母娘のお悩み相談に青木さやかが答える

「子どものころから母に振り回されてきた。もう母とは距離を置いたままでいい?」と悩む女性へ、青木さやかのアドバイス【青木さやか「娘とわたし」#6】

2022.11.25 22:00
母娘のお悩み相談に青木さやかが答える

タレント・女優として活躍し、昨年は初のエッセイ集『母』が話題となった青木さやか。今回は、読者から寄せられた悩みに答える。

相談内容は、「母とは距離を置いてもいいか」

これまで、娘とのさまざまなエピソードを描いてきた本連載にて、今回から短期集中で悩み相談がスタート。読者から寄せられる「親子」に関する相談に青木さやかが答える。第一弾となる今回は、関係のうまくいかない母とこのまま距離を置いてもいいものか?という相談。数十年にわたる、母との葛藤を乗り越えてのアドバイスとは。

青木さん、こんにちは。母との関係で悩んでいます。

母は子どもの選択を特に理由なく否定したり、かと思うとトロフィー扱いしたりして、若いころはずいぶん振り回されました。私も結婚して息子が生まれ、程よい距離感でやれているつもりでした。が、半年ほど前に大きなケンカをして以来、LINEもブロックしているし一切連絡していません。なんというか「もうこの人たちとはこれ以上関わっても無駄」と、スッキリしてしまったんです。

私なりに親子関係について学び、母の人生にあったであろう辛さなども理解しているつもりです。でも、理解しているからといって飲み込んで仲良くできるものでもなく。40歳にもなって親のことで悩んでいるなんて、なんだか情けないし時間がもったいないし。早くけりを付けて自分の人生を充実させた方がいいと思うのですが、なかなか気持ちの置き場が見つかりません。

青木さんはどう思われますか?「もう私たち親子は離れたままで終わりましょう。さよなら!」という選択肢はありだと思いますか?(P.N りんりんさん 40歳)

数十年を費やしてみて

『母』という自伝的エッセイを出させていただいてから、多くの女性の方達からお手紙やSNSに長文でメッセージをいただきます。その内容は、わたしの本に対する感想ではなく、ほとんどが、ご自分が母親に対して実は憎んでいたのだという心の奥底の吐露や、絶縁してみたもののどうも苦しさが残る、年老いた親に対してこれでいいのであろうか、という自分でも、どうにもならない心のうち。

わたしの本を読んでいただいたのをきっかけに蓋をしていた母親への思いが、ブワッと出てきてしまったのかもしれません。そして、気持ちの持って行き場がなく、わたしにお知らせくださったのではなかろうか、そう思ったりもしています。

りんりんさん、こんにちは(ここで挨拶を挟むという斬新さ!)。

「もう私たち親子は離れたままで終わり、さよなら!」という選択肢は、ありか、なしか。

親で悩む自分に早くけりをつけたいというお気持ち、よくわかりまして。結局のところ、わたしは親のことで気持ち掻き乱され、その負担は異常に大きく、この数十年、そこから抜け出すべく様々な挑戦をしてきたように思います。まさにそこに人生を費やしていたと言っても過言ではないかも。

今回は、わたしの体験的なお話を書かせていただきますので、参考になればと思います。

初期のチャレンジ

チャレンジその1「自然にまかせる。そうすれば時間と共に親を許せるだろう」

わたしは、環境が変われば親に感謝できるようになるものだと思っていました。感謝できるということは、嫌いという気持ちはもちろん薄れるものだろうと。

26歳の時、愛知県から上京しました。親元から離れ、彼氏と貧乏二人暮らし。初めての家事。焼きそばくらいしか作れませんでした。親のありがたみが身に染みるかと想像していましたが、いや、ありがたみどころか、せいせいした自分がいました。

次に来た、ありがたみがわかるかもチャンスは、わたしが親になった34歳の時。自分が親になれば、さすがに親のありがたみがわかるだろう。「ああ、こんなに大変な思いをして産んでくれたのねと思うものよ〜」と、たしかに世間から流れてくる情報はそう教えてくれていたはずでした。

わたしは大いに期待しました。きっと自然と出てくるはず、「お母さん、産んでくれて、ありがとう」。

しかし、あては外れました。大外れ。自分でもびっくり。産まれたばかりの娘を抱いている母親を見たとき体の奥から出てきた感情は、「わたしの大事なものに触らないで」というものでした。

なんでこんな思いが出てきたのか。いよいよ、わたしは人間失格。多分一生、母との和解は難しいに違いない、とガッカリしたものです。そして、自分の中にある憎しみの根深さに自分で驚いたことを覚えています。

チャレンジその2「わたしは辛かった!今だって辛い!と大声で言ってみた」

そういえば、わたしはいつだって、我慢していました。固定観念を押し付けられたことも、褒められず自信を持てない自分になったことも、世間体を一番に考えなさいと言われたのに離婚した母親のことも、母よりも女にみえたことも。いつだっていつだって、本当のことは言わずに我慢して、ただ不機嫌な顔をして母に関わっていました。

わたしが38歳の頃でしょうか。母に、今までの不満をぶち撒けてみたらどうだろうか、と考えました。本当のことを言ってみたらスッキリするかもしれない、そして、謝ってくるに違いない。わたしは、そう考えたのです。

ある日、実家へ行き突然わたしは母に言いました。

「昔、こうだったじゃない!」

「こう言ってほしくなかった!」

母から返ってきたのは、「そんなことは言ってません!」という答えでした。

記憶にございません、と政治家ではなく母からも聞くことになろうとは。しかも本当に記憶にないようで。本心をぶちまけて、ラクになるのかと思ったら、それもどうも違ったようです。スッキリしたのは一瞬。なんだか重たく後悔が一つのしかかったような気分でした。

距離を置くチャレンジもやってみた

チャレンジその3「ほどよい距離感で。離れたままで、心はさようなら」

このチャレンジは、りんりんさんの「離れたままで終わりにしましょう」に近かったのかもしれません。

親ではあるが近づかず、必要がなければ連絡をせず。そんな時期がありました。その時は、このままでいいのだ、このままがお互いの為にいいのだ、と思っていました。

ですが、何か、どこかで、気になるんです。忘れようと思って、忘れられるものではないんですよね。

チャレンジその4「同じような境遇の人たちに愚痴りながら、親の悪口言いながら、お酒を飲んで忘れよう!」

これはチャレンジというか、ただの飲み会ですが(笑)。親の悪口を聞いてくださる友人がいて、大変だったねと同情してくださる友人がいて、それはそれは助けていただきました。

でも、翌日また同じような過去のムカムカが、出てくるのです。昨日あれだけ出したはずなのに、全く少なくなっていないことに気づくのです。溜まっているものを吐き出すことで本当に楽になっているの?と自身の心の奥に問うと、いいえ本当は楽にはなっていないですよね、と返ってきました。

チャレンジその5「親孝行は道理だ、と言う言葉に乗っかってみた」

これはわたしにとって、最も苦しいチャレンジでした。

2019年、母がホスピスに入った時。母が、この世からいなくなると、思った時。あんなに嫌いな母なのに、母が病気になったと知ると辛くなり、死ぬのかと思うと、わたしの一部が無くなってしまいそうで、怖くて怖くてカラダもココロもガタガタと揺れ始めたのを覚えています。

「青木さん、最後のチャンスだよ。お母さんと仲直りしておいで」

と言ってくれたのは動物愛護の友人、武司さんでした。そんなことは重々わかりながらもできなかったんですよ、と言ってみたものの、わたしは彼をとても信頼していたので、最後まで聞くことにしました。「難しい、親の方が悪い」と言い張るわたしに彼はこう言いました。

「どんな親でも、親は親」

「親孝行は道理である」

「親子関係が人間関係の基本であり、親孝行すると楽になる」

わたしは、重い重い腰をあげることにしました。

当時のわたしは、パニック症があり、いつまで仕事が続けられるか不安がいっぱいであり、初期の肺ガンを患っており、離婚しワンオペで娘と生活し、人間関係だって余裕がなさすぎる毎日。一言で言うと「全然楽しくなかった」のです。親が嫌いだと思ったあの日から、もしかしたらずっとどこか楽しくなかったのかもしれないけれど。

だから、[何かが少しでも変わるなら、わたしの人生が楽しく変化するのなら]。それが唯一の、大きなモチベーションでした。

それから毎週、愛知県のホスピスまでクルマを飛ばして向かうことにしたのです。生まれて初めてかもしれません。母との二人の時間。一言でいうと、嫌で嫌で。運転席に座り東名高速道路を走りながら音楽を聴く気にもなれず、全身で嫌がって毛羽立つ感覚がありました。そんな母の元へ、自分から向かう。仲直りの為に。こんなに苦しいのに、誰も褒めちゃくれない。どんな仕事とも比べものにならないほど大変な難事業。

ホスピスへは、母が亡くなるまで何度も通いました。弱っていく母ですが、性格や性質は強く表に出てくるようで、わたしはどうしても過去を思い出してしまいました。「新聞をきちんと置き直して」「もう朝になったんだから布団を畳みなさい、だらしない」と言われると、まだ家族以外からどう見られるのかが最重要なんだなこの人は、と苦虫を噛み潰したような表情になってため息をつきながら帰ることだってありました。その度に、折角やると決心した初日の決意を無駄にしてしまったか、と軽く後悔し、翌週には自分を立て直し、またクルマを飛ばしました。

母が亡くなるまでの3か月。ものすごいパワーを使い果たしました。階段を2段上がっては1段下がり、いけないいけないと振り返り、階段をゆっくりと登っていくような毎日でした。

「親孝行は道理」か

以上が、わたしが自分を母の呪縛から解き放つためにしてきたチャレンジの数々です。

さて、実感として、これは良かったというものは、最後の「親孝行は道理だと言う言葉に乗っかる」です。母が亡くなるとき、わたしは母を嫌いではなくなりました。母が亡くなって数年、不思議ですが母のことをどんどん好きになっている自分がいます。親が好きだということは、ラクなことなんですね。これはわたししかわからないことですが、過去、母を嫌いだった記憶までなくなっていきました。健忘症でなければ(笑)。

そして、世の中で一番嫌いな人と仲直りできたのだもの、誰とだって仲直りできる。そんな希望がもてました。

「親孝行は道理」

そうなのかもしれません。

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