ジャルジャルは仙人だ『かまいガチ』／テレビお久しぶり#138

2025.02.07 19:00

長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『かまいガチ』(テレビ朝日系)をチョイス。

ジャルジャルは仙人だ『かまいガチ』

かまいたちの二人が様々なことにガチで挑戦する冠番組『かまいガチ』。2021年放送の過去回がTVerで再配信されており、サムネにとある人物が映っているのを見て思わず再生してしまった。ちなみに、見ている間は2021年の回だということにまったく気付かず、「みんなめっちゃマスクしてるな……でもインフルも流行ってるしな」などと思っていた。

今回のテーマは、椅子づくり。椅子を一度も作ったことがないから作ろうと思い立ち、東急ハンズで材料集めを済ませた彼らは、右も左もわからぬまま椅子を作り始めるが……

どういう意味合いでの再配信かは定かではないものの、再配信されるにふさわしい面白さであった。かまいたちのふたりがああだこうだ言いながら椅子を作っていくだけ。ひとつのミニマルな目的をただ遂行する、私はずっとこういうのが見ていたい。私には、色々な映画監督に『ダイハード』の脚本を渡して、それぞれの撮った映画を見たいという気持ちがあるのだが、それと同じように、色々な芸人に椅子を作らせてみてほしい。それぞれの芸人の個性が際立って、きっと面白くなるはずだ。

さて、サムネに映っていた人物というのはジャルジャルである。正直、実際の出演時間は15秒ほどで、配信タイトルでは『ジャルジャルも参戦』とまで謳われていたため騙された思いであったが、「ジャルジャルは引きがあるだろう」という判断が嬉しい。たとえば映画なんかでは、端役で出演しているだけの有名スターがデカデカとジャケットに使われたりすることが多々あるが、それらの位置にジャルジャルがいる、ということが誇らしいのだ。

お前はジャルジャルの何なんだという話だが、私はジャルジャルのファンである。それも、小学生の頃からずっとジャルジャルを見て育ってきたせいで、もはや彼らに対して、単にお笑いがどうのといったことではない、特別な愛情をもってしまったファンなのである。YouTubeや舞台を主戦場としている彼らは、その人気・知名度のわりに、地上波のテレビに出演する機会が少ない。だからこそ、こうして地上波で彼らを見ると、「大丈夫かな」「うまくやれるかな」「仮にうまくやれなくてもそれは周りが悪いだけだからね」などと、まるで親が子を見守るような気持ちになってしまうのだ。まあ、痛いファンといえばそれまでである。

番組終盤にようやく登場したジャルジャルは、いつも通りのジャルジャルであった。番組の撮影現場を通りがかった程度の絡みであったのだが、驚いたのが、かまいたちがジャルジャルに敬語を使っていることだ。対してジャルジャルは、かまいたちにタメ口を使っている。ジャルジャルのほうがかまいたちより先輩だという事実そのものは特別不思議なことでもないのだが、先輩、後輩、といったような世俗的な概念がジャルジャルに存在していることが意外というか、ジャルジャルは、ひたすらジャルジャルであり続けるだけで、俗世とは何の関係もないものだといつも思い込んでしまうのだ。神とはいわずとも、仙人のような。そんなワケはない。つまるところ、私はジャルジャルの、厄介なファンなのである。

■文／城戸