「井上尚弥〜孤高の王者の未来図〜#2」が2月7日にLeminoで配信された

“モンスター”井上尚弥選手が描く未知なる未来図 4団体統一王座3度目防衛も「伸び代は全然ある」<井上尚弥〜孤高の王者の未来図〜>

2025.02.27 17:00
「井上尚弥〜孤高の王者の未来図〜#2」が2月7日にLeminoで配信された

2025年1月24日、一人の男が日本、そして世界を熱狂させた。それは現世界スーパーバンタム級4団体(WBA・WBC・IBF・WBO)統一王者、井上尚弥選手だ。異次元の強さで“モンスター”と畏怖される存在だが、常にボクシングと真摯(しんし)に向き合い、ストイックに自身をより高みへと引き上げていく。そんな井上選手に2024年12月4日の公開練習から約2カ月間にわたって密着したドキュメンタリー「井上尚弥〜孤高の王者の未来図〜#2」が、2月7日にLeminoで配信された。(以下、ネタバレを含みます)

防衛戦までに予期せぬ出来事が続いた

井上選手は2023年12月に世界スーパーバンタム級で4団体統一戦王座を獲得し、2024年9月にTJドヘニー選手を下して2度目の世界タイトルを防衛。1月24日に東京・有明アリーナで韓国のキム・イェジュン選手を相手に3度目の防衛戦に臨み、4ラウンドTKOで決着をつけた。だが、今回の防衛戦が行われるまでには、元々の開催日からの延期、対戦相手の変更といった予期せぬ出来事が起こっていた。

本来は2024年12月24日にWBO・IBF世界同級1位の無敗の挑戦者サム・グッドマン選手(オーストラリア)と対戦する予定で、公開練習前の会見では多くの報道陣の前で「2025年は新たに海外進出を考えている」と、すでに先の計画も明かしていた。

公開練習の後、数種類の筋力トレーニング(無酸素運動)と有酸素運動を交互に繰り返す“サーキットトレーニング”を行い、「年齢とともに人間は必ず体力も反射的なものも低下していく生き物なので、上げていくことは無理でも現状維持することはできると思う」とストイックな発言を。その後の反射神経トレーニングも、グッドマン選手を想定して行った。

しかし12月14日、試合まで10日というところでグッドマン選手が来日直前のスパーリングで左目の上を切り、4針を縫う裂傷を負ったという知らせがあり、試合は1カ月延期され、年をまたいで1月24日に行われることになった。

ウエイトの調整も進んでいて、12月24日に向けてかなり動き始めている段階なだけに、普通なら集中力が切れてもおかしくない状況。しかし、12月23日の練習時に「試合が延期になったことは嫌ではないのか?」と質問され、「それはないですね」と即答。「逆に、もう1セット(トレーニング)いけると思った。より仕上げられるかなとも思う」とポジティブな言葉しか出てこない。「ちょっと楽しみでもあるんですよね」と、集中力が切れるということは全くないことが伝わってきた。

早く試合がしたかったという気持ちも正直に打ち明けつつ、「楽しみが延びちゃった」と笑顔で話しているところにも井上選手のすごみが感じられた。

“仮想グッドマン”も…負傷で対戦不可能に

年が明けてからは“仮想グッドマン”対策として、世界ランカー、元全米アマ王者、オリンピアンといった実力者を招いてスパーリングを重ねていく。

再び実戦モードに入っていったが、1月11日、グッドマン選手がまたも目を負傷し、対戦が不可能になったという知らせが入った。しかし、試合自体がなくなるのではなく、リザーブ選手として登録されていたキム・イェジュン選手と対戦することとなった。WBOスーパーバンタム級11位というランクだが、日本人選手には7戦7勝している不気味さがあり、“トラブルメーカー”というニックネームが付けられていた。生まれてすぐに施設に入り、施設を出た20歳からボクシングを始めたハングリー精神あふれる選手で現在32歳。「リングではどんな相手にも負けず、相手にトラブルをもたらすから」というのが“トラブルメーカー”というニックネームの由来だそう。

1月16日、そんなイェジュン選手が来日。“いよいよ”といった感じだが、井上選手は「ここに来るまでにいろいろあったけど、自分のキャリアが今の落ち着きを出せてるのかなと思う」と冷静に分析。対戦相手が変わったことについても「目指す場所は一つだけ」と動じていない。さらに「極限まで追い込まれないといけない闘いになった時は、8週間を使って体を仕上げるのが一番いいということが分かった」と今後に生かせる発見もあったようだ。

そして重要な発言もあった。それは、テーマが「パーフェクト」だということ。「相手が変わったことで、気持ちを落としたり切らしたりするんじゃなくて、この相手にもパーフェクトで仕上げて、パーフェクトで終わらす」とテーマに込めた意味を明かし、「そういう思いで試合をやらないと失礼に当たる」と、当初の相手よりもランクが下がったかもしれないが“パーフェクト”を目指すことを宣言。それは「ボクシングを舐めない。キム選手を舐めない」と相手へのリスペクトも込められている。

相手に合わせる仕上げ方ではなく、自分自身を高めていくことが重要。そのブレなさが強さにより安定感をもたらしていると言える。実際、1月22日に行われた会見では、代役を受けてくれたキム選手に感謝の気持ちを伝え、「最大限のリスペクトとしてバッチリ仕上げました」と言葉にしている。さらに「油断することなく、井上尚弥のボクシングを見せることがファンに向けたメッセージ」だということも。

計量をパス…待ちに待った試合当日

2人とも無事に計量をパスし、あとは本番を迎えるだけ。強くいられる理由を聞かれると「背負うものがあるから」と答えた。ジムの会長をはじめ、周りで支えてくれている人たち、もちろん家族もそう。背負うものがたくさんあるからこそ責任感が生まれ、そのためにもより強くならなければという気持ち、モチベーションが生まれてくる。

1月24日、ついに試合当日を迎えた。控え室の様子、会場に登場した時の様子、そして試合…。試合中に感じたキム選手の印象を語る井上選手の声が流れたり、パンチを受けた時の「もらうべくしてもらった」という自己分析なども、ドキュメンタリーならでは見どころだと言える。

試合は4ラウンドで決着。勝利者インタビューにリング上で答えながらも、キム選手が退場する時は話を中断し、勇気ある挑戦者を拍手で送った。そういうスポーツマンシップに満ちた部分も井上選手の魅力だ。

試合を振り返り、「まだまだやれることがあると感じたということは伸び代は全然ある」と発言し、それが自身の課題だとも語った。

「今日が最後ではないので」と井上選手が語っている通り、今後、階級を上げたり下げたりしつつ、進んでいく道が見えているようだった。未知なる“未来図”を描きながら、井上尚弥選手はこれからも着実に、前へ前へ、そして上へ上へと進んでいくのだろう。

このドキュメンタリーの中にちりばめられている“言葉”に注目していくと、なぜそれほど強いのか、どうして戦うのか、どんなふうに向き合っているのか、ということがしっかりと伝わってくるので、ボクシングファン、格闘技ファンに限らず、生きる上でのヒントをつかめるかもしれない。

◆文=田中隆信

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