大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」より瀬川(小芝風花)

小芝風花が語る、瀬川の生きざまと蔦重への思い「瀬川は蔦重の真っすぐさを守るために生きてきた人」<べらぼう>

2025.03.09 20:45
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」より瀬川(小芝風花)

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”として時代の人気者になった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱と“エンタメ”に満ちた人生を描く“痛快”エンターテインメントドラマ。

「べらぼう」の物語も第10回の放送を終え、瀬川(小芝風花)の身請けが決まる中、蔦重(横浜流星)と瀬川の思いの行方に切なさが募る。WEBザテレビジョンでは、“伝説”の花魁・瀬川(花の井)を演じる小芝風花にインタビューを実施。役柄への思い、蔦重と瀬川の関係性について語ってもらった。

大河ドラマに出ることは大きな夢でした

――大河ドラマ初出演。“伝説の花魁”を演じることについてはいかがでしたか?

プレッシャー…!と思いました(笑)。“伝説”って付けないで、と(笑)。ですが、大河ドラマに出ることは大きな夢でしたし、祖父母が大河ドラマを好きなので、元気なうちに出演しているところを見てほしいと思っていて。出演が発表されてすぐ、「決まったよ」と報告しました。本当に喜んでくれたので、一つおじいちゃんおばあちゃん孝行ができた喜びがあります。

――花の井、瀬川と、役へのアプローチはどのようにされましたか?

まずは所作や、にじみ出るものをしっかりしたいなと。今回キセルであったり、文をお客さんに書くであったり、高下駄で歩くことであったり、習得しなければいけない技が多くて。息を吸うようにナチュラルにできないといけないと思ったので、まずはその所作を体が覚えるように家ですごく練習しました。普段たばこは吸いませんが、キセルでむせないようにニコチンが入っていないもので煙に慣れる練習をしたり、高下駄をお借りして家で練習したりしました。

台本を読むと瀬川の感情が痛いくらいに分かるよう描かれていたので、その複雑な思いを漏れることなくこぼすことなく、視聴者の方にお届けするにはどうしたらいいかと考えながら臨みました。

好きな人の前では素直になれない瀬川がいじらしい

――瀬川の魅力をどのように感じていらっしゃいますか?

自分の思いや感情を押し殺して、人のために、蔦重のために己を犠牲にすることはなかなかできることじゃないと思うんです。自らの境遇の中、蔦重の性格もよく知っていて、絶対に結ばれるわけがないと諦めもありながら、それでも彼の夢がかなうようにサポートしていて。身を切る仕事ですが、それでも「瀬川」という大きな看板を背負って立っている瀬川はすごくかっこいいなと思います。

瀬川は、裏では蔦重のために必死に動き、どんどん心も体も疲弊しているけれど、絶対に蔦重の前では疲れているそぶりを見せないんですよね。瀬川の仕事柄、蔦重に色仕掛けすることも方法としてはできたかもしれない中、それをせず、好きな人の前では素直になれない瀬川が本当にいじらしく感じて。だからこそ、蔦重の一言一言で喜んだり、地獄に突き落とされた気分になったりと、感情がかき乱されていくので、その機微を逃さないように丁寧に演じたいと思っていました。

――花の井と瀬川で違いを出した部分はありますか?

まず歩き方ですね。花の井の時は、上半身は揺れずに真っすぐで、足だけで八の字を描いたんですが、瀬川の道中では少しひねりを入れています。上半身を少しひねって歩くことですごみが出て貫禄が増したらいいなと。表情も花の井の時は、道中でお客さんを見た時に“この人はこういうふうにほほ笑んだら落ちるな”と周りをすごく意識して歩いていたんです。ですが、瀬川になってからは“簡単には手を出させない”というか。格が上がり、瀬川を背負うことの覚悟が見えたらいいなと、表情の変化を付けるように意識しました。

蔦重の目を見ることができなかったです

――小芝さんの中で、特に心を動かされたシーンを教えてください。

第9回(3/2放送)のお稲荷さんの前で蔦重から身請けを引き留められるシーンですね。すごく好きで、大事なシーンでした。瀬川は自分の苦しさやつらさを蔦重にあまり見せてこなかったんですが、蔦重に「あなただって私に吸い付くヒルでしょう」と言い返す場面は、瀬川の仕事がどれだけ大変かということを初めて出すところなんですよね。その後に、まさかの「俺が(瀬川を)幸せにしたい」と言われて。瀬川としてはまさか蔦重の口からそんな言葉が出るとは思っていなかったので驚きと変化と…それでもあまり甘いモードにはならないところが二人らしいなと思いその関係性がすごく好きでした。

胸ぐらを掴んで「心変わりしないだろうね」と言うシーンは、台本に書いてあったわけではなく、私が監督に“胸ぐらつかんでもいいですか?”と(笑)。お互いに思いが通じ合っても、すぐには甘い雰囲気にはならず、男同士のけんかのようでもある幼なじみの二人ならではの関係性を出したいと思ったんです。監督と話し合い、アイデアを出し合って丁寧に作ったシーンなので印象に残っています。

――第10回(3/9放送)で印象に残っているシーンはありますか?

花嫁衣装での花魁道中の着物が一番重くて、本当に布団のようだったんです(笑)。セットの中で撮影をしていたので、すごく暑くて、いろんな方が扇風機や保冷剤を当ててくださってケアしていただいたことが印象に残っています。

身請けされて大門を堂々と出ていくことは花魁たちにとって数少ない希望だと思うんです。でも瀬川の場合は、もちろんお勤めをしなくて良くなるという解放感もあるんですが、吉原を出たら蔦重と二度と会えないだろうという複雑な思いを抱えていて。本来はうれしいはずのものが、お別れでもあるのですごく苦しかったですね。最後に蔦重とすれ違う時は目を見れなくて。見てしまったら、出て行けなくなりそうだったので蔦重を見ることができませんでした。

流星くんは、現場で感じたことを大事にしている印象です

――幼い頃、蔦重からもらった「塩売文太物語」の本を大切にしている瀬川ですが、この本に関しての思いをお聞かせください。

瀬川は、“籠の中の鳥”という表現があるように、吉原の中でしか生きられず、唯一それ以外の世界に行けるのが蔦重が追っている夢や、本の中の世界だったと思うんです。本当に夢物語だけれど、自分がこうなれると思っているわけではないけれど、それこそ朝顔姉さんの“真のことが分からないので、できるだけ楽しいことを考えよう”とあったように、本の中の物語を心の拠りどころにしていたんだろうなと感じています。

――蔦重を演じる横浜流星さんの印象はいかがでしたか?

流星くんは、事前にたくさん考えて現場に持ってくるというよりは、その場の空気感やその場で起こっているものを瞬発的に表現する方なのかなと。その時その時に感じたことをすごく大事にされている印象があります。一人で作り込むというよりも、監督とも話し合って、その意見にも柔軟に応えながら演じられている印象でした。

――鳥山検校を演じる市原隼人さんの印象はいかがでしょうか?

市原さんは、すごく情熱的な方で。今回、目が見えない役なんですが、事前に盲学校に行かれてお話を聞かれたと伺いました。ちょっとした手の動きや、体の動きをすごく研究されていて、こだわって役に向き合っている方なんだと感じましたね。

瀬川には幸せであってほしいと願っています

――瀬川を演じて、こみ上げてくる思いはありますか?

初めは私のイメージとして花魁を演じることがピンとこない方も多かったと思うので、見て下さる方がどのように受け止めて下さるのか、不安もありました。でも、すごく細かいところまで瀬川の感情をくみ取ってくださっていて…本当にうれしいなという気持ちでいっぱいです。

――花の井、瀬川は幸せだったと思いますか?

難しいですね。でも、瀬川は自分の幸せよりも人の幸せを願える人で、自分がしんどくても自分の望みがかなわなくても、最後まで蔦重が思い描いた世界に尽くせる人なので。蔦重が無邪気に「本が売れた!」とか、そう言って笑っている姿を見ていたいと思っていたと思うんです。蔦重の真っすぐさを守るために生きてきた人なんだなと。

瀬川については、はっきりとした記録が残っておらず、その後どうなったのか分からないんですよね。どこにいてもきっと蔦重が元気に夢に向かって走り回っていることを願って生きているんだろうなと。幸せであってほしいと、私も願っています。

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