ドラマ特区「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」のプロデューサーにインタビューを実施した

<あやひろ>ドラマPが語る加藤史帆&森カンナの魅力「“これはいける”と確信」 今後の見どころは“初挑戦の勝負シーン”

2024.08.08 05:00
ドラマ特区「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」のプロデューサーにインタビューを実施した

日向坂46・加藤史帆と森カンナがW主演を務めるドラマ特区「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」(毎週木曜深夜0:59-1:29ほか、MBSほか)が現在放送中。同作は、「Webアクション」(双葉社)での連載が話題となりコミックス化もされた、Sal Jiangによる同名漫画が原作のオフィス・ガールズラブコメディー。お互いをノンケだと思い込んでいる女性2人の究極のすれ違いの恋模様を描く。

持ち前の負けん気でいちずに思い人を追い掛け、初恋街道を全速力で駆け抜ける“絶対に諦めない後輩”・兎田彩香を、連続ドラマ初主演となる加藤が、仕事ができて上司にも後輩たちにも慕われる一方で、過去のトラウマから“女好き”であることを隠している営業部エースの“絶対落とされない先輩”・鹿納弘子を、同じく連ドラ初主演となる森が演じている。

このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める上浦侑奈氏(MBS)、大杉真美氏(KADOKAWA)にインタビューを実施。作品への思いや制作裏話、キャスティング理由、印象的だったシーンなどを聞いた。

念願かなってようやくできた“ガールズラブ作品”

――はじめに、本作を制作することになったきっかけや経緯を教えてください。

上浦:大杉さんと4年前に「初情事まであと1時間」(2021年、MBSほか)という作品でご一緒してから、KADOKAWAさんのBL(ボーイズラブ)ドラマレーベル・トゥンクとともにMBSでドラマシャワー枠を立ち上げ、BL作品を2年間一緒にやっていました。

ドラマシャワー枠の立ち上げ当初から、いつかGL(ガールズラブ)作品をやりたいという話をずっとしていて、それが念願かなってできたのが今回の企画です。

作品を検討していたときに、大杉さんから「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」の原作を教えてもらい、そこからずっとドラマ化の機会をうかがっていたのですが、ありがたくも今回やっと実現しました。

――大杉さんが本作に目をつけたポイントをお聞かせください。

大杉:連載初期から読んでいたのですが、原作のSal Jiang先生が当事者視点で描かれているリアリティーと、お互いをノンケだと思い込んでいる女性同士が恋愛をするというキャッチーな設定、フックの強さ、いろいろな要素が刺さりました。

BL作品を作っているときも、当事者の目線を忘れないようにするということは常に考えていたのですが、GL作品で「無自覚なノンケこえー!」というセクシュアルマイノリティー目線で、エンタメとして当事者もそうでない方も楽しめる作品になっているという点が非常に面白いなと思い、提案しました。

目標は、日本ドラマから「エンタメで楽しめるGL作品」を作ること

――原作ファンも多い作品を実写化するにあたり、特に大事にしたことを教えてください。

上浦:まずは、先生がどういう思いで作品を描いているのかを知るために、たくさんお話をしました。全コマを全く同じ画角で同じように撮るのが必ずしも原作に忠実な実写化ということではないと個人的には思っていて、同じ精神性を描くことの方が大事だなと思っていたので、そこの擦り合わせを大事にしました。

先生からも、原作を描いたときとは時代がまた変わっているので、今の価値観を大切にしてほしいというお話をいただき、改めて今現在のレズビアンの方の当事者性や、社会の認識、価値観を大事にしながら、日本ドラマから「エンタメで楽しめるGL作品」を作るという目標を、制作チームの共通テーマにしていました。

――放送開始後の視聴者からの反響をどのように感じていらっしゃいますか?

上浦:キャストのファンの方のみならず、国内外のGLドラマファンの方々にまずご支持いただいているという印象があります。加えて、普段BLドラマを楽しまれている方、またGLドラマは初めて見るという方からの反響もあり、幅広い方が楽しんでくださっていることを本当にうれしく思っています。

――BLとGLの表現の違いで意識していることはありますか?

大杉: 企画当初から当事者性はすごく意識して上浦さんと話し合ってきました。例えばロケ地で実際にレズビアンの方が経営されているバーを使ったり、第1話でレズビアンのインフルエンサーの皆さんに出演していただいたり、Sal Jiang先生と森さんにレズビアン・セクシュアルマイノリティーの方のイベントに登壇していただいたりという取り組みをしました。

ですが、あえてGLとBLとで差別化を図ろうとは思っていなくて、両方のファンに見ていただけたらなと思っています。当事者が作った物語をエンタメとして発信することで、社会へのメッセージになればいいなと思っています。

また、Sal Jiang先生に企画を伝えに行った段階で、キャラクターそれぞれのセクシュアリティーなど、先生の中にあって原作に明示されていない部分も伺って、映像表象としてどうするか参考にさせていただきました。

キャラクターの背景を教えていただき、例えば役柄によっては爪を短く切っていただくといった細かい部分や、レズビアン・セクシュアルマイノリティーの多様さを表現するためにレズビアンバーにはボーイッシュな方もキャスティングするなど、実際のコミュニティーに接続する表象にするということはすごくこだわったポイントです。

加藤史帆は“玉手箱みたいな方” 森カンナは“女性にモテる女性”

――加藤史帆さんの起用理由についてお聞かせください。

上浦:加藤さんに関しては、前のご出演作もですが、特に日向坂46で活動していらっしゃるときの姿をバラエティー番組や歌番組、YouTube等でたくさん見させていただいて、普段の姿がまさに彩香ちゃんにピッタリだなと思いお声掛けさせていただきました。

実はすごく真面目で熱い部分が根底にありながら、次に何を発言されるか分からず目が離せなくなってしまう魅力が普段のご本人にもあって、玉手箱みたいな方だなと思っています。

彩香ちゃんと共通していると思うのは、根の強さ、芯の強さが伺い知れるところ。お芝居でも一切手を抜かずに正面からぶつかれる度胸がある、非常にかっこいい女性です。ふわっとしたかわいらしい方にも見えるのですが、異常に運動神経が良かったり、コメディーセンスが抜群だったり、トラブル時も瞬時に場を和ませられる機転と優しさもお持ちで、本当に何でもできるクレバーな人だなという印象があります。

――森カンナさんの起用理由についてお聞かせください。

上浦:長い間たくさんの作品で拝見してきましたが、どちらかと言うと普段ご本人が持っている佇まいのクールさやチャーミングさ、“女性にモテる女性”としての圧倒的な魅力といった点で、カンナさんしかいないと思いお声掛けさせていただきました。

私自身が思っていた“こんな森カンナさんが見たい!”という魅力がまさに弘子先輩には詰まっているなと思っていますし、弘子先輩のこのシーンをカンナさんのお芝居で見たいという思いを想像以上の解像度で具現化してくださっていて、ありがたく思っています。

ものすごく深い愛情をお持ちの方で、今回のドラマ化における我々の思いもくんでくださった上で、弘子先輩が身を置いてきたレズビアンコミュニティーについて熱心に勉強を重ねてくださり、カンナさんの熱意と愛情があってこそ今回たくさんのことが実現したと思っています。

――実際にお二人の演技を見てどのような感想を抱きましたか?

上浦:本読みの時点で、“これは!”という手応えがありました。クランクイン前からお二人の雰囲気も非常に良くて、かなり役にハマっているなと思いました。

大杉:森さんには“抱かれたい女ナンバーワン”になるような役柄を作っていただきたいと思っていたのですが、そのような感想がファンの皆さんからも届いています。とにかくかっこいいです。

撮影現場でのお二人の雰囲気がとてもよくて、クランクイン前にメインビジュアルの撮影や取材をしていたのですが、その中でお二人が徐々に関係性を作られていて。

すごく変わり者の加藤さんと、一見ツッコんでいるようでさらに愉快な変わり者の森さんというお二人の関係性がとても良いので、日を追うごとにどんどん関係性も深まって、役柄に反映される空気が生まれていったなと見ていて感じました。

「彩香ちゃんの真っすぐさと、演じる加藤さんの真っすぐさがマッチ」

――これまでの放送回で、特に印象的だったシーンを教えてください。

上浦:現場で“これはいける”と確信したのが、第4話のラストシーンでした。彩香ちゃんが弘子先輩を走って追いかけて、「私、女の人が好きなんです」と叫ぶところなのですが、彩香ちゃんがそれまで見せてきた “弘子先輩が大好き”という思いが、いかに切実だったか、そしてこれからの彩香ちゃんの成長の予兆を感じさせるシーンになっています。

「弘子先輩が好き」だけだと一向に伝わらないので、「女の人が好き」だと言えば、弘子先輩への好きが恋愛感情だと伝わるのではと彩香ちゃんなりに思ったのかもしれません。

ここからシリアスパートに入る中で、彩香ちゃんの恐ろしいほどの真っすぐさと、演じる加藤さんご本人の真っすぐで全力な一生懸命さがすごくマッチしていて、非常に手応えを感じました。カンナさんとの元々の信頼感があってのことですが、ここからのお芝居がより確実なものになるだろうなと感じました。

大杉:森さんがとにかくすてきで、第1話のレズビアンバーでの100人斬りの描写が、リアルにこういう人がいたらいいなと思わせるほどのインパクトでした。あとは、第4話で、彩香ちゃんに対しての思いは隠そうとしているのですが、「かわいい」と思わず言ってしまうシーン。それをごまかすしぐさがとってもかわいかったです。

上浦:「かわいい」とポロッと本音が出たところの声と表情の破壊力がすごかったですよね。そして私も、第1話のレズビアンイベントのシーンでのカンナさんは、“これは100人斬りだ”という衝撃がありました(笑)。

また、第3話で、「そんな思わせぶりなことばかり言ってたら本気にするよ」という弘子先輩のセリフがあるのですが、あれは第1話から第4話の中で唯一、弘子先輩から思わず仕掛けるシーンなんですよね。

弘子先輩は100人斬りしているぐらいのモテ女なので、本来は口説くこともたやすいはずなのですが、ノンケには手を出さないと決めており、彩香ちゃんの前ではずっと調子が狂い続けていて。その中で、お酒の力もあってか思わず“エース・弘子”が出るところなのですが、あのシーンのかっこよさには、さすがだなと感激しました。

「撮影現場を楽しみながら作品づくりをされている」

――撮影現場で目撃したハプニングや面白エピソードがあればお聞かせください。

大杉:メイキング動画などでも、お二人ともサービス精神旺盛で、カメラを向けたら大体踊ったり歌ったりしてくれるのですが、そうではないところでも仲良く楽しそうにしています。その裏で、実は真剣にお芝居の話をしていたり…という関係性ができていますね。

先日SNSに上がったけんかしているようなそぶりのメイキング動画は、“今日はけんかしようぜ”とお二人で決めた設定だったらしく、撮影現場を楽しみながら作品づくりをされているという印象があります。

上浦:オフ動画やTikTokでも、2人そろって様子のおかしさが加速していっている感があり、撮っていても笑いをこらえきれないときがあります(笑)。

私的にとても印象的だったのは、第1話のラストシーンの撮影でした。酔った勢いで彩香ちゃんが弘子先輩に「本当に好きなんです」と本音をぶつけるのですが、原作でも号泣しながら伝える描写になっていたので、監督とも相談して、“ここで涙があふれてくる”というお願いをしたんです。

そしたら、加藤さんがカンナさんに相談に行っていて。その姿を見ていたら、加藤さんにとってカンナさんは尊敬していて信頼できる先輩であり、カンナさんもまた加藤さんをとても大事に思っているのがよく分かりました。

――初共演でありながらも、強い信頼で結ばれた関係性なんですね。

上浦:はい。加藤さんは人見知りとおっしゃっていたのですが、カンナさんの距離感の探り方が非常にお上手で。早い段階から、すっかり打ち解けられていました。独特すぎる冗談で加藤さんの緊張をほぐされています(笑)。カンナさんが来たら、加藤さんの顔もパッと明るくなる感じですね。

一方で、実はカンナさんもそんな加藤さんがかわいくて仕方ないんだろうなということが伝わってくるような雰囲気です。カンナさんも加藤さんが来たらとても楽しそうで、そんなお二人がかわいらしいです。

――最後に、第7話から最終話に向けての見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。

上浦:第4話までは明るくコミカルなラブコメが続いてきましたが、第5、6話では、ラブストーリーとして2人の人間の本質を掘り下げて描きました。

秘め続けていた弘子先輩の過去が明らかになった後、今まで“ただ好き”という一心で弘子先輩に立ち向かっていた彩香ちゃんが、“弘子先輩のために自分に何ができるか”ということに気持ちを割いていくようになるのですが、その2人の関係性の尊さが楽しんでいただける1つのポイントなのかなと思っています。

第7話では弘子先輩が頑なになる理由を知った上での彩香ちゃんの成長と、本当の強さ、人間的なかっこよさが1つの見どころですし、“シゴデキ”で普段かっこいい弘子先輩の人間らしさが彩香ちゃんの前でだけ存分に出てきます。それが弘子先輩そのものの魅力につながっていたらいいなと思っています。

さらに、お二人がこの作品で初めてチャレンジしたあのシーンもあります。原作の中でもとっても大事なシーンなのですが、皆さま心してご覧いただければと思います!原作3巻の最後までできるだけ入れて実写化しており、全員でかなり気合を入れて挑んだ勝負シーンがたくさん待っていますので、お楽しみに。

大杉:第6話で、彩香ちゃんが“本当の弘子先輩ってなんなんだろう”ということを考え、弘子先輩も隠していた本当の自分の姿を彩香ちゃんに見せていくのですが、その先で、2人の関係性がどうなっていくかというところに注目してほしいです。屋上のシーン含め、見どころいっぱいの第7、8話なので楽しみにしていてください。

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