お笑いコンビの解散ラッシュが止まらない…「賞レース時代」が巻き起こした業界の異変
近頃、お笑い業界を揺るがすニュースが続出している。界隈で名の知れた芸人たちが次々とコンビやトリオを解消、いわゆる“解散ラッシュ”が起きているのだ。一体お笑い業界に何が起きているのだろうか……。
芸人の解散ラッシュは、ここ半年間だけを見ても顕著に見て取れる。例えば2013年に結成した「なにわスワンキーズ」は、5月24日のお笑いライブをもって解散。その翌日には「ちからこぶ」が、およそ8年半の活躍にピリオドを打った。
また5月2日には2008年に結成した「コマンダンテ」が解散、結成から10年になる大阪吉本の漫才コンビ「ジュリエッタ」も4月28日に解散している。他にも「井下好井」や「コウテイ」、さらには結成から23年の「オジンオズボーン」までもがコンビ人生に幕を下ろした。
ただ、若手芸人の解散に関しては、お笑い業界ではよくある話だ。最盛期こそすぎたものの、お笑い芸人を目指す人口はいまだに多く、吉本興業の養成所「NSC東京」では、昨年度の新入生が500人を軽く超えている。
業界全体を見渡せば、毎年何百組という若手コンビが誕生と解散を繰り返しているのだ。
近年ではSNSや配信サイトの隆盛によって、若手芸人にも注目が集まっているため、今までもあった光景が解散ラッシュに見えているのかもしれない。
しかしそこで違和感があるのは、「オジンオズボーン」や「井下好井」など、結成から15年以上のコンビまで解散する現象が続いていることだ。その背景を探ると、賞レース時代ならではの“別の理由”も見えてくるように思う。
まず注目すべきは、賞レースの影響力が大きくなったことだ。
現在大手メディアに露出が可能な芸人たちは「M-1グランプリ」や「R-1ぐらんぷり」、「キングオブコント」といった賞レースで成績を残すことが必要不可欠。そのため停滞したコンビを解散し、新しい形態で再起を狙うという動きが活発化しているという見方もできる。
こうしたセカンドキャリア組で代表的なグループでいえば、2021年のM-1王者の「錦鯉」は、それぞれが長年組んでいたコンビを解散後に結成している。
他にも「大宮ツッコミNo.1選手権 第1回グランドチャンピオン大会」で即席ユニットを結成し、『M-1グランプリ2020』(テレビ朝日系)で準優勝したことでブレイクした「おいでやすこが」も、ある意味では長年の活動方向をシフトしたセカンドキャリア組の一例といえるだろう。一方、YouTubeなどの新メディアへの対応も解散の理由として見逃せない。カジサックや「オリエンタルラジオ」の中田敦彦といったYouTubeで成功した芸人が現れてからというもの、続くように多くの芸人が自身のチャンネルを持つ機会が増えている。
テレビのバラエティでは大画面を埋めるために多くの芸人がひな壇に座り、全員でリアクションを取る「集団戦」型の番組フォーマットが多いが、YouTubeなどは予算都合やスマホの画面サイズなどの理由から、より少人数、個人の活動にフォーカスした企画が好まれやすい。
そうした「個人戦」型の新興メディアをみるファンが増加する中、「わざわざコンビという枠組みで活動を縛ることはない」と方針を転換する芸人も増えているようだ。
いずれにせよ、「解散ラッシュ=“再起”への足掛かり」とする考えは意外と濃厚といえるかもしれない。
一つ一つの解散はファンにとっては悲しいニュースかもしれないが、その中には必ず次のステージへと向かう挑戦の姿がある。解散ラッシュを悲劇とばかり捉えず、新時代のお笑い業界の未来に期待することにしよう。
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