物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋、青年剣士・信次郎役の藤岡真威人(右)、主演の北大路欣也が本作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」の制作秘話を明かした

藤岡真威人&大友花恋が語る、北大路欣也からの学び「皆さんと会話しながら役を作り上げていらっしゃる」

2025.03.07 12:00
物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋、青年剣士・信次郎役の藤岡真威人(右)、主演の北大路欣也が本作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」の制作秘話を明かした

時代劇専門チャンネル×J:COMによる人気オリジナル時代劇シリーズ最新第8作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」が、3月8日(土)19:00より時代劇専門チャンネルにて放送される。本作は、藤沢周平の小説を北大路欣也主演で映像化した2016年から続く人気時代劇シリーズ。前藩主用人の職を退き、隠居した三屋清左衛門の第二の人生を、身の回りに起こる様々な出来事と共に描く。WEBザテレビジョンでは、主人公の三屋清左衛門を演じる北大路と、本作の新たなキャストである青年剣士・信次郎役の藤岡真威人、物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋にインタビュー。後編となる今回は、本作に新しい風を吹かせた藤岡と大友の2人を軸に大先輩である北大路の魅力などを語り合ってもらった。<インタビュー後編>

「北大路さんの懐の深さと優しさに甘えさせていただいた」

ーー時代劇で技術を培われてきた大先輩・北大路さんと共演して、率直に感じたことを教えてください。

藤岡:「三屋清左衛門残日録」も第8作目ということで、北大路さんをはじめキャストやスタッフの皆さんが作られてきたこの世界観に入らせていただくことがうれしかったです。僕にとっては初めての本格的な時代劇だったので、すごい出来上がっているこの世界に、信次郎としてどのように入っていけるのか、自分の中で課題を決めて臨みました。いざ撮影に入ると、北大路さんをはじめ共演者やスタッフの皆さんがすごく温かく迎えてくださいました。常にみんながこの作品をより良くするためにワンシーン、ワンシーンに心を込めて話し合われていて、そのシーンで何を伝えたいか、心を一つにして作られていることが、初日から伝わってきて感動しました。

ーー実際に「三屋清左衛門残日録」シリーズの中で芝居をしてみてどう感じましたか?

藤岡:自分の中で思ったものを芝居に落とし込むと、それを北大路さんはじめ皆さんがちゃんと受け取ってくださるから、僕もまた安心してぶつかっていけました。芝居のキャッチボールを僕が自由にできるような体制を皆さんが整えてくださったので、想像していたよりも葛藤することが少なく、自由に表現させていただくことができました。今回、1カ月ぐらいの撮影の中で毎日感動していて、日々いろいろなことを学び、感じながら、成長させていただきました。皆さんのお芝居の凄さや心の温かさをダイレクトに受け取れて、本当にかけがえのない時間だったと思います。また改めて完成した本編を拝見すると、新たな気付きがあって。自分が出ていない共演者の方々の掛け合いのシーンも、ものすごく勉強になりました。本当に素晴らしい作品に携わらせていただいたことに、感謝しています。

ーー最初に挨拶に行ったときのことは覚えていますか?

藤岡:覚えています。北大路さんの衣装合わせのところに僕はお邪魔させていただきました。ド緊張していたのですが、北大路さんがすごくフランクに話しかけてくださって。そんな北大路さんに僕はさらに恐縮してしまいました。「もうちょっと背筋を伸ばしてご挨拶すればよかったな…」って、直後に反省したのを覚えています。

北大路:私もね、20歳ぐらいのときに大先輩にお会いしたとき、あなたと同じような気持ちで緊張しました。そこで柔らかい言葉をかけてもらうとホッとしたから。

藤岡:まさに、です。

北大路:そう思ってもらえたならよかった。

藤岡:言い方が悪いかもしれませんが…「良い人でよかった〜!」って安心しました。

一同:(笑)

藤岡:本当に北大路さんの懐の深さと優しさに甘えさせていただきました。

「こんな日が実現するのかって、僕も感動しました」

ーー北大路さんは、藤岡さんが緊張していることに気付いていましたか?

北大路:私もそういう経験がありますからね。でも、私はお父さん(藤岡弘、)ともご一緒してるから、初対面でも仲間のような感じはしていました。実際に彼からは、やっぱりお父さんと同じ世界で育ってるんだなということをすごく感じましたね。撮影現場に一度お父さんがいらっしゃって、何十年かぶりにお会いできたんです。本当に素晴らしい家族なんですよ。

大友:私も、ご家族とお会いしている映像を拝見して、本当に画面いっぱいに幸せが詰まっているなと思いました。

北大路:お父さんの大活躍も見ているからね、懐かしかった。思わず抱きつきましたよ。

藤岡:その姿を見て、こんな日が実現するのかって、僕も感動しました。

北大路:一緒に頑張ってきた仲間だったので、会えて本当にうれしかったです。お父さんに「これからもよろしく」とお伝えください。

藤岡:承知しました!

大友:第8作まで続いている「三屋清左衛門残日録」シリーズに参加させていただくことに、皆さんに愛されてる世界に飛び込むといううれしさもありつつ、背筋が伸びる思いもありました。全部教えていただこう、すべて吸収して帰ろうという気持ちで、大先輩の皆さんと京都のスタッフの皆さんと向き合わせていただく日々でした。藤岡さんもおっしゃっていたように、私自身もずっと緊張してたのですが、北大路さんは撮影が始まる前からずっと周りを見られていて。向き合って正座で話すシーンがあるのですが、私がちょっと足先を組み替えただけでも、気が付いてくださり、「彼女に椅子を持ってきてあげてください」とスタッフさんに声をかけてくださったんです。北大路さんの優しさと力強さが、まさに清左衛門さんそのままで。私も清左衛門さんに助けてもらうかのように、撮影中はずっと北大路さんに助けていただきました。そのおかげで、落ち着いて役に集中することができました。

「北大路さんからは学んだことだらけです」

ーー実際に分からないことを質問するということもあったのでしょうか?

大友:具体的な質問をしたというよりも、北大路さんはまるで空気のように、私たちを包んでくださって。撮影の時期はまだ9月でとても暑かったんですが、全員に扇風機が当たるように北大路さんが調整してくださったり、まだまだ未熟な私に対しても、一役者として役の上でも、撮影の合間でも真っ直ぐに向き合ってくださったり。それがすごくうれしかったですし、その背中から吸収させていただくものは多かったです。照日をきちんと演じたいという気持ちもより強くなりました。

藤岡:僕も北大路さんに初めてお会いしたときに凄まじいエネルギーを感じました。波動というか見えない力みたいなものを持っている感じがするんですよね。特に目力と言いますか、画面を通しても感じる目から発するエネルギーみたいなものを、どうやったら僕も出せるんだろうって。北大路さんがおっしゃっていた通り、過去のいろいろな経験の中で培われてきたものが、エネルギーのような見えない力として発せられるんだなというのを、撮影でご一緒する日々の中で感じましたね。

ーー今回の撮影を通して、北大路さんからの印象的な言葉や何か学んだことはありましたか?

大友:たくさん学びました。現場で周りを見渡す視野の広さや佇まい、セリフ一つに対しても、台本にあるから言うのではなく、一度受け取ってから、監督としっかり意思疎通をし合う。皆さんと会話しながら役を作り上げていらっしゃるんです。長くやられている北大路さんでも、皆さんと話し合われて、一つひとつの言葉と丁寧に向き合われているんだなと。その姿勢を私もずっと大切にしていきたいと思いました。

藤岡:北大路さんが僕に「20歳の時は本当に君と同じような思いをしたことがある」「同じような経験をして悩んだことがある」、「先輩方から教えられて今の僕があるんだよ」というような話をよくしてくださって。それを聞くと、やはり先輩方から学ぶことは本当に大切なんだなと思いました。自分で考えることも大切ですが、先輩方にお聞きして、言葉だけでなくさまざまな形で教えていただく。それを自分なりに解釈してトライしてみる。人はその繰り返しなんだということを北大路さんから教えていただきました。これからの人生の中でも、そのことを常に頭に置きながら、いろいろなことを取り入れていきたいと思います。

「この作品のすべてが僕にとって得難い宝物」

ーー本作で劇中ラストの清左衛門の「得難い宝をもらった」というセリフが印象的でした。皆さんは、本作を通じて何か“得難い宝”は手に入れましたか?

藤岡:僕は、この作品に出会えたことですね。改めて出来上がった作品を拝見して、僕はこんなに素晴らしい作品に携われたのかと感動しました。本当に皆さん…良い方なんです!

一同:(笑)

藤岡:監督をはじめスタッフの皆さん、共演者の皆さんに初めてお会いしたのが衣装合わせだったのですが、皆さんがいらっしゃるお部屋に入るとき、それに応じた静寂と緊迫感と重圧がありました。でも、いざ扉を開けて踏み込んでみたら、監督がまず「気楽でいいんだよ」って声をかけてくださって。その一言で僕のガチガチに固まっていた体が、グワッとほぐれたんです。そのあとに北大路さんにご挨拶させていただいて、さらに緊張がほぐれたのですが、そういった皆さんとの出会いと、そんな皆さんが手掛ける「三屋清左衛門残日録」シリーズという作品の中に僕も入らせていただけたことが僕にとっての財産です。皆さんと撮影を共にして積み重ねた時間とこの作品のすべてが僕にとって得難い宝物です。

大友:私にとっての得難い宝は、京都の撮影所のスタッフの皆さん、あとは大先輩の皆さんと一つの作品を作れたことです。東京で撮影する現代劇とはまた少し雰囲気が違っていて。本番前に段取りがなかったり、スケジュール表の書き方が違ったり、スタジオの中で外ロケのシーンを撮ったりだとか。その中で各部署のプロの皆さんが、自ら動いて、どうしたらこのカットが生きるかをディスカッションしながら撮影していくんです。それを体感できたことが、すごく貴重な経験でした。こういう方法で撮影したからこんなに良い作品ができるんだということを知り、感動しました。この撮影で学んだことを皆さんに伝えていけるように、私ももっと成長したいなと思いました。

北大路:お二人の言葉を聞いて、私は感動していますよ。私自身も第1作から、スタッフの皆さん、共演者の皆さんに本当に支えられて、この第8作までやってこられました。そのおかげで、このお二人ともお目にかかれた。こういう出会いがあるから、今の感動がある。それをこの作品をずっと一緒に作ってきてくれたスタッフの皆様と、共演者の皆さんと共に味わえたこともうれしく思います。今こんな言葉をお二人からお聞きするとは、全然想像もしてなかった。共に一つの作品を無事に作り上げられたことにも非常に感謝しますし、私にとっても大きな宝です。

構成・文=戸塚安友奈

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