五十嵐耕平監督、佐野弘樹主演『SUPER HAPPY FOREVER』が第21回レイキャビク国際映画祭のNew Vision部門にて最高賞を受賞 釜山国際映画祭でも好評博す
佐野弘樹主演による五十嵐耕平監督最新作『SUPER HAPPY FOREVER』(新宿武蔵野館ほか全国上映中)が、第21回レイキャビク国際映画祭のNew Vision部門にて最高賞を受賞。監督からコメントが寄せられた。また現地時間10月5日(土)に行われた釜山国際映画祭の登壇の様子も届いた。
あるリゾート地を5年ぶりに訪れた幼馴染の佐野と宮田が、佐野の亡き妻・凪(なぎ)と出会った思い出の場所を巡りながら、かつて失くした赤い帽子を探すことから始まるひと夏の物語『SUPER HAPPY FOREVER』。
今回、第21回レイキャビク国際映画祭のメインコンペティションにあたるNew Vision部門にて本作が最高賞「Golden Puffin賞」の受賞を果たした。アイスランドの首都・レイキャビクで開催される、革新的な映画を上映する国際映画祭で、今回は国際映画批評家連盟(FIPRESCI)から派遣された国際審査員の他、『ゴッドランド/GODLAND』『LAMB/ラム』などで知られるアイルランドの名優・イングヴァール・シーグルソンも参加。計3名の審査員の満場一致でグランプリに選出された。
これまでクロエ・ジャオ監督『ザ・ライダー』、グザヴィエ・ドラン監督『マイ・マザー』、ウベルト・パゾリーニ監督『おみおくりの作法』、ベン・ザイトリン監督『ハッシュパピー バスタブ島の少女』をはじめとする作家が受賞してきた本賞を、日本映画として初めて受賞することとなった。
授賞式の中で審査員代表は「とても繊細で、しかし明るい趣を持った映画に今年のグランプリを授与することを満場一致で決定しました。本作は悲しみという感情にきわめて独創的な形でアプローチし、その魅力を楽しみながら発見していくことのできる、しなやかな登場人物たちを描き出しました。私たちは時間を巧みに操る作劇、冷静にきわめて手堅くなされた演出、そしてその具現的な細部の表現など、本作のあらゆる側面に魅了されました」と絶賛。
監督は受賞を受け、「自分たちが日本で今生きていることの実感を詰めこみ、スタッフみんなで作り上げた映画がこうして遥か遠く離れたレイキャビクの地でグランプリをいただき、大変嬉しく光栄に思います。世界には同じ気持ちの人たちがいるんだという事を胸に、またいい映画を作れるように励んでいきたいと思います。ありがとうございました」とコメントを寄せた。
一方、第29回釜山国際映画祭では、現地時間10月5日(土)に韓国プレミアが行われ、佐野弘樹、宮田佳典、ホアン・ヌ・クイン、影山祐子、そして五十嵐耕平監督が揃って登壇。五十嵐監督は前作『泳ぎすぎた夜』(ダミアン・マニヴェル監督との共同監督作)が「Discovering New Japanese Cinema」と題した特別プログラムで上映されて以来、2年ぶり2回目の参加となった。
上映前には佐野と宮田が前もって準備をしてきた韓国語で観客へ挨拶。上映後には質疑応答を実施。観客からは次々に手が挙がり、カット割りなども含めたショットの意図からロケ地、小道具、衣装と細部にわたっての質問が監督へと投げかけられた。
毎日映画を観ることに夢中になってしまい、まだ海を見ることができていないという観客が本作で海を堪能し「大満足しました」と語り、笑いを誘う場面も。作品に対しての感想を質問された主演の佐野は「脚本にイチから関わっているので、完成稿をもらったときの衝撃はあまりありませんでした。しかし、こうして映画が出来上がった時に、脚本以上に面白い作品になっていたことに衝撃を受けました」と素直な感動を明かす。宮田は「五十嵐監督の過去作品がずっと好きで、(一緒に映画が作りたいと)お声掛けしたので、出来上がったものを観た時は幸せで胸がいっぱいでした」と振り返った。
9月27日(金)から全国での上映がスタートした本作は新宿武蔵野館で連日満席がでるほどの盛況を見せている。今後、AFIロサンゼルス映画祭やゲント国際映画祭、シカゴ国際映画祭での上映も控えており、さらなる受賞に期待が寄せられている。
また『SUPER HAPPY FOREVER』を全国そして世界に届けるため、「MotionGallery」にて実施中の公開応援プロジェクトも今週10月10日(木)23:59が締め切り。オリジナルグッズだけでなく、劇中で実際に使用されたアイテムがもらえる企画や、クラブシーンを撮影した江ノ島のダイナー「OPPA-LA」で行われる10月11日(金)に開催予定の一夜限りのリリースパーティーへの招待企画など様々なプランが用意されている。集まった資金は、配給宣伝費や海外費用として使用される。
■映画『SUPER HAPPY FOREVER』
第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門正式出品作 『息を殺して』や、第74回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品されたダミアン・マニヴェルとの共同監督作『泳ぎすぎた夜』など、世界が注目する五十嵐耕平監督による待望の長編最新作『SUPER HAPPY FOREVER』。第81回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門では日本映画初となるオープニング上映作品として選出された。
本作にはダミアン・マニヴェルも共同プロデューサーとして参加し、ポストプロダクションをフランスで行うなど、日仏合作で製作。短編に引き続き佐野役を『TOCKA [タスカー]』や『愛にイナズマ』、『浜の朝日の嘘つきどもと』での好演も光った佐野弘樹が、宮田役を『サボテンと海底』や「TOKYO VICE Season2」、濱口竜介監督『悪は存在しない』で強烈な印象を残した宮田佳典が務める。そして、今泉力哉監督『猫は逃げた』で注目を集め、近年では『走れない人の走り方』など話題作への出演が続く山本奈衣瑠が凪役を演じた。
思いがけない出会いがもたらす幸せも、別離がもたらす悲しみも、月日とともに過ぎていく。しかし、“人生のかけがえのない瞬間”は、そんな時の流れにこそ隠れている。本作では5年前と現在という2つの時間の中で、「青春期の終わり」を迎えた人々の奇跡のようなひとときを、さりげなくも鮮やかに記録した。
〈あらすじ〉
2023年8月19日、伊豆にある海辺のリゾートホテルを訪れた幼馴染の佐野と宮田。まもなく閉館を迎えるこのホテルでは、アンをはじめとしたベトナム人の従業員たちが、ひと足早く退職日を迎えようとしている。佐野は、5年前にここで出会い恋に落ちた妻・凪を最近亡くしたばかりだった。妻との思い出に固執し自暴自棄になる姿を見かねて、宮田は友人として助言をするものの、あるセミナーに傾倒している宮田の言葉は佐野には届かない。2人は少ない言葉を交わしながら、閉店した思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて失くした赤い帽子を探し始める。
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