貧乏について『じっくり聞いタロウ～スター近況(秘)報告～』／テレビお久しぶり#151

2025.05.09 19:00

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『じっくり聞いタロウ～スター近況(秘)報告～』(テレ東)をチョイス。

貧乏について『じっくり聞いタロウ～スター近況(秘)報告～』

ゲストの意外な一面を掘り下げるトークバラエティ、『じっくり聞いタロウ』。今回はバッドボーイズ・清人が登場し、幼少期の貧乏生活を振り返る。また、実家が大金持ちのタレント・松尾紗夜も登場し、清人とはまったく対照的なトークを披露していく。それを受け止めるMCは、名倉潤と熊切あさ美だ。

編集に独特のクセがある番組だ。一連の流れがありそうなトークを部分的に採用し、繋いでいくような作り方に見える。だからダメだとも言えそうなのだが、私はこういうぶつ切り感が好きだ。たとえばスムーズな編集にはこちらに映像の作為を感じさせない機能があるわけで、こうしたスムーズでない編集を見ると、我々は映像の存在に気が付くのだ。バカみたいな話だが、我々は映像に入り込めば入り込むほど、映像の存在を忘れるのである。テレビでサッカーの中継を見たとき、我々は「サッカーを見た」と認識する。でも違う。見たのはあくまでも映像だ。ただ、テレビでサッカーの中継を見た人が「サッカーを見た」と発言しても、違和感を覚える人はほとんどいない。これが映像の存在を忘れている状態なのだが、もしその映像が、ゴールキーパーの靴をずっと映し続けたらどうだろう？我々は違和感を覚えて、自分とサッカーとの間に、ひとつの境界があることにやっと気が付く。映像は常にその身を隠そうとしていて、その尻尾をとらえるのはむずかしいのだ。

思いっきり脱線してしまったが、さて、私も幼少期は大変貧乏であった。さすがに清人ほどではないし、私はロクデナシの父親が去ってからは人並みの生活を送れたけども、風呂のないプレハブで過ごすのは子供ながらにイヤなものだった。友達の家はどれもデカくて(一階と二階があるなんて！)、家に帰るのが憂鬱だったのだ。番組内では、とても人家とは思えない清人の実家が紹介されるが、実際ああいう家って近所に結構あったなあ。清人とは同郷であることも相まって、なんだか懐かしくなってしまった。

私は今も貧乏だし、そういう育ちだから、性根自体が貧乏だ。大人になってデカく稼いでやるぜといった野心が培われるわけでもなく、カネに対する不信感だけが着々と育っていった。父親に、ランドセルに入れていた給食費を盗まれたとき、なんか、すべてがマヌケに思えたのだ。学校に払うために母親が用意したものを、父親が盗んで、パチンコに突っ込んで……そのあとは？という。あんな紙切れの織りなす円環のキリのなさに戸惑ったのかもしれない。貧乏というのは、やっぱりイヤなものだ。貧乏がイヤなら就職すればいいじゃんとか、そんな話じゃないんだな。私は就職もイヤなのだから……。

■文／城戸