大泉洋、“コメディ色”を封印して魅せる多彩な演技がすごい…“ハマり役”と評される出演作から魅力を紐解く

2025.02.10 18:00

日本史上初めて武士階級で一揆を起こした蓮田兵衛の生き様を描く戦国アクション映画「室町無頼」が公開中。本作で主演を務める大泉洋は、約30年もの芸能活動の中で数多くの作品に出演し、現在も映画やテレビ、舞台と引っ張りだこの実力派俳優だ。本記事では、そんな大泉の魅力について、過去の出演作品を振り返りながら紐解いていく。

映画、舞台、声優、バラエティなど、マルチに活躍する大泉洋

大学時代、安田顕や戸次重幸ら演劇研究会のメンバー5人で結成した演劇ユニット・TEAM NACSにてたびたび舞台公演をおこなっていた大泉。北海道のローカル番組「水曜どうでしょう」に出演したことでその人気は一気に全国区へ広がる。その後2005年に出演した「救命病棟24時」シリーズ(フジテレビ系)で俳優の仕事を本格的に開始。「ハケンの品格」(日本テレビ系、2007年放送)やNHK大河ドラマ「龍馬伝」(NHK系、2010年放送)など話題の作品に立て続けに出演し、映画「駆込み女と駆出し男」(2015年公開)では「第58回ブルーリボン賞」主演男優賞を受賞するなどの功績を収めた。

また、大泉は俳優以外にも多方面で活動していることでも知られる。「千と千尋の神隠し」(2001年公開)や「ハウルの動く城」(2004年公開)といったスタジオジブリ作品では声優を務めた。2013年には大泉が1997年から綴った18年分のエッセイ集『大泉エッセイ僕が綴った16年』(KADOKAWA刊)を出版し、累計47万部もの売り上げを記録している。他にも「NHK紅白歌合戦」では2020年～2022年に司会を担当し、2023年には歌手として出演。各バラエティ番組では芸人顔負けのお笑いセンスやトークスキルを披露するなど、マルチに活動の幅を広げている。

まるで別人？普段のコメディ色を封印して魅せる演技力の高さ

大泉といえば、バラエティ番組などで軽快なトークを繰り広げ、会場の笑いをかっさらう“コメディ色”のイメージが強い。例えば制作発表会などでは、持ち前の“ぼやき節”で場の雰囲気を明るくする。また共演者やスタッフに対して気さくに話しかけ、時折相手をいじることも。この芸人顔負けのお笑いセンスは大泉の特徴でもあり、出演作でもコミカルな演技をたびたび披露している。実際に大泉は過去のインタビューで、「人を笑わすことが好きで、そればっかり考えていた子どもでした」と語っていたため、エンターテイナーとして“人を楽しませたい”という想いが根本にあるようだ。

しかし、大泉の出演作品を振り返ってみると、彼の持つ“コメディ色”を封印し、まるで別人のような印象を与える演技も見せている。

例えば、石田スイによる人気コミックの実写映画「東京喰種トーキョーグール」(2017年公開)では、冷酷な方法で喰種(グール)を追い詰めていく捜査官・真戸呉緒を演じた大泉。白髪に近いセンター分けのビジュアルは原作を忠実に再現しており、ネット上では「めちゃくちゃ真戸さん」「思いのほかハマってて感動してる」などの声が上がった。大泉はこの役で真戸の不気味な雰囲気を醸し出し、シリアスかつ緊張感あふれる演技で存在感を示している。

また、作家の塩田武士が大泉をイメージして主人公を“あてがき”したベストセラー小説の実写映画「騙し絵の牙」(2021年)にも注目したい。出版不況や創業一族の社長の急逝、次期社長を巡る権力闘争などで、ピンチを迎えた大手出版社の奮闘を描く本作。大泉は会社のお荷物雑誌「トリニティ」の変わり者編集長の速水を演じている。一見頼りない速水だが、実はその笑顔の裏にとんでもない“牙”を秘めており…。嘘や裏切り、そしてクセ者揃いの上層部や作家たちの陰謀が渦巻く中、速水は生き残りをかけて持ち前の頭脳で“大逆転劇”を繰り広げる。大泉の腹に一物抱えているような演技や表情はまさに圧巻で、俳優としての新たな一面が垣間見える一作となっている。

このように、クールなキャラやクセ者を演じた際にはしっかりとその人物に染まっており、普段のイメージを忘れさせるほどの高い演技力を見せつけているのだ。

探偵役や難病を患う役でも光る演技を披露

どんな役柄でも卒なくこなす大泉だが、彼の代表作の一つである映画「探偵はBARにいる」(2011年公開)でも役者としての魅力をいかんなく発揮している。大泉演じる“俺”と、松田龍平演じる高田の凸凹コンビが、北海道札幌市のススキノを舞台に活躍を繰り広げる本作では、依頼者のために全力投球する心優しき探偵を熱演。シリアスな演技の中にユーモアさも取り入れており、作中では巨大な雪穴に落とされたり、全力疾走をしたり、スノーモービルに轢かれそうになったりと、体当たりのアクションも披露している。中でも印象的なのは、大泉が小雪演じる謎の女性に銃口を突きつける場面。鬼気迫る表情で「俺の依頼人に指一本でも触れてみろ。お前ら全員ぶっ殺してやる」と詰め寄る姿は迫力満点で、大泉の迫真の演技によって、緊張感漂うシーンに仕上がっている。

また、実話をもとにした映画「こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話」(2018年公開)では、難病を患い、車いす生活を送る鹿野役を演じた大泉。本作の出演にあたって、大泉は役作りのために10キロの減量に挑み、役者としてストイックな一面を見せた。自身でも「ここまで役に近づいた感覚は初めてだったと思います」とインタビューで振り返っており、実際に鹿野さんの友人が撮影現場の見学に訪れた際には「鹿野がいると思った」と言わしめたほどだった。

コミカルな演技だけでなく、泣ける演技やシリアスな演技でも多くの人を魅了し、どのような役柄であっても“ハマり役”と評される大泉。これまで数多くの作品に出演してきたことや、今なお第一線で活躍し続けていることが、彼の俳優としての実力の高さを物語っている。

なお動画配信サービス・Huluでは、大泉が出演する「東京喰種トーキョーグール」「騙し絵の牙」「探偵はBARにいる」「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」「探偵はBARにいる3」「こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話」を見放題配信中。