫じゃなさそう。鳥貴族にしようね。」と言う。友人はひたすら「ねえ、大丈夫って何が？」と言い続けている。

もちろん実際に怖い目に遭ったことはほとんどないし、番組内でケンコバの訪れていた「大衆割烹和田屋」は本当に良さそうなお店だった。料理も美味しそうで、雰囲気もすごくいい。まさに”大丈夫なところ”である。前を通ったことは何回もあるから、今度、勇気を出して入ってみることにしよう。目の前の扉を開けるか、開けないか？一度の人生、開けたほうが何かとおトクなのである。

■文／城戸