

入江悠監督、初タッグの主演・森山未來を絶賛「歌舞伎町に生きている人になろうとしていて、その繊細さに感心しました」

森山未來が主演を務め、入江悠監督と初タッグを組んだLeminoオリジナルドラマ「飛鳥クリニックは今日も雨」が全話独占配信中。同ドラマは、Xのフォロワーが90万人を超えるインフルエンサー・Z李氏の小説を、「あんのこと」(2024年)の入江監督が映像化したもの。東洋一の歓楽街といわれる歌舞伎町で看板のない“何でも屋”を営む主人公・リーが、詐欺や未成年売春といった事件の真相に迫っていく。
このほど、森山が演じる主人公のリーをはじめ、勝地涼演じる純、馬場ふみかが演じるリーのかつての恋人・美香など個性豊かなキャラクターが織り成す人間模様を描いた作品について、メガホンをとった入江監督にインタビューを行い、キャスト陣の印象や撮影エピソード、ターニングポイントとなった作品などを聞いた。
「歌舞伎町で撮影ができるんだったらやりがいがあるなって」
――「飛鳥クリニックは今日も雨」の監督を担当することになった経緯から聞かせてください。
プロデューサーの武藤(大司)さんに声をかけていただいて、「原作が面白いから」ということで原作の小説を読んでみたら本当に面白かったんです。ほぼ歌舞伎町の話なので、「歌舞伎町で撮影ができるのかな?」って思ったんですけど、もし撮影ができるんだったらやりがいがあるなって思いました。
これまで映画や地上波のドラマはやってきましたけど、配信のドラマというのはやったことがなかったので、挑戦してみたいなという気持ちもあったので引き受けました。
――原作を読んだ印象はいかがでしたか?
僕が今まで読んできた歌舞伎町を舞台にした小説、作品とは全く違っていて「これ、どういう意味?」っていう単語がいっぱいありました(笑)。詐欺の手口もそうですし、専門的な単語がいっぱい出てきていて、ドラマの中でも結構そのまま使っています。
単語自体を知らなくても、話の流れで「こういうことを指しているんだろうな」とか「こういう意味かな」と理解できていくと思ったので、野暮な説明とかはせずドラマでもバンバン使わせてもらっています。
――確かに初めて聞く言葉でも何となく意味を理解しながらせりふを聞いていたような気がします。
そうなんです。広義な“お仕事もの”みたいな感じがあって、いろんな専門職のドラマと同じように、一個一個の単語は知らなくても見ているうちに想像していけるんです。
――医療ものや司法ものと同じ感じということですね。
そうです。あと、これはアウトローですけど、食べていくために必死に何かをやっているんだなっていうのも伝わってくるんですよね。自分が生きている世界とは別の世界ですけど、共感できる部分もたくさんありました。
――主人公のリーは探偵のようでありながら、より自由に生きている人のような感じですね。
探偵ものは結構好きで、「探偵物語」(1979-1980年、日本テレビ系)や「傷だらけの天使」(1974-1975年、日本テレビ系)などを見ていましたが、それらをさらに現代的にアップデートしている主人公像だなと思いました。“何でも屋”でもあるし、事件の“解決屋”でもあるし、それで金にはうるさいみたいなところもあって、新しいタイプだなと。
森山は「すごく考えてこられる方なんだなと」
――主演の森山さんとは初タッグでしたが、ご一緒した印象は?
役に関して、すごく考えてこられる方なんだなと思いました。原作の小説に、主人公・リーの生い立ちと言いますか、バックボーンは描かれていないので、人物像をつかまえるのが難しいんじゃないかなと思ったんですけど、衣装とか小道具にもすごくこだわって、ちゃんと歌舞伎町に生きている人になろうとしていて、その繊細さに感心しました。
――服装や風貌的にも歌舞伎町の街になじんでいるように見えました。
そうなんです。あと、撮影中に脚本のこのセリフはこういうふうに言ったほうが面白くなるんじゃないかとか、アイデアをバンバン出してくれる方で、現場のグルーヴ感みたいなのも大切にされていて、さすがだなと感心しました。あと、固有名詞とか専門用語はバンバン入れていったほうが面白いタイプのドラマなので、「ここはこういうセリフないですか?」みたいなやりとりも現場で多かったです。
――メーキング映像の中で、森山さんが「監督の距離感が、踏み込み過ぎず、離れ過ぎず、いい距離感だった」と話されていましたが、役者の方との距離感は普段から意識されているんですか?
いや、全然意識してないです。素でやっていますけど、そう言われることは確かに多い気がしますね。昔から「何を考えているのか分からない」って言われることも多くて(笑)。
――そのいい距離感があるからこそ、アイデアを伝えたり、意見交換をしやすかったりするのかもしれないですね。
どうなんでしょうね。あと、監督と俳優では実際に街に行って感じることが違ったりするので、こっちから一方的に与え過ぎて俳優の感性をつぶさないようにしたいなという気持ちはあります。
――出演者側の視点もありますからね。
監督と違って、俳優は生身の体を武器にしているので、実際に街を歩いたり空気を吸ったりすると体に感じるものが大きいと思うんです。それを逃さず捕らえてあげたいという気持ちはいつも持っています。特に歌舞伎町みたいな場所がメインになってくるとより出てくるのかなって。そういうことで言うと、森山未來さんが演じているのを観察しながら撮っていた感覚はあります。
生々しい描写も「配信ドラマの新しい可能性」
――馬場さんの美香、勝地さんの純もハマり役でした。
馬場ふみかさんは台本通りに演技ができる人だったりするんですけど、森山未來さんとのシーンでは2人でやりとりをしていてだんだん芝居が膨らんでいったりすることもありました。役どころとしては、かわいらしいところと悪どいところ、ちょっともろいところとかいろんな側面があって、そういう絶妙な役をできる人ってなかなかいないと思うんです。馬場ふみかさん以外、思いつかないところがありますね。
勝地涼さんは、森山さんと何本も共演してきていますし、20年来の付き合いということもあってバディ感というか、兄弟みたいな関係性が自然と作られていました。本人も役に近いところがあると思うんですけど、スタッフもみんな「勝地さん、面白いね」って言っていました(笑)。
――そして配信ならではの表現方法に関してはどうですか? 終盤にある人物が車で轢かれるシーンはかなりリアルな感じがありました。
実際の歌舞伎町でも悲惨な事件とかいっぱいあると思うんですけど、生々しい描写をして、それを見てもらえるというのは配信ドラマの新しい可能性な気がしています。
このドラマはポップなお話なんですけど、その下のレイヤーに人間の悲しさとか業みたいなのがあって、それを隠してしまうとつまらなくなる部分があるので、尖ったまま表現できてよかったと思っています。
――これから見てみようと思っている人に、注目ポイントなどを教えてください。
歌舞伎町でひたすらロケしているので、見終わった後、気になったところがあったら実際に歌舞伎町にあるので、行ってみるというのもいいかもしれないです。有名な所で言うと、バッティングセンターは昔からあって、歌舞伎町の名所だったりします。普段、撮影でなかなか貸してもらえないんですけど、今回は撮影ができました。リーくんが韓国料理を食べているお店も実際にあるお店だったりします。
歌舞伎町という街の風景の変化みたいなものを見てもらうと面白いですし、実際に行ってもらうとよりリアルに感じてもらえると思います。あれだけ多種多様な人がいる街というのも世界的に見てもあまりないと思うし、このドラマに登場するキャラクターも個性的な人ばかりなので、リーくんはもちろん、いろんなキャラクターに感情移入して見るとか、さまざまな視点で見えてくるシーンもあると思いますのでおすすめです。
クリエーターとしてのターニングポイントは「あんのこと」
――作品からは少し離れますが、監督自身、ターニングポイントとなった作品というと?
去年公開した映画「あんのこと」です。いつも作品を作りながら、その時代の空気だったり、社会の中で変わっていくものが捉えられたらいいなと思っていて「あんのこと」は公開後、たくさんの評価を受けたことも含めて、自分の今後の指針になる作品になりました。
「あんのこと」は赤羽が舞台で、今回の「飛鳥クリニック―」は歌舞伎町が舞台です。街と人は切り離せない関係にあると思っていて、作品を撮るときには両者を同時に切りとれたらと考えています。そういう意味では「あんのこと」と「飛鳥クリニック―」は共通している部分もあるんじゃないかと思っています。
――最後に、監督の作品に感化されて映画界を目指す人もたくさんいると思いますので、そういう方々にメッセージをお願いします。
これだけたくさんのプラットフォームや表現するメディアが増えてくると、映画監督に憧れて映画界に入ってくる人はもしかしたら今後どんどん減るのかもしれません。でも、今回もそうですが、映画もドラマも人間同士が作っているので、森山未來さんや勝地涼さんや馬場ふみかさんなどの俳優、それからスタッフ、それぞれがアイデアを持ち寄って、みんなで考えたものが現場で生まれてきた時にすごく楽しさを感じるんです。
実際、歌舞伎町で撮影していて何かトラブルが発生したとしても、そこには共同作業している面白さが絶対にあるんです。もし、映画とかドラマの世界に入ってきたいという人がいたら、“人と作る”ということをぜひ楽しんでもらえたらいいんじゃないかなと思います。
◆取材・文=田中隆信
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