【舞いあがれ!】投資家を虚業扱い?悠人の「インサイダー取引」は制作側の偏見か
なんて古い価値観なんだ…。あきれ果てる視聴者も続出していたようだ。
2月3日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第86回では、投資家の岩倉悠人(横山裕)に一大スキャンダルが勃発。製薬ベンチャー企業の株価急騰で26億円もの損失を取り戻していた悠人だったが、インサイダー取引との疑惑が報道された。その描写に疑問の声が続出しているという。
悠人は「リーマンショックを予言した男」として一躍有名になり、作中の2013年当時にはテレビにもよく出演する著名投資家となっていた。しかし彼が運用するファンドは上げ相場のなか、半年で10%超も下落し、投資家からは解約請求が殺到。それでも前回のラストシーンでは「勝つ見込みはある」と強気なところを見せていたのである。
「損失を取り戻したのもつかのま、情報番組が『投資のカリスマにインサイダー疑惑』と速報し、悠人の顔写真をでかでかと映し出しました。その様子はまるで、悠人の手掛ける投資という仕事が“虚業”であると強調しているかのよう。その描写に視聴者は怒りすら感じていたというのです」(週刊誌記者)
本作ではかねてから、長男の悠人だけがやたらとひどい扱いを受けていたもの。それに対して岩倉家の家業である部品工場に関しては、業績が悪化しようが、心労の絶えない父親の浩太(高橋克典)が心筋梗塞で急逝しようが、「真っ当な仕事」として描かれてきた。
航空会社の内定を蹴って部品工場に入社したヒロインの舞(福原遥)は「お父ちゃんの夢」という殺し文句を武器に、航空機用部品の試作という無理難題に挑戦。そんな彼女の意志は常に尊重され、現社長で母親のめぐみ(永作博美)は舞を右腕として信頼している様子だ。
「一方で投資家になった悠人に対しては、両親ともに『大丈夫なのか?』『夢あるのか』と常に批判的。実際にはストレートで東大に合格し、卒業後には大手電機メーカーに勤め、投資家になってからは経営危機に陥った実家の部品工場を買収するという親孝行までしているのに、実家からは一向に認めてもらえない有様です。そんな頭の固さは岩倉家だけでなく、制作側の認識も反映していたのではないでしょうか」(前出・週刊誌記者)
部品工場に関してはリーマンショック直撃という不運はあったものの、経営が傾こうが長年働いてきた従業員をリストラしようが、それは「しょうがないこと」として描かれてきた。そこには「ものづくりは真っ当な仕事」との価値観が反映されていると感じた視聴者も少なくないことだろう。
それに対して悠人が手掛ける投資業に関しては、父親の浩太は最後までまともな職業として認めていなかった様子。しかも今回、インサイダー疑惑まで飛び出した日には、制作側に「業績のためなら不正も厭わない仕事」との先入観があると疑ってしまうほどだ。
「投資業を虚業扱いするのはあまりに一方的な見方です。それこそ銀行や保険会社も“機関投資家”として、日常的に投資業務を行っています。悠人が企業内の資金運用担当者だったら、岩倉家が彼を見る目も違っていたはず。それがファンドになると途端に胡散臭い目で見るのですから、まさに偏見の表れにすぎません」(前出・週刊誌記者)
そもそも投資ファンドでは十数社~数十社に投資を分散し、リスクヘッジを行っているもの。特定のベンチャー会社に総張りして一気に損失を取り返すという悠人の運用方法は、ファンドの実態を反映しない滑稽な描写だと指摘せざるを得ないところだ。
果たして悠人はインサイダー取引の疑惑を払しょくできるのか。それとも逮捕されてしまうのか。これで投資家を廃業した悠人が「真っ当な仕事」に就くようであれば、それは制作側による職業差別と指摘せざるをえないところかもしれない。
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