中原中也とは“何”か? その核心に迫る舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」開幕
文豪の名を持つキャラクターたちが縦横無尽にヨコハマの街を舞台に暴れる異能力バトルアクション「文豪ストレイドッグス」。各メディアで盛り上がりを見せる中、2017年からスタートした文ステシリーズもついに第7弾へ。16歳となった中原中也の“正体”に迫る舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」が、6月24日(金)に初日を迎えた。
2.5ジゲン!!では初日に先立ち実施されたゲネプロの様子をレポート。ストーリーの核心には触れないが、見どころなどのネタバレを含む。まっさらな状態で観劇したいファンは、観劇後に読んでもらえたらと思う。
※以下、本作品の内容に触れるネタバレあり
常に進化を。そんな熱量の果てに、文ステはまた新たな世界を舞台という装置の中に生み出したのではないだろうか。
原作小説は2021年2月に刊行されたばかり。まだアニメ化もされていないうえに、過去シリーズをしのぐ大ボリュームのページ数で描かれた中原中也の物語が、観る者の想像力を掻き立てる舞台ならではの質感で描き出された。
本作は前作「太宰、中也、十五歳」の1年後。16歳となった中原中也(演:植田圭輔)と、彼の兄を自称する暗殺王ポール・ヴェルレエヌ(演:佐々木喜英)との邂逅を軸に、中原中也が中原中也であるゆえんをあぶり出していく物語だ。
あの膨大な情報量が詰め込まれた原作を、どう2時間弱の物語として表現するのか。アニメを経ずに舞台になっているからこその想像できなさが、1シーンが終わる度に期待となって胸に込み上げてきたのが印象的だった。
ストーリーのてん末はもちろんここでは触れないが、2日目以降に観劇するというファンは、ぜひ原作以外の前情報をあまりインプットせずに観てもらいたい。シーン転換のタイミングや各シーンの繋ぎ方も、予想を超えてくるのが演出・中屋敷法仁の世界だ。今作も過去の作品同様、ディープな原作ファンほど「これは…! 」と唸る粋な演出が登場するのでお楽しみに。
ここからは各キャストの見どころについて、具体的なネタバレは避けつつ紹介していきたい。
まずは中原中也だが、初演からの付き合いとあって植田と中原中也の関係性は相変わらず肌に馴染むという言葉がぴったりなハマり具合。本作ではとくに、中原中也とポール・ヴェルレエヌ、中原中也とアダム・フランケンシュタイン(演:磯野 大)、中原中也と太宰治(演:田淵累生)、中原中也と白瀬(演:伊崎龍次郎)…といった形で、中原中也と他者との関係が浮き彫りに。他者との関わりの中で浮かび上がってくる中原中也像、というものに思いを馳せることで、本作の主題である「中原中也とは一体“何”なのか」という点も見えてくるだろう。
目の前の人物に対して振る舞いを変える。そんな無意識下で生まれる些細な変化も、植田は自然体で表現していたのが印象的。どこまでも自然に中原中也として舞台に立つ彼が、この中原中也の根源に迫る物語を演じているというメタ的なエモさもまた本作の大きな見どころと言えるだろう。
そんな彼の前に兄として現れるのが、佐々木喜英演じるポール・ヴェルレエヌだ。同役は原作以外のメディアに登場するのは本作が初とあって、以前実施したインタビューで、佐々木はどういう人物として彼を演じるか試行錯誤していると語っていた。その思考の末に辿り着いた、彼が描きだすポール・ヴェルレエヌは必見。王の通り名を冠するだけの圧倒的強者感と、それだけではない脆さを見事に表現。
とくに中原中也との重力VS重力のアクションは迫力満点。手数が多くスピード感ある殺陣に定評ある2人が、あえて重さを乗せて繰り出す異能バトルは「文豪ストレイドッグス」の世界ならでは。こだわり抜いたであろう所作のひとつひとつを見逃さないためには、まばたきをやめるしかないのか!? と観劇しながら頭を抱えたほどだ。
同じく本作初登場となるのが欧州の人造知能捜査官であるアダム・フランケンシュタインだ。磯野の長い手足が非人間的なアンドロイド感を絶妙に醸し出し、そのややコミカルな言動が重いストーリーに清涼感を与えていた。長身なアダムと小柄な中原中也とのコンビ感も理想的で、バディもの好きにも刺さる要素が満載だ。
この2人のタッグ感があるからこそ、“双黒”である中原中也と太宰治の関係性が対比の中でより色濃く感じられた。太宰治を演じる田淵も、作品数を重ねたことでより役としての表現が自然なものに。冗談を言っているのに目が笑っていない、得体のしれなさも良い塩梅で感じられ、彼が演じる大人の太宰治もはやく舞台の上で観てみたくなった。
中原中也の過去を語る上で欠かせない互助組織「羊」時代の仲間・白瀬や、ポートマフィアの広津柳浪や森鴎外は安定感抜群。中でもいわば幼馴染のような関係性の白瀬と中原中也とのやり取りは、その微笑ましさに思わず口角が上がってしまうことだろう。
そして今作のトメとしてクレジットされているN役の久保田悠来は、登場しただけで圧倒的なオーラを放つ。詳細は語らないが、謎の多いNは中原中也とポール・ヴェルレエヌにとって大きな意味を持つ存在として、物語の中核に関わっていく。作品を離れたところで言えば、10年以上前から2.5次元作品を盛り上げてきたベテランの3人が並び立つシーンは、いち舞台ファンとして胸が熱くなった。
メインキャストに関しては今紹介した8人が全てだが、原作を読んでいると「あれ?」と思うのが全部で5人登場する「旗会(フラッグス)」の面々。このあたりの演出がどうなっているのかも要注目を。
作品ごとに最新技術とアイディアが鎬を削り合い、新たな“異空間”を生み出す文ステ。これまでにも増して規模の大きい異能バトルが描かれる本作は、バトルで魅せながらも泥臭い人間ドラマをどこまでもスタイリッシュに表現した。この泥臭さとお洒落さがケンカをせずに融合するのは、文ステの魅力と言えるだろう。
中原中也の過去を描く3部作は本作で一区切りとなる。この先にどんな文ステが待っているのか。終わった瞬間から次を求めたくなるような、中毒性の高い世界観をぜひ劇場で体感してみてほしい。
舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」は東京公演が6月24日(金)~6月27日(月)まで日本青年館ホールで、大阪公演が7月2日(土)~7月3日(日)まで東大阪市文化創造館Dream House大ホールで上演される。
取材・文:双海しお/撮影:田中亜紀
(C)舞台「文豪ストレイドッグス STORM BRINGER」製作委員会
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