KADOKAWAサクラナイツ

三度目の正直でMリーグ制覇!KADOKAWAサクラナイツ、67歳ベテラン雀士の途中離脱が生んだチームの団結

2022.05.24 18:30
KADOKAWAサクラナイツ

麻雀プロリーグ戦「M.LEAGUE(Mリーグ)2021-22」のファイナルシリーズが4月26日に行われ、KADOKAWAサクラナイツが優勝した。2019年のチーム設立から3シーズン連続でファイナル進出という確かな実力を持ちながら、惜しくも優勝を逃してきたサクラナイツ。三度目の正直で手にしたチャンピオンの座の陰には、チーム最年長のムードメーカー・沢崎誠の体調による離脱をはじめとした様々なドラマがあった。今シーズンの激闘について、療養中の沢崎以外のメンバーと監督に話を聞くと、Mリーグというチーム戦ならではの戦いが見えてきた。前編では優勝に至る道のりと、各メンバーの素顔について掘り下げる。

チーム最年長・沢崎誠の離脱がもたらした団結

KADOKAWAサクラナイツのメンバーは、内川幸太郎、岡田紗佳、沢崎誠、堀慎吾の4名。監督は森井巧が務める。Mリーグ最年長となる67歳の沢崎と最年少28歳の岡田を擁するバラエティ豊かなチームだ。チーム設立時は内川、岡田、沢崎の3名で立ち上がり、2020年に堀が追加加入した。

「昨年は準優勝だったので、そのリベンジを誓っていました。準優勝したことで、気持ち的には優勝争いできるチームだという自信がありました」(内川)

「1年目はかなり緊張していて、ナイーブになることも多かったですが、2年目に堀さんが加入し、3年目の今シーズンは、どんなに苦しい状況になったとしても、しっかり前だけを向いて戦えるようになったなと思います。チームワークも良くて、試合前でも重苦しい雰囲気にならず、ずっと笑っている楽屋でした」(岡田)

Mリーグは8チームで戦うレギュラーシーズン、上位6チームが進出するセミファイナルシリーズ、そこからさらに4チームが進出するファイナルシリーズからなる。今期、レギュラーシーズンでは堀と沢崎が好調でチームを引っ張っていたが、沢崎はファイナルシリーズを前に持病の治療のため離脱せざるを得なくなった。

「沢崎さんが入院されるかもということを聞いて、最初はもう試合どころじゃない気持ちで。チームに入る前から、先輩としてずっとお世話になっていた方。とにかくしっかり身体を治してほしいと思うのと同時に、人間誰しも、僕だって明日どうなるかは分からない。だから4人のチームを意識して今シーズン頑張ろうという気持ちが強まりました」と内川は振り返る。

離脱の話を聞いた時点ではさほど動揺しなかったという堀も、セミファイナルで実感を強めた。「レギュラーシーズンでは絶好調で、ずっとポイントを稼いでくれていた沢崎さんが、セミファイナルで調子を落としたんです。もしそれが理由でチームが負けてしまったら、ここまで引っ張ってきてくれた沢崎さんに責任を感じさせてしまう。それは申し訳ない」

岡田も「沢崎さんはシャイなので口には出さないですが、チームのことをすごく心配していたと思います。『沢崎さんが出てたら優勝できていたのに』と思われないように、しっかりみんなで戦って勝っていきたいと思いました」と語る。結果、沢崎のやむを得ない離脱が、サクラナイツの団結をさらに強めたともいえるだろう。

67歳のベテラン、Mリーグ最高齢でなお現役をひた走る沢崎のすごさを、内川はこう語る。「沢崎さんの麻雀は説明不能。対人競技の面白さを体現していると思います。また経験もすごいので、自分たちならオドオドしてしまうような場面でも常に落ち着いている。チームの精神的支柱でした」森井監督も「経験による引き出しの多さと、常人では理解できないオリジナリティ」と沢崎の麻雀の魅力を評した。

またムードメーカーとしての功績も大きかった。堀は「僕と沢崎さんは少し似ていて、2人とも麻雀イコール人生、何よりも麻雀が優先というタイプなんですが、僕は負けるとめちゃくちゃ悔しくて落ち込んじゃう。でも沢崎さんは負けたときも笑顔で、暗くならない。チーム戦だから雰囲気を悪くしないようにってアドバイスももらったりして。麻雀観は全然違いますが、尊敬している先輩」と学びを語り、岡田は「すごく気を使ってくれるんです。今期もMVP争いがある中でも堀さんに出番を譲ったり、チームが負けたときでもジョークを飛ばして、楽屋を明るくしてくれていました」と振り返った。麻雀の実力のみならず、時には自らおでんを作って差し入れるなど、サクラナイツのチームワークに大きく貢献していた沢崎の復帰が待たれる。

「僕は勝つために選ばれた」場を支配する天才・堀慎吾

3名でファイナルシリーズを戦っていったサクラナイツだが、さらにシーズン通して好調だった堀が、ラスト4試合を残すタイミングで脚を骨折するというアクシデントに見舞われる。しかし医師の承諾をとりつけ、骨折の翌日も登板する根性を見せ、最終試合を2着で決めてチーム優勝の立役者となった。優勝を決めた瞬間も大きく表情を変えることはなかった堀だが「試合中はアドレナリンが出てるからか全然痛くないんですけど、試合が終わると急激に痛くなるんです」と裏話を明かした。

2シーズン目からの追加加入メンバーである堀は「内川さんや岡田さんが(チームに)選ばれたのと、僕が選ばれた理由は違う。僕は勝つために選ばれた」と自ら語る。そんな彼は昨年ファイナルシリーズ中に調子を落とし、チームが準優勝に終わったことに責任を感じていたという。「昨年は最後の3試合、全部内川さんが連闘しないといけない状況にしてしまって、申し訳なかった。1戦でも自分が打てていたら結果が違ったかも…とずっと思っていたので、今年はとにかくファイナルシリーズ通して好調を保ちたかった」(堀)

そんな堀について、メンバーたちは「麻雀の緻密さと、理路整然とした考え方がすごい。僕も非常に影響を受けて、それでブレてしまった時期もありましたが、今は安定して考えを取り入れさせてもらっています」(内川)「天才だと思う。客観的に見て強いと思わせる魅力のある麻雀。ゲームの場を支配できる数少ない選手」(森井監督)「麻雀以外何もできない人ですが、麻雀は信頼しています」(岡田)と絶賛。一方で監督や岡田からは「実生活ではポンコツ」とのコメントもあり、ファンからはそのギャップが愛されているのだろう。

追加メンバーとして、成績を出すために加入するというのはプレッシャーも大きいのではないだろうか。堀にメンタル面での安定を保つ工夫について尋ねた。「僕は元々あんまり緊張しないタイプなんですよね。それに、本当に自分の麻雀に自信があれば、メンタル面の影響ってあまりないと思ってます。なぜこの選択をするのかが自分で説明できれば、本番も自信をもってプレイできる。日々の努力を怠らないこと」(堀)

「引くところは引く方がチームのためになる」包み込むリーダー・内川幸太郎

チームのエースとして設立時からサクラナイツの顔である内川。しかし今期は登板を沢崎や堀に譲る場面もあった。特に4月25日の2回戦では、本来1回戦に出た堀がトップか2位なら連闘、3位以下なら内川が出る予定だったという。しかし森井監督は1回戦で3位につけた堀の「行きたい」という希望を聞き、内川もこれを受け入れた。結果、2回戦で堀はトップとなり、チームは優勝に大きく近づく。

「最初の2年は、全て自力でやろうと考えていましたが、今年は成績が出せないなら違う部分で補う、引くところは引く方がチームのためになるということを学べたと思います。メンバーはみんな(試合に)出たがりですが、優勝するためには調子のいい人を出すのが大事。麻雀は運の要素がある競技で、運はメンタルにつながる部分があるので」(内川)

そんな内川について、堀は「僕と全然違って、僕に無いものをめちゃくちゃ持ってる。勝負に熱いし何に対してもピュアだし、インタビューの返しなんかもしっかりしてて、チームのバランスをとってくれる。全部任せちゃってますね。僕は麻雀以外何もできないので…リスペクトしています」と信頼を見せる。森井監督は「内川さんの麻雀はヒーロー気質で、ドラマチックな勝ち方をする。チームのまとめ役だし、優しいけど熱くて涙もろいところもある。グイグイ引っ張っていくというよりは、包み込むタイプのリーダー」と評し、岡田は「天然でちょっと抜けてるメンバーが多いので、内川さんがいなかったらカオス。もちろん麻雀の面でも頼りにしています」と尊敬の意を表した。

麻雀講師としても活動し、YouTuber・東海オンエアの虫眼鏡との共著「勝てる麻雀をわかりやすく教えてください!」など、初心者層への麻雀の普及にも積極的に動いている内川に、麻雀を良く知らない人へ面白さを伝えるとしたら?と尋ねた。

「麻雀は、自分の思考や意志を反映するゲーム。まずは自分の力で手を完成させて、上がる楽しさを知ってほしいです。僕の開催している初心者向け教室だと、誰かが役を完成させると皆で拍手したりするんですよ。まずはゲームとしての楽しさを感じてもらって、徐々に奥深いところを知ってもらえたらと思います」

「のびのび打ちたいように打つ」成長に貪欲な最年少・岡田紗佳

レギュラーシーズンではなかなか1着を取れず不調に苦しむも、セミファイナルでは復調し好成績を残した岡田。元non-no専属モデル、現在も芸能活動を続け、Mリーグ内でも屈指の人気を集める彼女について、チームメンバーは「最年少だけど大人」「努力家」と評する。

「まず知名度が抜群なので、初めはそれを取りざたされていましたが、彼女自身が非常に賢い。最年少ではあるんですが、チームで一番大人だなあと思います。レギュラーシーズンでの不調については予想していて、本人にも伝えていました。昨年がうまく行きすぎていたのと、対戦相手も研究して対策してきますから。でもそこから見事に復活してきたので、来年が楽しみです。MVP争いしてくれるんじゃないかと」(内川)

「生意気なところもありますが、とにかく麻雀に真摯で、伸びようと努力してくれている。チームで一番伸びしろがあるのは岡田さんで、彼女の成長がそのままチーム力の向上につながるので、頑張ってくれてありがたいと思います」(堀)

「勉強熱心で、成長に貪欲。ただ今年はもしかしたら結果が出ずに苦しむ可能性もあると思っていました。岡田さんは堀さんと練習会をしているんですが、知識が増えるとその出しどころが難しい。堀さんの麻雀は高次元の情報処理が必要なので、参考にしようとすると求められるものがめちゃくちゃ多いんです。今シーズン前半はそれがまだ嚙み合っていなくて、かなり試行錯誤していた印象があります。でもセミファイナルではしっかり噛み合って、個人2位のポイントをチームに持ち帰ってくれました。また、勝気ではっきり物を言うけどユーモアもあって、とても好感の持てるキャラクターだと思います。岡田さんにはチームの切り込み隊長として1戦目を任せることが多いです」(森井監督)

そんな岡田にメンタル面で心がけていることを聞くと、「できるだけ普通でいるように心がけていました。のびのび打ちたいように麻雀を打つこと。周りの方のほうが圧倒的に先輩なので、胸を借りる挑戦者のつもりでいます。だから勝ったらうれしいし、負けてもまた頑張ればいいという気持ち」と自然体の心を語った。

明日配信のインタビュー後編では、サクラナイツの独自性にあふれたチーム運営について、またMリーグの設立が麻雀界に与えた影響について聞く。

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