「SHOGUN 将軍」主演の真田広之にインタビューを行った

真田広之、“正しい日本”をハリウッド作品で表現するため「脚本は何往復も繰り返して問題点を解決」<SHOGUN 将軍>

2024.03.06 08:10
「SHOGUN 将軍」主演の真田広之にインタビューを行った

真田広之主演の「SHOGUN 将軍」が、ディズニープラスの「スター」で2月27日より独占配信中(全10話/毎週火曜に配信※最終話は4月23日[火]配信予定)だ。今作にプロデューサーとしても名を連ねる真田は、2003年公開の映画「ラスト サムライ」でハリウッドに進出し、今やハリウッド映画における“日本人”と言えば真田の名が挙がるほどの存在になっている。“日本の文化を正しく世界に紹介したい”という思いを持って、「SHOGUN 将軍」の制作・撮影に臨んだという真田に、主演、そしてプロデューサーとしての視点から作品について語ってもらった。

「今の大変な時代にまさに必要なヒーロー像」

――“日本の文化を正しく紹介したい”という思いがあるとおっしゃっていましたが、この「SHOGUN 将軍」を選ばれた経緯を教えてください。

今回は自分の発案ではなく、以前一緒に仕事をしたことがあったプロデューサーから「『SHOGUN 将軍』を作りたいんだけど、虎永を演じてくれないか」という話を聞いて、自分で吟味した上で引き受けました。それから何年かたち、紆余曲折あって「プロデューサーも兼ねてくれ」と言われまして、(エグゼクティブ・プロデューサーの)ジャスティン(・マークス)が参加することが決まった後で、自分もプロデューサーとして関わることも決定しました。

「今、この役を自分がやるのか?」と考えた時に、虎永のモチーフとなった(徳川)家康は戦乱の世を終わらせて平和な時代を築き上げた人物です。それが僕にとってのヒーローたる所以ですし、特に今の大変な時代にまさに必要なヒーロー像なのではないかということが、お引き受けした一番のモチベーションとなっていました。

――家康をインスパイアしている虎永を真田さんはどのように解釈して演じられましたか?

虎永はミステリアスであり、策略家であり、かつ“ファミリーマン”。敵にはポーカーフェイスで接しながらも、身近なものには弱みも見せる。そういう意味では、ただ大きく強い武将というだけでなく、人間らしさ、人間性がある人物だと感じました。それは脚本にも書かれていましたので、そういう部分を出せればいいなと思いながら演じていました。

――主演だけでなくプロデューサーとしても作品に関わられていますが、大変だったことは何かございましたか?

やることがたくさんありましたけど全てが楽しくて、ゼロから物づくりに参加できる喜びを常に感じていました。その中で大変だったのは脚本作りですね。原作を尊重しながらもいかにオリジナリティーを打ち出せるかということで、日本人の目を通した彼らを見せるという、新たな視点を盛り込むことにしたわけです。

それに歴史上の人物からインスパイアされていますが、原作の小説自体はフィクションのエンターテインメントなので、その世界に浸っていただいて、ストーリーやキャラクターも信じてもらうためにはオーセンティックに作らなければいけないなと思いました。そのためのスタッフィングが一番大事なポイントでしたね。そこに時間を割き、時代劇の経験豊富な日本人クルーを各所に配置するといったチーム作りが気を使った部分です。

ハリウッド制作のドラマも“日本人は日本語”で!

――ハリウッド制作ですが、劇中の日本人は日本語のセリフを話しています。そういうところもこだわった部分でしょうか。

オーセンティックなものを作るには日本人は日本語を喋って、サブタイトル(字幕版)にするのがいいんじゃないかというのは最初の段階でジャスティンとも意見が一致していました。他に「現代っぽい言葉にするのは絶対にやめよう」とか「西洋化するのもやめよう」「ステレオタイプなエピソードも切っていこう」と話し合って、絞り込んでいって脚本を作っていきました。

脚本作りの段階で吟味したのは、違和感のある部分はノートをつけておいて、「この場面ではこういうことを言わないのではないか」とか、原作を尊重しながらも日本人が見て「これっておかしいよね」って思わないような感じにすることでした。

本が上がってきたら翻訳者に渡して、翻訳したものを劇作家に渡してセリフになって返ってきたら、それを逆トランスレーションしてジャスティンに送り返して、というのを何往復も繰り返して1話1話作っていったので、初期段階で最初に決めた禁止事項というか問題点は解決されました。それでも気になるところがあったら現場に入るギリギリまで直していましたね。

――初期段階で修正がきちんとされていると、あとの直しが少なくて済みますね。

はい。“ステレオタイプなエピソードを切っていく”ということに関しては、バイオレンス的なシーンが残酷さを強調し過ぎないようにデリケートにチェックしていきました。乱世の世ですから残酷なシーンもありますが、理由もあればルールもあって、文化に根付いたものであるということが伝わるようにしっかりと落とし込みたいと思っていました。準備は日本のスタッフと一緒に進めていきましたが、いざ現場になると何が起こるか分からないので、リハーサルにも立ち会って、動きや小道具の置き方まで全てチェックしました。

――“日本の文化を正しく伝える”ために徹底したチェック体制を。

ジャスティンも、そういう部分に関して全面的に自分に期待してくれていたので、遠慮せずにチェックを入れました(笑)。小道具選びから、セットのデコレーションまで全部のチェックもさせてもらったんですが、ジャスティンがそういうことを尊重してくれていたので話が早かったです。

「キャスティングに関してもゼロから一緒に作り上げた」

――キャスティングにも関わられたということですが。

スタッフィングの後、キャスティングに関してもジャスティンに最後の2、3人に絞られてきたところで意見を聞かれて、日本語のこと、演技のこと、キャラクターに合ったキャスティングをしたいということだったので、意見を申し上げました。元々は違う役で参加することになってスケジュールを空けていた方も「もしかしたらこちらの役のほうが合うんじゃないか」ということを申し上げて、それが採用されたこともありましたので、キャスティングに関してもゼロから一緒に作り上げた感じです。

――キャストもそれぞれハマり役ですね。

(虎永の家臣の)藪重役の(浅野)忠信君は、彼が10代の頃からの付き合いですから、僕にとって“藪重”にピッタリでした。広松役の(西岡)徳馬さんに関しては、数人いた候補の中から「もう彼以外考えられない」って僕が推薦して決まりました。虎永にとって非常に重要なパートナーですから、徳馬さんとは30年以上の付き合いでいろんな役で対峙(たいじ)してきましたので、「その長きにわたる関係性をセリフではなく、言葉ではなく、見た方に伝えるにはこの人しかいません!」と。実際、素晴らしいパフォーマンスをしていただいたのでうれしく思っています。

――淀君にインスパイアされた“落葉の方”役の二階堂ふみさんも雰囲気、存在感がすごいですね。

まさしく存在感が素晴らしいです。自分の役として、髪飾りの選び方一つ、履き物の選び方一つまでこだわられていました。直接的な絡みは少ないのですが、重要なライバルですよね。彼女は日本で一度“淀君”を演じられていて、僕は僕で家康を一度演じたことがあったので、お互いに役をしっかりとつかんでいて、会話のないところでも目と目を合わせるだけで、2人の過去や奥行きを感じさせることができました。

それに絡みは少ないとはいえ、彼女のシーンも僕は全部付いていて、演技を見ていました。割と早く向こうの現場になじんで、後半はクルーとも友達になってやりとりしていました。そういうところも彼女の良さですね。

――セットも大掛かりなものに。

ハリウッドの力技と言えるぐらいのスケールの大きなセットを組むことができました。嵐のシーンのセットも、空中に浮かんで自動で操縦できる実物大の船を作ってしまって、その上にウォータータンクがあって、実際に役者を乗せて船を揺らしながら水がダーッと流れてくるんです。それをカメラマンが手持ちのカメラで撮影するという、ディズニーのアトラクション的な感じでした(笑)。

忠信くんが崖の下で溺れそうになるシーンも、セットで崖を作って、ウォータータンクを積んで一気に何トンっていう水を流して実際に波を作ったりして。忠信くんも体を張った演技を見せてくれています。そういうスケールの大きさとダイナミックなところと、繊細な日本の美学というのが今回のテーマだったので、その辺りが見てくださる方に伝わるといいなと思っています。

「1600年の日本に浸って見てもらえれば」

――海外制作の作品で“日本人”を多く演じられてきた真田さんだからこそ、表現できたことも多かったのかなと思いました。昨年の「ジョン・ウィック:コンセクエンス」でのコンチネンタル・ホテル大阪支配人・シマヅも日本語で話していましたし、正しく紹介されているのを感じました。

「ジョン・ウィック―」もチャド(・スタエルスキ)監督が日本の武士道をリスペクトしてくれていて、僕の役には武士の在り方みたいなものを表現してほしいというものがありましたので、現代物とはいえ、その志は刷り込んだつもりです。割と日本人以上に海外の方が日本人の精神性に興味を持ったり、憧れたりしてくれているんですよね。ですから、「SHOGUN 将軍」もどこかそういうものをあらためてくみ取っていただけるチャンスになればと思っています。1600年の日本の世界に浸っていただいて楽しんで見てもらえればと思っております。

そしてこれが配信されて、さらに日本の題材やら人材やらを紹介する作品がどんどん増える。その架け橋にこの作品がなればいいなと思いますし、また機会があればプロデューサーとして日本の素晴らしいタレント、スタッフ、美学を紹介していければいいなということも思っています。

◆取材・文/田中隆信

撮影/永田正雄

ヘアメイク/高村義彦(SOLO.FULLAHEAD.INC)

※西岡徳馬の「徳」は心の上に一本線が入るのが正式表記

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