ぼる塾 酒寄希望 撮影/松山勇樹

ぼる塾・酒寄が育休中に考えたこと「田辺さんだけのために小説を書いた」

2023.03.19 07:03
提供:ENTAME next

今やテレビで観ない日はないほど人気者となった、お笑いカルテット・ぼる塾。そのメンバー・酒寄希望のエッセイシリーズは、彼女が育休中に始めたnote連載をきっかけに書籍化へと至った。2月27日には、シリーズ第二弾『酒寄さんのぼる塾生活』を上梓。また昨年11月からは、神保町よしもと漫才劇場のライブに復帰し4人でのネタも披露しているほか、様々な表現分野で活躍している。今回は、そんな彼女が持つクリエイターとしての素顔、意欲に迫った。(前後編の後編)

2012年から「田辺さん」こと田辺智加とのコンビ・猫塾で活動していた酒寄。2019年、自身が育休・産休を取得したタイミングで、後輩コンビ・しんぼる(あんり・きりやはるか)と猫塾が合体し、ぼる塾が誕生した。

結成から間もなく、お茶の間の人気者となったぼる塾。昔から憧れだった番組で活躍する相方たちの勇姿をテレビで観ていた酒寄は、育休中も創作活動を続けていた。

「他の3人と同じように働くことができない私でも、ぼる塾のために何かできないかと思って始めたのがnoteの連載、そしてぼる塾YouTubeの動画編集でした。色々な人のYouTubeを見ているうち、テロップや見せ方で動画をより面白くできるんだということに気づいて“これなら、私が映っていない動画でもぼる塾の活動に参加できるんじゃないか”と考えました。

それまで動画編集は未経験だったのですが、お手伝いをしてくれている構成作家の方がイチから教えてくれて。機械周りがとにかく苦手なので、最初は不安も大きかったのですが、丁寧に教えていただいたおかげで出来るようになってきました」

育児で多忙な毎日を送る彼女だが、それでも創作活動は苦にならず、むしろ楽しんでいると語る。

「考えることがすごく好きなので、何をしているときも頭のどこかで何かを作ったりしているんです。例えばエッセイだったら、考えている段階である程度の文章を組み立てて整理しておくことで、時間ができたときにパソコンの前に座ればすぐに書き上げることができます。イマジナリーフレンドのように、頭の中に住んでいる田辺さん・あんりちゃん・はるちゃんに会話してもらって、それを文字にするというのが、いつものやり方です」

メンバーとの何気ない日常を綴ることで、テレビ番組には収まりきれないぼる塾の魅力を伝えている酒寄のエッセイ。その文章からは「田辺さん」「あんりちゃん」「はるちゃん」に対する愛情に溢れたまなざしが感じられ、読者の心をあたたかくする。

「その人それぞれに合った愛情の表現方法って、誰しも必ず一つはあるんじゃないかなと思うんです。私自身は、話すことがとても苦手なのですが、文章にすると自分のペースで表現できるので、より良く“好き”の気持ちを伝えられる気がします。

それから、“この人のここが素敵だな”や“これが好き”と感じたら、まずは一番安心してお話できる人を相手にその魅力を伝えてみると、話が分かりやすいように整理されたりして良いですよね。ぼる塾にいると、話を聞いてくれる人が3人もいるので、いつも本当に有り難いんです」

“ぼる塾の魅力をもっと伝えたい”という思いが原動力となる彼女のクリエイティビティは、メンバーとのコミュニケーションによって大いに刺激を受けるという。彼女のエッセイシリーズに収録されている『転生したら田辺さんだった』という漫画も、そんな経緯によって生まれた作品だ。

「私はよく田辺さんと、色んな設定を考えてお話を作るということをやって、盛り上がっているんですね。例えば、“ステラおばさんと、クレアおばさんと、りくろーおじさんと、田辺さんがホームパーティーをやったら、どんな会話をするんだろうね”とか(笑)。

そのノリで“女子高生が転生して田辺さんになる”という設定を伝えたら、田辺さんから“面白そうね! 読みたいから、書いてよ”と言われて。そこで田辺さんだけのために小説を書いたのですが、それを一冊目のエッセイが出るとき担当編集の方にお見せしたところ、“これを原作にして漫画にしましょう”と提案してくださったんです」

メンバーとの何気ない日常が収められるエッセイ作品のなか、「宇宙で戦う田辺さん」の活躍を描くSF作『転生したら田辺さんだった』は、異彩を放っている。

「小説執筆はエッセイとはまた違った楽しさがありました。何でもありなSFだからこそ設定も自由だったので、書いていて愉快でした。必殺技を田辺さんに繰り出してもらったり(笑)」

ぼる塾のネタ作りをはじめ、エッセイ、動画編集、そして小説と、多様な創作活動に挑戦している酒寄。そんな彼女が、今後やってみたい表現とは。

「今はグループの一員として、ぼる塾について書いていますが、いつかは個人としてもエッセイや小説を書けるようになったらいいですね。テイストはこれまでどおり、日常系になるんじゃないかなと思います。あとミステリーも好きなので、挑戦してみたいなとは思っているんですが、トリックさえ思いつけば……ですね(笑)。今度、『名探偵コナン』ファンの田辺さんと話し合って、なんとか思いついたら書いてみたいです」

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