「滅相も無い」プロデューサーの上浦侑奈氏、戸倉亮爾氏、林田むつみ氏にインタビューを実施した

<滅相も無い>ドラマPが明かす制作秘話と加藤拓也氏に懸ける思い「加藤さんの世界観が大好きだからこそ、心中したかった」

2024.05.20 05:00
「滅相も無い」プロデューサーの上浦侑奈氏、戸倉亮爾氏、林田むつみ氏にインタビューを実施した

加藤拓也氏が監督・脚本を務めるドラマイズム「滅相も無い」(毎週火曜夜1:28-1:58ほか、TBSほか)が現在放送中。同作は、巨大な“穴”が現れた日本を舞台に、その“穴”に入るか悩む8人の男女と教祖の姿を描く、映像×舞台×SF×アニメーションが融合した完全オリジナルのSF群像劇。

“穴”に入るか悩む8人の男女を中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想、古舘寛治、平原テツ、中嶋朋子、窪田正孝が、“穴”を神とする団体の教祖を堤真一が演じ、津田健次郎がナレーションを務めている。

このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める上浦侑奈氏、戸倉亮爾氏、林田むつみ氏にインタビューを実施。作品への思いや制作裏話、視聴者からの反響について思うことなどを聞いた。

「高尚で重厚に見え得るのではないかという勝手な不安があった」

――まずは、完成した映像を見た率直な感想をお聞かせください。

戸倉:脚本の初稿があがって、みんなで内容についてあれこれ話し合おうかというときに、加藤さんから「まずは本読みをしたいです」とリクエストがあったんです。加藤さんが信頼を寄せている(最終的にご出演していただいたみなさんとは違う)役者さんたちに集まっていただき、加藤さんの演出を交えながら本読みをしました。

これは、少なくとも私の身のまわりの現場ではあまり無いことでしたが、自分のペースで勝手に読んでしまう読み手側も本の意図とリズムを理解するし、加藤さん自身も書いた言葉を全て音として聞きたいということで、とても合理的で有意義な機会でした。

上浦:本作はともすれば、高尚で重厚に見え得るのではないかという勝手な不安が当初少なからずあったんです。ですが、その本読みをしていただいた際に、不安は一気に吹き飛びました。ずっと明るく楽しく見られる作品になりそうだなと思いワクワクしたのを覚えています。

――この作品を打ち出そうと思ったきっかけを教えてください。

戸倉:僕は過去に加藤さんとお仕事をご一緒したことがあったのですが、それ以降も、もう一度、それも監督・脚本という形でご一緒したいと思っていましたし、数年間、そんな思いを加藤さんにも伝えていました。2023年のはじめ、上浦さんに企画のご相談をする機会ができて、最初に「加藤拓也さんお好きですか?」と聞いたところ、「大好きです!」と即答されて。

上浦:戸倉さんからご提案があった際、私もすごく興味があったので「今すぐ会いたいです」とお伝えして、2023年の2月に「博士の愛した数式」の公演で加藤さんが長野・松本にいらっしゃるということで、東京に戻られるのを待たずに押し掛けました。

そこでお会いしてから、加藤さんとの企画の開発がスタートして。ある日、加藤さんから「日本に穴が開く」というアイデアをいただいた際は、私たちにとっては突拍子もないアイデアでしたが、「めちゃくちゃ面白そう!」と。でも、実はそこから今の話になるまでには紆余曲折あって、全然違うホラーの話になったりもしていたんです(笑)。

戸倉:企画が動き出した当初から、上浦さんとは「“加藤拓也の塊”みたいなものをつくりたいですね」という話をしていました。なので、根幹の部分で言うと、一番大事にしていたのは“テレビドラマという世界で加藤さんのやりたいことを実現すること”でした。

私が敬愛している加藤さんの作劇や演出は、ともするとマジョリティーを優先する方針においては表現を丸められがちなのですが、MBSさんのドラマづくりの方針はそうではないと思っていましたし、なにより今回は上浦さんが一番の味方だったので、このような作品が実現しました。

「加藤さんの世界観が大好きだからこそ、心中したかった」

――物語をつくる上で、加藤監督とは具体的にどのような打ち合わせをされましたか?

上浦:今の深夜ドラマは、人気の原作にすてきなクリエイターとキャストがマッチングして成立していくものがほとんどですが、大前提として、私は加藤さんとやる上ではそういったことはあまりしたくなかったんです。加藤さんの世界観が大好きだからこそ、心中したかったというか。

深夜ドラマなので、きっと予算のところで制限をおかけすることになるだろうとは思いましたが、逆に予算以外の部分ではうんと自由に、存分にやっていただきたいという思いでした。

そういう意味でも、オリジナル作品をやるということが大前提にあって、オリジナルでやるということは、結局は“加藤拓也の塊”の話なので、最終的なアイデアや物語に関しては、基本的に全て加藤さんに委ねました。

「逆説的にテレビドラマの可能性を感じることができた」

――キャスティングはどのように行われましたか?

上浦:我々と同じように加藤拓也さんが好きで、一緒にワクワクしたものをつくりたいと思ってくださった方が奇跡的なメンバーで集まってくださいました。本当に感謝しかないです。

――放送開始後の視聴者からの反響をどのように感じていますか?

上浦:今までと全く違う客層の方にも広がっているなという印象がありました。これまである程度のドラマ制作を経験してきて、商業的な部分に大きな重点を置いたドラマづくりから自由になって、一度チャレンジしてみたいという思いがありました。

ただ、商業的なところから自由になるということは、“広く浅く”ということとは相反すると思っていました。なので、たとえ少ない人であっても、深く届けられればいいなと。

ですが、TVerの回り方を調べたりエゴサをしていても、思ったよりも広い範囲にしっかり届いているという印象があって、それがすごく幸せでした。

これまでのドラマの慣習から解き放たれて自由になった気持ちでつくった作品が、こんなにも多くの方に届いたことで、逆説的にテレビドラマの可能性を感じることができてうれしかったです。

――確かに、これまでに類を見ない作風が話題となっていますね。

戸倉:加藤さんは、映画も演劇もドラマも全部やられている人で、上浦さんや僕はドラマや映画、林田さんはCMや広告回りが主戦場で。メインスタッフの方々も、いろいろな分野のプロフェッショナルがいたんです。加藤さんの脳内を実現するために、林田さんが映像ジャンルの畑を超えて素晴らしいスタッフの皆さんに声を掛けてくださいました。

林田:監督から「ドラマに興味ありませんか?」とお声掛けをいただき、即答で参加させていただきました。今回、映像・演劇・VFX・アニメーション・紙芝居とジャンルが多岐に渡っていましたが、それぞれどう実現するかはとても難しいことでした。

演劇的アプローチが必要なスタジオシーンは、舞台や映画で活躍されている福島奈央花さんの存在が不可欠でした。そして、ロケシーンとスタジオシーンで全く異なる世界を、海外でも活躍されるカメラマンの木津俊彦さんが丁寧に映像で切り取ってくださいました。

ある意味主人公とも言える“穴”については、VFX分野において絶対的信頼のある格内俊輔さんがデザイン構想から参加してくれたので、あのなんとも魅力的な穴ができました。

各ジャンルのプロフェッショナルや、オープニングアニメーションの若林萌さん、ポスタービジュアルのRakさんなどの魅力的なクリエイターの方々が引き受けてくれたからこそ、「ジャンルごちゃ混ぜドラマ」が実現できたと思っています。

上浦:林田さんのお声掛けによって、ご一緒できるとは思っていなかったような人たちが集まってくださったなという印象です。全員が手探り状態でしたが、プロフェッショナルな方たちもそれを逆に楽しんでくださったというのが、すごくうれしかったです。

いろいろな方がたくさん頭を悩ませて、誰も見たことのない世界へ行こうとしたという、このお祭り感というか、みんなでチャレンジしたという経験が財産になりました。

――最後に、最終回に向けての見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。

上浦:例えば美術館に行ったとき、きっちり説明を読んで一から順番に見ていったり、これには何かしらの意味があるのではないか、完全に理解しないと意見を言ってはいけないのではないかという敷居の高さを感じることがあると思うんです。

でも本当は、好きな絵だけを好きなように見て、「なんだかおしゃれだね」「分からないね」「変だね」「かっこいいね」とそれぞれ好きな感想でラフに帰っていい場所なんですよね。

今回の作品でも、もしかするとそういった一見敷居の高そうな印象を出してしまっているのではないかという思いが定期的に浮かんで、そこだけが少し気掛かりです。皆さんにはぜひ、気楽に、自由に、直感的に楽しんでいただければなと思います。

大きなクリフハングがあるわけではないですが、6人でも7人でもなく、8人全員の人生を知った先に見える景色があるはずなので、ぜひ最終回まで見ていただきたいと思います。

また、一緒に楽になってもらえるといいなとも思っています。生きるということは、どうしても苦しい瞬間もあるし、誰しもが、誰かに共有したかった悩みや誰にも言えなかったトラウマを抱えていると思うんです。

人生を振り返ってみると、些細な出来事でも実はしこりがあったなと思う瞬間があって、それを思い出さないようにしていたり、思い出せなくなってしまっていたりすると思うのですが、8人分の人生を見たときに、皆さんの抱えているわだかまりが少しでも軽くなるといいなと思っています。それが、このドラマが持っている強さなのではないかと思います。

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