“最高の瞬間に死ぬ”…母親に縛られてしまった少女の復讐物語に「頼むから幸せになって欲しい」の声【漫画】

2025.04.28 08:30

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「ガンガンJOKER」にて連載中の『オバイケ未来案内所』(SQUARE ENIX刊)の1エピソード、「4人目篠田奏莉亜」を紹介する。作者の高瀬飛鳥さんが、2月24日に「お母さんのために一生懸命な女の子の話」と添えてX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、5000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、高瀬飛鳥さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

未来視の力を持つ占い師を頼る少女の復讐

未来を視ることのできる尾羽毛一生(おばいけ・かずみ)が開いている占いサロン「尾羽毛未来案内所」に、小学生とは思えない落ち着きと品の良さを持った少女・篠田奏莉亜がやってくる。彼女は受験に失敗して不本意な結婚をすることになった母親から“自分のようにはならないように”と勉強を強いられ、歳相応のこともできずにいた。

そんな奏莉亜の依頼は、次におこなわれる模試の内容を事前に知ること。模試の度に一生のもとを訪れては同じ依頼をし、奏莉亜は模試で1位となる。さらに入試の際にも依頼をして内容を聞き、満点を取った奏莉亜は首席入学することに。親に従順なようすで振舞う彼女だったが、実はその真の目的は「母親の最高の瞬間に死ぬこと」だった。

真の目的を見抜いていた一生は入試が終わった後、屋上から飛び降りようとしていた奏莉亜のもとに向かう。飛び降りを止めに来たのかと憤り、母親や大人たちへの復讐心に燃える奏莉亜。しかし一生には奏莉亜の未来が視えていた。いま飛び降りて自殺しても、奏莉亜が復讐したい母親は“かわいそうな母親”として幸せな未来を送る。それを聞いて絶望する彼女に、一生は思いもよらない提案をする…。

この復讐を描いた漫画を読んだ人たちからは、「笑顔で狂えるの最高」「否定されがちなことを肯定されて救われたのかな」「頼むから幸せになって欲しい」「暗いのに明るい話」など、多くのコメントが寄せられている。

肯定されない願いを肯定してくれる未来案内所

――本作のお話の発想の源はどこだったのでしょうか？

周りからは肯定されない願いを肯定してもらえる、という話をしっかりやりたいと思ったのが最初だった気がします。自分自身もそんな風に受け止められたいし、受け止められるようになりたいとずっと考えていたので、根源的なものかもしれないです。

――本作では、復讐心に燃えながら勉強に励む少女の姿が非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい！」というポイントがあればお教えください。

自殺を肯定する話になっているのですが、奏莉亜がしてほしかったのは自分を受け入れてくれる、向き合ってくれることだと思っています。それをしてもらえずに今回のような願いを抱えることになってしまったわけですが、願いの形は違えど奏莉亜と同じ境遇になったことのある方は少なからずいるのではないかな、と思います。あくまでそういった『心』を救済する話だったと伝えられたらいいなあと思いながら描きました。それに関連して、奏莉亜がはたして本当に自殺を遂行するのかはわからないようにこだわったつもりです。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

一生の手にケーキが渡るのを見つめている奏莉亜のシーンです。優しかった頃の母親の記憶が重なるケーキは1番欲しいもの、それを諦めて復讐を決めた…奏莉亜はそんなつもりですが、表情に切なさや憧れなどが隠しきれていないところが愛おしくて気に入っています。アシスタントさんが気合を入れて描いてくれたケーキの作画もとてもお気に入りです。

――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。

今作はどんな願いでも叶える(手伝いをしてくれる)占い師として一生というキャラクターが中心にいるのですが、決してこの行いが善行ではない、と常に忘れないように気を付けています。前述の通り私の願いから生まれたキャラクターなので好意的になってしまうのですが、基本的にはどれだけ間違っていても咎めずに背中を押してくるという無責任な人なので…。今作以外にも、そういった特定のキャラクターの考えを贔屓していないかは気を付けています。

――今後の展望や目標をお教えください。

とにかくたくさんの人に読んでもらえるようにがんばりたいです！

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします！

これからも楽しんで読んでいただけるように精進していきたいと思っていますので、引き続き一生たち及び依頼者たちのお話を見守っていただけると嬉しいです！