四千頭身・都築拓紀、壮絶な家庭環境から芽生えた子どもたちへのボランティア活動、やらないアンチよりやる偽善の価値
トリオ芸人・四千頭身。そのメンバーの都築拓紀は今、芸能活動の合間を縫って、子どもたちへのボランティア活動に取り組んでいる。自身が育った家庭環境、母の背中を見て考えたという、子どもたちに笑顔を作るための活動だ。しかし、都築のこの活動は、世間にはほとんど知られていない。メディアで発言することも、SNSでも一切触れていないからだ。そうした中、偶然、千葉の子ども食堂で都築が働く姿を見かけた。この活動を始めてそろそろ丸2年。出身の茨城や千葉近郊を中心に行い、9月には埼玉・三郷の「◯△□子ども食堂」に足を運んでいた。なぜ、子どもを対象にした活動なのか、発信しないワケとは? ボランティア活動への想いをWEBザテレビジョンだけに語ってくれた。
余計なお節介でも、子どもたちにはお節介をしてあげたい
――都築さんのボランティア活動、偶然目にすることで知りました。どのような経緯で始められたのでしょうか?
最初にプライベートで母校の小学校にお邪魔させていただく機会があって、そのときに子どもたちへの気持ちがすごく湧いてきたんですよね。これ、言語化するのが難しいので簡単に言っちゃいますが、子どものためになるようなことができればいいなって。主だった先は子ども食堂や学校、児童デイサービス。そこで現場のお手伝いをしたり、子どもたちと話をしたり、遊び相手になってあげたり。
もともと母が都築商店という児童福祉支援の会社を立ち上げて、育児や家庭環境において複雑な事情がある親御さんたちの手助けを行っているんですが、僕はどちらかというと、そういう環境に置かれている子どもたちに少しでも明るい笑顔を作ってあげたいと思ったんです。母に話したら賛同してくれて、それから都築商店と一緒に月に1、2回のペースですね。完全にプライベートで、少しずつやり始めた感じです。
――佐貴代さん(都築の母)の講演記事を拝見しましたが、ご自身、大変な家庭環境で育ち、旦那さんが作った借金3億円を背負ってシングルマザーになったということでした。都築さんが「子どものために」と考えるのは、そうした家庭だったことも関係していますか?
それはやっぱりありますね。僕が高校のときにもう父親はいていないようなもので、ベタに言えば借金苦。祖父母も変な人で、妹はえげつない反抗期だったり。従兄弟の方もひどくて、母親がころころ変わったり、小さい頃に祖父に包丁を向けられたりとか。そういう家だったんです。
――かなり壮絶ですね。
家庭の問題ってどこでも何かしらあるだろうけど、突き抜けるくらいになると、頑張ればとか、そういう次元ではなくなるんですよ。でも、基本的に子は親の元にいるものだから、どんなに望まない環境でも、そこに収まっているしかないんですよね。
そういう環境に置かれている中で大人になった人って、どこか空っぽの状態なんですよね。大人になったけど、抜け殻みたいな人間になっている。そうなった子どもって、たくさんいると思います。余計なお節介なんですけど、でも、自分ではどうにもできない子どもたちには余計なお節介をしてあげたい。
国を動かして、みたいなことではないし、僕の手の届く範囲でしかないけれど、先々で出会った子どもたちには、その瞬間だけでも笑顔になってほしいんです。
ぶっちゃけ、子どもたちは僕が誰かなんて分かってない
――ボランティア参加した現場を見て思うことは何かありますか?
僕は行った現場で何か口を出すことはしないようにしています。ぶっちゃけいうと、小さいお子さんは僕が誰かなんて分かってないですよ。僕が行くことで喜んでくれるのはむしろ親御さんたちですね。
でも、親御さんたちがご機嫌になってくれるのも、それはそれでいいんですよ。別に子ども食堂に来る子たちが不幸だとは思ってなくて、親御さんたちには色々事情があって大変なだけ。だからこそ、そこに楽しい時間を作ってあげたいなって、そういう思いです。僕が来た話がネタになって親子のコミュニケーションが増えると嬉しいなって。
――今後、この活動をどのようにしていきたいですか?
この活動を、という前に、僕自身が子どもから頼りにされる大人になろうというのがまずあって、子どもや子どもを通して親御さんから声が上がってきたときに、それに対して動いてあげられる自分になりたいです。その上で子どもたちの前に立ったときに、ちゃんと喜んでもらえるタレントになれたら一番いいですね。
やらないアンチより、やる偽善の価値
――ボランティアというのは広め方が難しいと思いませんか?
難しいですよ。だから、今も言葉選びがすごく難しいです。これが記事になったとき、喜んでくれる関係者がいる反面、偏屈なことを言ってくる人も絶対いるのが今のネット社会だし。しかも、それを言うのがまた大人の人なんですよね。
僕が何か言われるのは全く構わないけど、誤解を呼んでしまうのは協力してくれる人たちに申し訳ない。ボランティアが慈善活動と呼ばれるものだとして、慈善活動なのに、偽善だと言われたり。偽善だって別にいいじゃないですか。やって悪いことは何もないし、何か言う人たちからお金をぶん取っているわけでもないし。
――多くの人がボランティアへの腰が重かったり、構えて考えがちな部分はあると思います。
それは分かります。でも、僕の活動だって、大それたことをしているわけではないんですよね。本当に手の届く範囲でそれぞれができることをやればいいわけで。
例えば僕の弟が12歳下の中学生で、いわゆる発達障害なんですけど、個人としては別に普通なんですよ。だけど学校や社会という集団の中で生きていこうと思うと、いろんな苦労を背負うんですよね。僕自身の育ちもそうだし、小学生の頃から大変な思いをしてきた弟を見てきたというのもあって、僕の場合は子どもに向かっているんだと思います。
子どもは子どもで大変なことがたくさんあるじゃないですか。365日の1日なり半日でも、僕が行くことで「楽しかったな」ってなってくれればいい。学校のアルバムを振り返ったときに、その日のことが楽しい思い出として残ってくれていれば嬉しい。それぐらいの感覚なので、皆さんももっとボランティアについて楽な捉え方をしてほしいですね。
今の目標は「子どもたちにも届く」タレントになること
――「手の届く範囲」ということですが、都築さんの場合、知名度を利用して大きな輪にすることもできると思います。
本音で言えば悩ましい部分はあるんですよ。宣伝することによって100のアンチが沸いたとしても、1の「私もやりたい」という人が生まれたら絶対プラスだし、そういう発信の意味はあると思います。けど、今はまだ僕の正義として、大きく発信するに至ってはいないかな。
今回取材を受けたのも偶然、(筆者との)つながりが生まれたからのことで、僕はそういう偶然から始まることを大事にしたいタイプなんです。それが実っていって、ゆくゆくはもっと子どもたちを助けられる動きになればいいですね。
――最後に、本分である芸人としての目標をお聞かせください。
四千頭身としても個人としても、これからどんな活動になっていくかは正直読めないですが、こういう子ども食堂や児童福祉の場に出向いたときに、子どもたちが喜んでくれるような活躍を続けることが今の一番の目標です。お笑いフリークだけでなく、子どもたちにも届くタレントになれるように頑張らないといけないなと思います。
◆取材協力:株式会社都築商店/子ども食堂「○△□子ども食堂」/子ども食堂「ぶんぶく食堂」
◆取材・文:鈴木康道
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