昭和の名作ドラマ「おひかえあそばせ」、娘6人と居候男が織り成すホームコメディの“色あせない面白さ”とは

2025.04.06 10:00

日本テレビ系列で1971年に放送されていたドラマ『おひかえあそばせ』が4月7日(月)07：00から、CS放送「映画・チャンネルNECO」にて放送される。テレビジョン編集部では一足先にこちらの作品を視聴。すると、とても50年以上前の作品とは思えない、現代にも通ずる笑いと感動が凝縮されていた。昭和の名作ドラマ「おひかえあそばせ」の魅力について紹介する。

ドラマ『おひかえあそばせ』とは？

『おひかえあそばせ』は、池西猪太郎(大坂志郎)と6人の娘、そして居候の小早川薫(石立鉄男)を中心に展開される風変わりな家族の物語。

物語は、商事会社の庶務課長を定年する父・猪太郎が、パリに永住するというバイオリニストから格安で家を売るという話を持ちかけられるところからスタート。もともと6人の娘と狭い団地暮らしをしていた猪太郎は退職金を当てに、その話に乗る。

しかし、格安というのには理由があって、それは薫という名前の子どものことは、2階の奥の間にそのまま住ませてほしいというものだった。

薫という名前に早とちりした顛末

これを聞き「一部屋くらい」と猪太郎は、二つ返事で承知。しかし、いざ引っ越してみると、薫は女ではなく男。若手の社会派カメラマン、暗室付きの部屋に住んでいるが故になかなか簡単には出ていけないのだった。

これを聞き、娘たちは当然父、そして薫のことを責め立てるが、もう引っ越してしまったものはしょうがない。家族はしぶしぶこの奇妙な生活を送ることを決意する。

フラストレーションの爆発が、おもしろさ

見知らぬ娘6人が住むという状況は薫にとって、これまでの生活リズムが乱される日々。一方の娘たちも薫がいることで朝の身支度や炊事を思うようにできないとフラストレーションが溜まっていっていた。

それによる衝突がとにかくおもしろい。例えば、第2話では、薫が真夜中にインスタントラーメンを作っているところ、夜更かしの習慣のない池西家の女性陣は泥棒と間違え、柔道二段の腕前のすみれ(嘉手納清美)に投げ飛ばされる一幕も。もとはといえば、薫の家のはずなのに肩身狭く頭を抱える様子はなんとも不憫。しかし、その不憫さにクスッと笑ってしまうおもしろさがある。

しかも、薫も薫でただやられっぱなしというわけにはいかない。彼女たちをぎゃふんと言わせようと、金持ちの友人たちを招いて豪華な食材を買ってこさせ、それを使って豪勢な料理を振る舞い、なかなか豪勢な料理を食べる機会がない彼女たちにひけらかすのだった。

これには中学生のつぼみ(津山登志子)を中心に、羨ましい表情をする。しかし、大勢で食卓を囲みカレーを食べているうちに池西家の面々は笑顔に。家族のあたたかさを感じる回になっている。

このように、大家族ゆえのハートフルさ、そして本人たちは至って真面目に、トイレや朝風呂などといった日常に起こりうる小さなことで本気の衝突をしているユニークさが共存している。50年前の作品と思って構えることなく、初見でも幅広い世代の人が楽しめる題材で織りなす、時代に左右されない人間ドラマが展開されるのだ。

大御所俳優が集結した豪華さも必見

また、娘たちのキャラクターもチャーミングである。次女の梅子は、妹たちからキャップと呼ばれる姉御肌。欠点は大の男嫌いという役どころだ。そんな梅子を演じるのは、芦田愛菜が主演を務めた映画『メタモルフォーゼの縁側』で、日本映画批評家大賞におけるダイヤモンド大賞（淀川長治賞）を受賞した宮本信子。さらに、日本舞踊の名取りで夫に浮気されたことで実家に戻って来た長女・さくらは富士真奈美が演じている。

このほか、何かあればすぐに柔道技をかける三女すみれは嘉手納清美が、婦人記者で少々早合点な一面がある菊枝は岡田可愛が、ちょっぴり泣き虫な少女趣味のあやめは鳥居恵子が、末っ子の中学生つぼみは津山登志子が好演。

時代を代表する名俳優たちの若手時代を堪能できるという面でも、非常におもしろい作品だ。気になる方はぜひともチェックを！

◆文＝於ありさ