

“奇跡の童顔”ソン・ジュンギとは?大ヒット作「財閥家の末息子」ではアラフォーで大学生役も違和感なし

韓国で2022年度最高視聴率をたたき出したドラマ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」。スリリングで息をつかせぬストーリー展開に加え、実力派俳優陣の共演、韓国の現代政治経済史を俯瞰できる仕掛けまで視聴者をくぎ付けにする要素満載の同作だが、中でも視線を一身にひきつける存在といえばやはり、主演のソン・ジュンギだろう。滅私奉公を絵に描いたような秘書から一転、前途洋々たる名家のフレッシュな大学生へ――。卓越した演技力に加え、持って生まれた“奇跡の童顔”で世紀の転生ストーリーにリアリティーを与え、大ヒットの立役者となったスター俳優・ジュンギの魅力にあらためて注目する。
財閥秘書からフレッシュな大学1年生への“転生”
韓国を代表する財閥スニャングループへ忠誠を尽くしていた秘書ユン・ヒョンウ(ジュンギ)が、財閥家の裏金問題に巻き込まれ殺害される。目を覚ますと、ヒョンウはグループ創業者の孫チン・ドジュンになっていた――。そんな導入からスタートする「財閥家の末息子」は、記憶をすべて持ったまま約20年前を生きる少年の体に乗りうつったヒョンウによる一発逆転復讐(ふくしゅう)劇。3月5日よりディズニープラスでも一挙配信が始まった。
ジュンギは第1話で秘書・ヒョンウを演じた後、2話ラストで今度は財閥資産家の孫でありソウル大学に首席で合格した秀才・ドジュンとして登場する。
1985年生まれのジュンギはリアルタイム放送時37歳だったが、トレーナーにダッフルコート、ジーンズのラフな格好で「スニャングループ会長の孫、ソウル大学法学部1年、チン・ドジュンです」と報道陣のカメラに愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔を向ける姿はフレッシュで、肌もツルツル。少年時代を演じた子役からのカットチェンジも違和感なく、どこからどう見ても爽やかな大学1年生だ。
映画「霜花店 運命、その愛」で俳優デビュー
そんなジュンギが俳優を志したのは大学生の時。小・中学生時代はスピードスケートに打ち込んだが、ケガで断念。大学時代、最初はアナウンサーを目指していたというが、会社員として働くよりも面白そうだと演技スクールに8カ月ほど通ったところで今の事務所との縁あって、大学在学中だった2008年に映画「霜花店 運命、その愛」で映画デビューを果たした。
この「霜花店 運命、その愛」の監督が、俳優を育てることに定評のあったユ・ハ監督。「カメラがどこにあるかもわからず演じていた」という超新人だったジュンギはこの作品を通じてユ・ハ監督の薫陶を受け、その後もチャレンジングな作品に出演し、現場でめきめきと演技の実力をつけていった。
「太陽の末裔」は世界32カ国に輸出
ジュンギのデビュー後の活躍は周知の通り。2010年のドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」で主要キャストに抜てきされてシンドロームを巻き起こし、翌年「根の深い木~世宗大王の誓い~」では、韓国国民に愛され、尊敬される歴史上の異人・世宗大王の若き日を好演。2012年の映画「私のオオカミ少年」では、オオカミに育てられた少年を全編セリフなしで体の動きと表情だけで演じた。
除隊後復帰作のドラマ「太陽の末裔~Love Under The Sun~」(2016年)では、相手役のソン・ヘギョと大恋愛を演じ、同作は韓国で驚異の視聴率41.6%をたたき出した(ニールセンコリア調べ)ほか、世界32カ国に輸出されるなど世界規模の大ヒット。翌年、ヘギョと電撃結婚したことも大きな話題を集めたが、その後2年ほどで2人は離婚している。
気品にあふれ、ときに冷酷
韓国では、「その俳優の出演作には外れがない」という意味で“信じて見る俳優(ミッコ ボヌン ペウ)”という言葉が使われるが、彼もその一人。
近年も、野性味あふれる青年を演じたドラマ「アスダル年代記」(2019年)やイタリアンスーツを着こなしスマートに敵を葬っていくマフィアの顧問弁護士を演じた「ヴィンチェンツォ」(2021年)、映画でも地方都市の犯罪組織のリーダーを演じた「このろくでもない世界で」(2024年)や脱北者の過酷な生活を描いた「ロ・ギワン」(2024年)…と、同一人物と思えないほどの変幻自在ぶりで、各キャラクターの生きてきた過程までも想像させる深い演技を見せている。
そんな彼の強みの一つは、何と言ってもその端正なルックス。つるんとした美しい肌と少年のようなあどけなさを残した表情には気品があり、ひとたび心を閉ざせば相手に感情を読ませない冷酷さに早変わり。「ヴィンチェンツォ」の主人公ヴィンチェンツォ・カサノは顔色一つ変えずスマートに敵をなぎ倒し、「ロ・ギワン」の脱北者ロ・ギワンは、公衆便所にうずくまって寝泊まりしながらも心だけは決して世知辛い世間に屈しない、そんな気高さを感じさせる。
「目がいいのか、運がいいのか」
「財閥家の末息子」本編の大部分でジュンギが演じているのは、“財閥家の孫ドジュンの体に入り込んだ秘書ヒョンウの魂”。グループの権力を握り、自分(ヒョンウ)を殺した黒幕を見つけ出すため、周囲に気付かれないよう細心の注意を払いながらヒョンウとしての知識や知恵を巧妙に使い、一族内で成り上がっていく。
その姿を見てただ一人、彼に非凡なものを感じるのが、グループ創設者でドジュンの祖父チン・ヤンチョル(イ・ソンミン)だ。ヤンチョルはドジュンの賢さを「目がいい(見る目がある)のか、運がいいのか」と表現する。“理由があっての賢さにも見えるし、裏はなく単に運がいいだけにも見える”というニュアンスだが、まさにどちらともとれるひょうひょうとした表情がジュンギの真骨頂。
「財閥家の末息子」は、主人公を演じたのがジュンギだったからこそこれほどまでに視聴者をひきつけたのだろうと思わずにいられない。もちろん、転生前の秘書ヒョンウと転生後の大学生ドジュンという年齢差ある2つのキャラクターを違和感なく演じられる演技力も彼の大きな魅力だ。
今後も彼は年齢を感じさせない類まれなルックスと高い演技力で見る者をひきつけ続けるのだろう。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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