『私はキンモクセイの香りを知らない』より

父子家庭の少女が悩む「普通とは」 心無い言葉をぶつけられる姿と物語の結末に「胸がギュっとなってホッとした」の声【漫画】

2025.03.18 18:00
『私はキンモクセイの香りを知らない』より

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、『私はキンモクセイの香りを知らない』を紹介する。子育て情報サイト「kodomoe web」で連載中の漫画『不登校息子のおひるごはん』の作者で知られる花森はなさんが、1月19日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、3000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、花森はなさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

父子家庭で育ったはるを襲う、心無い言葉たち

父子家庭で育ったはる。学校では友達にキンモクセイの花の匂いを知らないと言ったら、友達から母親がいないから常識がないと言われることも。忘れ物をしてしまい先生からもよく怒られるため、それも“普通の家庭ではないから”なのかと思い悩んでいた。

ある日も忙しい父はお金だけを残して出かけており、はるはそれを持って校区外にあるスーパーへ向かう。しかし校区外には子どもだけで行かないという学校の決まりを破ってしまったため、後日先生に厳しく叱られてしまった。

「母親がいないから常識がないのね!!」と心無い言葉もぶつけられたはる。一方で父親にも「それくらいうまくやれよ」と怒鳴られてしまい、はるは「正しい」とはなにかわからなくなってしまった。するとしばらくして、学区内ではるが行方不明になっているという連絡が回りだし…。

この漫画を読んだ人たちからは、「胸がギュっとなってホッとした」「子どもに大人の『常識』を求めるのは酷」「責める前にサポートをと思わないと」「普通の人にはわからない所だよ」など、多くのコメントが寄せられている。

経験をもとに描かれた、子どもたちが感じる暗い思い

――『私はキンモクセイの香りを知らない』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

元々コンテストの応募用に描いた作品でした。何を描こうかな…と思った時にふと、子供の頃のことを思い出しました。実はずっと私自身がキンモクセイの香りを知らないことがコンプレックスだったんですよね。

キンモクセイだと花の知識に限った話だけですが、他にもみんなが当たり前のように親に教えてもらっていたことも知らないまま大人になったので、困ったこともたくさんあります。同じような人がXのpostで流れてきて、実はこういう人ってたくさんいるのかもしれないなと思って描きました。

――本作では、誰もいない家で「ただいま」と一人で口にするシーンが非常に印象的でした。本作を描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

私も母子家庭で、鍵っ子だったんです。誰もいない部屋に「ただいま」と言うのは日常茶飯事でした。他にもこだわった点は、主人公であるはるちゃんの髪がボサボサで整えられていないこと、女の子は長袖なのにはるちゃんだけ半袖を着ていること(男の子には半袖も着せています)、普段から親に気にかけてもらっていないということをそうやって外見的なことから表現していて、はるちゃんだけ他の女の子と意図的にずらして描いています。

――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

最後の「私はキンモクセイの香りを知らない(中略)知らないままで生きていく」でしょうか。実際のところ、私も芳香剤の香りでしかキンモクセイを知らないまま大人になりました。あとこの漫画をUPした時に北海道の方からたくさん頂いたご意見なんですが「北海道にはキンモクセイがないから私も知らない!」ということでした。キンモクセイに限らず、その時に必要な物事も、知らないままでも生きていけるんです。もちろん知っているにこしたことはないのですが、知らないことを絶望して生きていくより、何とかなるよねという気持ちでこういう終着点にしました。

――普段作品のストーリーはどのようなところから着想を得ているのでしょうか?

思いついた時にメモしています。あと友人からも引かれるのですが、記憶力がものすごくありまして、子供の頃の些細な出来事やその時の気持ちも細かく覚えているんです。こういうの描きたいな、と思った時に心の引き出しから出してくる場合もあります。

――今後の展望や目標をお教えください。

たくさん漫画のお仕事がしたいです!!今回描いた作品は残念ながら落選してしまったのですが、今年もいろんな公募や持ち込みにチャレンジしたいと思っています。もしどこか描かせていただけるところがありましたらよろしくお願いします…!

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!

普段は主にコミックエッセイを描いているのですが、現在kodomoe web様で「不登校息子のおひるごはん」という漫画を連載させていただいています。こちらは不登校である私の息子が試行錯誤しながら料理に目覚めていくお話です。実は不登校の子供のお昼ご飯どうする?っていうのは割と深刻な問題でして、現在不登校の小中学生は約34万人いますので少しでも参考になりましたらという思いで描いています。よろしくお願いします!

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