横浜流星“蔦重”、片岡愛之助“鱗形屋”から手渡されたものに感涙＜べらぼう＞

2025.05.21 12:04

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)の第19回が5月18日に放送。サブタイトル「鱗(うろこ)の置き土産」を意味する展開が視聴者の涙を誘った。(以下、ネタバレを含みます)

数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く

森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く痛快エンターテインメントドラマ。

蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎の一つといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。

幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙、美人画が大評判となる喜多川歌麿役で染谷将太らが出演。語りを綾瀬はるかが務める。

蔦重と鱗形屋の熱い本作りが再び

店を畳む鱗形屋(片岡愛之助)のお抱え作家だった恋川春町(岡山天音)を獲得しようと蔦重が奔走した第19回。獲得に結び付くきっかけを与えたのは、鱗形屋だった。春町の行く末を案じたことだけでなく、蔦重が商いの“償い”としてひそかに自分のところが出している吉原細見を仕入れてくれていたことを知り、自分ができる“償い”を考えてのことでもあった。

振り返れば、春町が鱗形屋から出した代表作の一つ「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」は、元は蔦重と鱗形屋が一緒に知恵を絞ったもの。第6回で描かれた、2人がアイデアを出し合う様子は熱かった。

その熱さが今回戻ってきて、見入った。本作りが好きな者同士、通じ合うものがあるのだ。しかし、2人にはそれ以上の“つながり”があったことが判明する。

蔦重の思い出の本が鱗形屋から出されたものだった

生真面目な春町が蔦重の元で本を書くことを決め、鱗形屋に「すまぬが不義理をする」と頭を下げたときのこと。鱗形屋は、うれしくて思わず手をたたきそうなしぐさをしたが、自分が蔦重とたくらんでいたことをバレてはいけないと「なにゆえ、よりによって、あんな盗人のところへ！」と声を荒げるフリをした。だが、まだ頭を下げたままの春町から見えないのをいいことに、またニンマリとした。このあたりの片岡愛之助の演技の間がうまかった。

そんな鱗形屋は、改めて蔦重に会い、詫びを入れた。「分かってたんだよ。おめえを恨むのは筋違えだってことは。けど、そうでも思わなきゃ気力も出なくてよ」と。蔦重は「おれだって、あわよくば取って代わりてえって思ってたし…。お互いさまでさ」と返した。

日本橋にある店は引き払い、小売りでもすると言う鱗形屋。蔦重にもらってほしいと、かつて鱗形屋から出版した本の板木で、火事でたった1枚だけ焼け残ったものを手渡した。それを見た蔦重は瞬時に子ども向けの赤本「塩売文太物語」のものだと気付いた。

「これ、初めて買った本なんでさ。駿河の親父様に初めてもらったお年玉握り締めて買いに行って。うれしくて、てめえの名前書いて。そうか、これ鱗形屋さんだったのか。俺にとっちゃ、こんなお宝はねえです」と涙をこぼした。

すると鱗形屋ももらい泣き。「うちの本読んだガキが、本屋になるってよぉ。びっくりがしゃっくりすらぁ！」と感動してのことだ。

「塩売文太物語」は蔦重が初めて買った本であり、幼なじみの花魁・瀬川(小芝風花)との思い出の本でもあった。第1章で何度も出てきた本が、伏線としてつながっていた鮮やかさは見事。そして“本屋”の魂が受け継がれていくことも伝える。

視聴者からは「今回は塩売文太の使い方がうまいに尽きる」「あそこで塩売文太の板木を出してくるのはズルすぎる」「これは泣く」「運命的なつながり」「最高だな」などの反響があった。

◆文＝ザテレビジョンドラマ部