「テレビお久しぶり」

倍速視聴について『さらばのこの本ダレが書いとんねん!』/テレビお久しぶり#154

2025.05.30 19:00
「テレビお久しぶり」

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『さらばのこの本ダレが書いとんねん!』(テレビ大阪)をチョイス。

倍速視聴について『さらばのこの本ダレが書いとんねん!』

さらば青春の光のふたりが、ひとクセある本の著者を招き、気になることを聞きまくるトークバラエティ、『さらばのこの本ダレが書いとんねん!』。今回は『映画を早送りで見る人たち』の著者、稲田豊史をゲストに迎え、バチバチと応酬を交わしていく。この稲田氏がずいぶん喋れる人なので、形式ばったインタビューというわけではなく、非常に活気のあるコミュニケーションが持続する回だ。番組側が『神回』と銘打つのもよく分かる。

映画・ドラマの倍速視聴は、まさに令和を象徴する現象だ。もちろん、令和以前から倍速で見る人はたくさんいただろうけれど、ここまで「当たり前」になったのは、やはり”タイパ”を重んじるZ世代たちによるものだろう。Z世代でない私は(かつてWikipediaでは「1996年生まれから」と定義されていたのだが、いつの間にか「1997年度生まれから」と修正されていた。96年1月生まれの私は、その修正により、Z世代ではなくなったのだ)、映画・ドラマを倍速で見るということはしないが、供給過多なコンテンツに取り囲まれている時代であるのは事実だし、たとえば皆が知っている流行りのドラマを倍速で見たりといった、あくまでコミュニケーションのために流行りの文化を効率よく消費しておくという動機が不誠実なものだとも思わない。しょせん映画、しょせんドラマである。見ても見なくても何も変わらない。コミュニケーションのほうがよほど大事なのだからね。

「観客がどう消費しようが勝手だろ」という正論に言い返すことができない以上、倍速視聴の是非を問うのはそれこそ無駄な気がしていて(著者の稲田氏も、自分は静観をするだけだと言っている)、私はどちらかというと、映画・ドラマにおける「理解」とは何か?というところに興味がある。たとえば、倍速視聴への批判として、「内容をちゃんと理解できない」という意見がよく見られるが、「内容を理解する」とは、具体的に何を指しているのだろう。

まあ、物語に違いない。物語の起承転結を理解すれば、「内容をちゃんと理解した」とジャッジされるのだろう。しかし、映画は「見る」メディアである。物語を理解すればそれでOKというならば、映画を「見る」必要はない。脚本を読めばそれで済む話だ。倍速視聴の是非を問うとき、多くの場合に「それで物語を理解できるか」というテーマに固定されるのが、ちょっと寂しい。たとえ物語が理解できなくたって好きになる映画はあるし、物語を気に入ったうえで嫌いな映画だってある。そもそも、あらゆる表現において、消費者たる我々は、それを「理解」するのがゴールなのか?

何が言いたいのかというと、映画を1.5倍速で再生すると、その是非はともかくとして、そこに、新しく”見るべき対象”が現れる、ということだ。たとえば音楽を倍速視聴する場合、時短を狙ってというよりは、”倍速にしたバージョンを聞く”という感覚があるのではないか。むしろ0.5倍速にして聞くことだってあるかもしれない。それと同じように、映画を1.5倍速にしたのなら、それによって現れる映像に真摯に目を向けるべきではないかと思うのだ。これをベースとした議論ならば楽しいだろう。「『タイタニック』は1倍速で見るより1.34倍で見るほうが凄い」みたいなね。

■文/城戸

関連リンク

関連記事

  1. 新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    WEBザテレビジョン
  2. 東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    WEBザテレビジョン
  3. <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    WEBザテレビジョン
  4. 松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    WEBザテレビジョン
  5. ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    WEBザテレビジョン
  6. 瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    WEBザテレビジョン

「ニュース」カテゴリーの最新記事

  1. 小栗旬「ニノさん」初登場 出演に至った理由に二宮和也感激「うれしい」
    小栗旬「ニノさん」初登場 出演に至った理由に二宮和也感激「うれしい」
    モデルプレス
  2. 2025年「モデルプレス上半期の顔」発表 timelesz・希空・大森元貴ら10組【独自調査】
    2025年「モデルプレス上半期の顔」発表 timelesz・希空・大森元貴ら10組【独自調査】
    モデルプレス
  3. ほっぺハートでファンサ…音尾琢真“山P”のギャップショットに「かわいすぎる」「一緒に働きたい」と反響<キャスター>
    ほっぺハートでファンサ…音尾琢真“山P”のギャップショットに「かわいすぎる」「一緒に働きたい」と反響<キャスター>
    WEBザテレビジョン
  4. 柳原可奈子、親子で笑顔の“ピースSHOT”を公開して「長女の就学までの道」を明かす
    柳原可奈子、親子で笑顔の“ピースSHOT”を公開して「長女の就学までの道」を明かす
    ENTAME next
  5. 吉谷彩子、検事の事務官役に「惣領美晴は一番視聴者に寄り添い共感できる人物」大西流星、観月ありさ、寺脇康文の出演も決定<能面検事>
    吉谷彩子、検事の事務官役に「惣領美晴は一番視聴者に寄り添い共感できる人物」大西流星、観月ありさ、寺脇康文の出演も決定<能面検事>
    WEBザテレビジョン
  6. 麻生久美子“あやめ”、怒りを増幅させる塩野瑛久“凍也”からの復讐に怯える<魔物>
    麻生久美子“あやめ”、怒りを増幅させる塩野瑛久“凍也”からの復讐に怯える<魔物>
    WEBザテレビジョン
  7. 志尊淳が「24時間テレビ」チャリティーパートナーに『自分が大きな病気をした経験も含めて、皆さんの力になれたら』
    志尊淳が「24時間テレビ」チャリティーパートナーに『自分が大きな病気をした経験も含めて、皆さんの力になれたら』
    WEBザテレビジョン
  8. 「奪い愛」シリーズ最新作、8年ぶりテレ朝金曜夜に再来 松本まりか&安田顕が“ドロキュン”劇場を展開<奪い愛、真夏>
    「奪い愛」シリーズ最新作、8年ぶりテレ朝金曜夜に再来 松本まりか&安田顕が“ドロキュン”劇場を展開<奪い愛、真夏>
    WEBザテレビジョン
  9. 志尊淳「24時間テレビ48」チャリティーパートナー就任「大きな病気をした経験も含めて、何か皆さんの力になれたら」
    志尊淳「24時間テレビ48」チャリティーパートナー就任「大きな病気をした経験も含めて、何か皆さんの力になれたら」
    モデルプレス

あなたにおすすめの記事