＜エルピス＞眞栄田郷敦“拓朗”逃げていた自身の過去とついに向き合った迫真の演技に「#エルピス」日本トレンド1位、世界トレンド2位に

2022.11.15 12:42

11月14日放送の「エルピス―希望、あるいは災い―」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系)第4話で、拓朗(眞栄田郷敦)がトラウマだった学生時代のイジメ自殺事件とついに向き合い、ずっと負けてきた自分の弱さを認めた。このシーンでの眞栄田の迫真の演技に衝撃を受けたコメントがTwitterに溢れ、「#エルピス」が日本のトレンド1位、世界トレンドでも2位になった。

再審請求は棄却

同作は、スキャンダルのせいで落ち目のアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)と彼女に共鳴した仲間たちが、連続殺人事件のえん罪疑惑を追う中で、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く社会派エンターテインメント。作品中で扱われている事件は、実在の複数の事件から着想を得ている。

また、タイトルの「エルピス」とは、古代ギリシャ神話で、様々な災厄が飛び出したと伝えられる「“パンドラの箱”に残されたもの」で、「希望」とも「厄災」とも訳される言葉。真相に迫っていく過程で恵那たちは様々な「希望」を見出すが、自身やその周囲に「災い」も降りかかる。“えん罪の再調査”というパンドラの箱を開けてしまった彼らが行き着く先はどちらなのか…という意味が込められている。(以下、ネタバレを含みます)

恵那(長澤まさみ)が自分のコーナーで独断で流したえん罪疑惑のVTRは、視聴者の関心を集め、第2弾も決まり、第3弾も予定されるほどになった。だが勢いに乗る中、死刑囚・松本の再審請求が棄却されてしまう。

恵那は、自分たちが騒いだのが原因で裁判所が心証を害して却下されたのでは…と思い悩む。彼女は、これ以上続けてもしかたがない、と第3弾を諦めようとするが、拓朗は「請求が棄却されただけで、他にも可能性がある。諦めたくない」と訴える。しかし彼女は、「ムリだよ。勝てっこないよ、キミなんか。バカじゃないの？」と吐き捨て、「誰にですか？」と食い下がる拓朗に「うるさい！うるさい！うるさい！」とイラ立ちをぶつけてしまう。

ガセネタに飛びついてしまった拓朗

そんな中、殺人事件の被害者の一人・晴美の「元カレ」と名乗る人物からTV局に電話があり、「彼女からの手紙に犯人じゃないかと思われる男の名前が書いてあった。面倒に巻き込まれたくなくて当時は誰にも言わなかった」と告げられる。拓朗はそれに飛びつき、情報料の手付け金として5万円支払った。だが、送られてきた手紙のFAXは肝心な部分がかすれて見えず、原本は後日送ると言われたが、それは明らかにカネ目当ての詐欺だった。

村井が拓朗を連れて行った先は…

落ち込む拓朗は、チーフプロデューサーの村井(岡部たかし)に行き場のない気持ちを打ち明ける。そして、先日の恵那の言葉が引っかかっていたのか、「自分は何に勝っているんだろう…」と、身の上相談を始めた。彼は母親にずっと「人生の勝ち組」だと言われて育ってきた。だがそう思うために、自分と母は必要以上に負けてきたんじゃないか…最近そう思えてしかたがないのだ、と。

それを聞いた村井は、拓朗の母校が見えるビルの屋上に彼を連れて行った。そして、拓朗のトラウマとなっている中学時代のイジメで自殺した同級生の事件を当時取材したのだと告げた。村井は彼に、イジメたヤツ、かばうヤツ、見て見ぬフリをするヤツ…どれだったのかと尋ねる。拓朗は、ストレートに心をえぐってくる村井の言葉に動揺しながら「イジメに気づいてなかった。記憶が無い」と逃げようとした。だが村井は「自分が何に負けてきたのか、ちゃんと向き合え！それができない限りオマエは一生負け続けて終わるぞ」と彼を逃がさなかった。

拓朗は同級生の傷だらけの手のひらを思い出し「僕は…裏切ったヤツです」と告白し始めた。自分が標的になるのが怖くて誰にも言えなかった、母親に話したが、主犯が学年一の有力者の息子だったために母親も学校に言わなかった、と。“勝ち組”でいるために、無かったことにして、一番嫌いで許せないはずのヤツらに媚びへつらって、友達を見殺しにして…と、鼻水と涙でグチャグチャになりながら自分の弱さとついに向き合った。

このシーンでの眞栄田郷敦は、演技を超えた哀しみを見せた。彼の痛みがこちらにまで流れ込んできて、辛い気持ちが充満して息苦しく、彼から目をそらすことができなかった。

眞栄田郷敦が見せた“空っぽの目”

その日以来、拓朗はそれまでのお気楽で明るい姿とは別人のようにふさいだ様子を見せ、仕事にも身が入らず、亡霊のようになっていた。だが、そんな彼の変化に気づかなかった恵那は、先日、斎藤(鈴木亮平)が彼女の家に来ていたのを見たことを誰にも言わないでくれ、彼に迷惑がかかるから…と頼み、そのときに彼女に向けられた空っぽの目に戦慄した。自分の弱さや愚かさを見抜かれた気がして、「脳天から真っ二つにされた切られたような気がした」のだった。

眞栄田郷敦の空っぽの目には視聴者も脳天から真っ二つにされた。「郷敦の目、ぞっとした」「鳥肌が立つほど怖かったけど、目がそらせなかった」「背筋が凍った。すごかった」と、衝撃を受けたコメントが溢れ返った。今回の「エルピス」は、役者・眞栄田郷敦の底力を見せつけた回となった。

弱さを認め変わった拓朗は、この先、このえん罪疑惑とどう向き合っていくのだろうか。そして、そんな拓朗に恵那はどう影響されていくのだろうか。

◆文＝鳥居美保／構成＝ザテレビジョンドラマ部