北村諒、役者は天職「この仕事に出会えて本当に良かった」 舞台「オブリビオの翼」に抱く使命感
9月23日(金・祝)に開幕する舞台「オブリビオの翼」。毛利亘宏(少年社中)脚本・演出によるトライフルエンターテインメントのオリジナル作品で、「黒鷺遺品整理舎」を舞台に、元・天使のルカ(演:北村諒)と店主の黒鷺拓心(演:仲田博喜)が遺品に残った故人の想いをすくい上げ、生前に果たしえなかった想いに寄り添っていくストーリー。テーマは「忘却」だ。
2.5ジゲン!!では、ダブル主演の一人、北村諒にインタビューを実施。物に固執せず、俳優としても変化し続ける北村は、自らを「水のよう」と例える。その思いとは…? 立ち上がりから見守ってきたという本作への思いや「忘却」にちなんだ物忘れエピソードなどについても話を聞いた。
――まず、本作に出演が決まった経緯を教えてください。
プロデューサーの辻(圭介)さんと「何かやりたいね」と話をしていたところ、スケジュールの都合がついて、この企画に参加できることになったんです。雑談のように話していたことがどんどん実現されていくのを側で見てきているので、共に作品を立ち上げて走っている感覚があります。それだけに、楽しみであると同時に、やりがいや「面白い作品にしたい!」という使命感のようなものも強く感じています。
――本作では元・天使のルカを演じられます。
キャラクター設定をお聞きして、普通に天使なのではなく“元”なのがいいな! と思いました。元と付くからには、何か理由があって天使ではなくなったのだろうな…など、さまざまな想像が膨らみますし、物語の可能性が広がりますよね。ルカの葛藤などの心の動きを演じるのも楽しみです。
――ビジュアル撮影の時の思い出はありますか。
普段は写真スタジオやハウススタジオで撮影することが多いのですが、今回は外での撮影もあったんです。夜のオフィス街で撮影をしたので、珍しくて楽しかったですね。その日はとにかく寒かったのを覚えています。本当に寒かったので、(仲田)博喜との間に、厳しい寒さを乗り越えたことによる絆が生まれました(笑)。
――脚本・演出を務められる毛利さんの作品の特徴について、どう思いますか。
エンタメ性の強いものからドロドロした話まで、幅広い作品を生み出す方ですね。僕は毛利さんの描かれる人間模様がとても好きなのですが、今作は特にそういったものが色濃く出そうだな、と感じています。登場人物たちの関係性や心の機微を、毛利さんがどう描いてくれるのか楽しみです。
――タイトルにもある「オブリビオ」が「忘却」という意味を持つことにちなみ、最近、うっかり忘れてしまったことを教えてください。
僕、実はめっちゃくちゃ忘れっぽいんです。何か一つの事をしていると、もう一つやろうとしていたことを忘れちゃう。例えば、家を出る時に財布を持ったら鍵を忘れる…みたいな(笑)。物忘れが原因で大事件になったことは今までないのですが、細かい物忘れはしょっちゅうです。あと、(コメント用の)アンケートを「後でやろう」と思ってそのままにしていたら、締切当日になっちゃった! というのもよくあります(笑)。
――「忘却」にまつわる共演キャストとのエピソードはありますか。
博喜とのことなんですけど、今作への出演が決まって博喜に「今度一緒だね」と言ったら「2人で主演だね」と返されたんです。でも僕は自分が主演であることを忘れてしまっていて「え? 俺、主演なの?」と(笑)。忘れていたというよりは、正確には、番手にこだわっていないので、主演というのが頭になかったんだと思います。それを聞いて博喜は「え、きたむー主演じゃないの?」「いや分かんない! でもそうかもしれない…」ってなっちゃって(笑)。
逆に忘れられないこととしては、(谷口)賢志(弥勒喬士郎役)さんとのことで。何かのお祝いのパーティーにシャンパンを差し入れしたら、すごいものだったらしくて周りが「まじか…?」って変な空気になっちゃったんです(笑)。僕はシャンパンに詳しくないので、お店の方に「めちゃくちゃテンションの上がるヤツください!」ってお任せして選んだものだったんですけど、パーティーに来ていた賢志さんも「お前それ、とんでもないやつだよ…」ってドン引きしていて。その顔が忘れられません(笑)。
――今作で演じられるルカは、物に込められた“人の思い”を感じることができます。北村さんにも思い入れのある物はありますか。
ないかもしれません。僕、周りに心配されるほど物に対して執着が全くないんです。もしも今、周りの物が急に全部なくなっても大丈夫。究極、体一つあればいい。でも、物を大事にせずに使い捨てればいいという考え方ではなくて、こだわったり固執しない、ということですね。
決まった稽古着とかルーティーン、マイルールのようなものもないですし…そういうのを決めたくないのかもしれません。
物にこだわりがないのと同じく、役者としてのあり方もそれに近いものがあります。誰かの何か一つに大きく影響を受けたとはっきり挙げられるものがないんです。全ての出会いが大きくて、頂いた言葉はどれも大切にしています。今の自分を作っているのはこれだ、と言えるものを一つだけ選べないのは、その時々でさまざまなことを吸収してきたからかもしれません。
「これ」と決めている信念や自分のこだわりに対しての取捨選択をするのではなく、全てを新鮮なものとしていったん全部取り入れて、その時の自分に合うものを選んでいく。だから誕生日や年始に「今年はこういう年にしたい!」と決めても、その時向き合っているお仕事次第で気持ちが変わってきちゃうんです。
――ちなみに、年始に抱負を伺った時は「穏やかに」でした。
今は、ぶつかり合い意見を出し合って情熱的に舞台「オブリビオの翼」を作っていきたいと思っているので、考え方が変わっていますね!(笑)。
お客さんに楽しんでほしい、自分が楽しいと思えることをやりたい、というのは根本としてあるのですが、自分のあり方や心もちはその時々で柔軟に変化しますし、変化するのが自分でも楽しいです。
実は以前、占いで運勢を見てもらった時に「流れるように生きている水のような人だ」と言われたんです。自分でもなるほど、と思いました。自分の生き方そのものも水のようだと感じていて、役者になる前はそれこそ「明日生きてさえいればそれでいい」くらいのつもりでいたんですよね。でも今は、さまざまなことを吸収して変化できる役者という仕事に出会えて本当に良かったです。時代や環境に合わせることのできる、水のように変化する俳優でありたいなと思っています。これからどうなっていくのか、“変化する北村諒”を楽しみにしてほしいです。
――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします
舞台は劇場で味わえるものも多いと思います。今はまだこんな時ですし、どうしよう…と思われる気持ちもあるかもしれません。それももちろん間違ってはいなくて、配信などで観てくださることも本当にありがたく思っているのですが、でもやっぱり劇場で観ることでさまざまな感想を持ってほしいし、生のお芝居を体感してほしいと思っているんです。
この舞台「オブリビオの翼」を見て得る感想は人それぞれだと思います。「すごく面白かった」、「楽しかった」、もしかしたら「自分の価値観とはちょっと違った」…色々あるかもしれません。どんな感想だったとしてもその時の気持ちを忘れられないような舞台にしたいですし、観た人の人生を少しでも変えることができたら嬉しいです。ぜひ劇場で楽しんでもらいたいと思います。
取材・文:広瀬有希/撮影:梁瀬玉実
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チケットの最速先行(オフィシャル先行)は6月12日(日)23:59まで受付中。
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