次々に現れる“最強” 新テニミュThe Second Stage、キャストもキャラクターも続ける成長
1月28日(金)、KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉にてミュージカル『新テニスの王子様』The Second Stageが開幕した。
本作は、2020年12月に上演されたミュージカル『新テニスの王子様』(通称:新テニミュ)の第2弾。許斐 剛原作の『テニスの王子様』(集英社 ジャンプ コミックス刊)の続編である『新テニスの王子様』(集英社「ジャンプSQ.」連載中)が原作。U-17(アンダーセブンティーン)の日本代表合宿に呼ばれた中学生たちと、彼らの前に大きく立ちはだかる高校生やコーチたちの姿が描かれている。
2.5ジゲン!!では、初日に先駆けて行われた公開ゲネプロの様子をレポート。ストーリーや演出での深いネタバレには触れないが、見どころや劇中写真を含むため、初見を大事にしたい人は観劇後に読むことをおすすめする。
今作は、海外遠征から帰国したGenius10(U-17(アンダーセブンティーン)選抜1軍上位メンバー)と中学選抜メンバーの死闘が中心。圧倒的な実力を持つGenius10に、越前リョーマ(演:今牧輝琉)たち中学選抜メンバーたちがどのように立ち向かっていくのか、また、試合の中でどのように成長していくのかが大きな見どころだ。
ミュージカル『テニスの王子様』も含め、かつてこれほどまでに死闘が続いたことがあっただろうかと感じる。試合に次ぐ試合、歌、ダンス、試合と歌、試合、歌、緞帳! と、息つく暇も無く激しい死闘が次々と繰り広げられ、熱量と迫力に圧倒させられる。観劇後は「テニミュを浴びた!」と心地良い疲労に浸れるだろう。
『テニスの王子様』が、全国優勝を目指す中学生たちの話なのであれば、『新テニスの王子様』はその彼らが高い壁にぶつかり、壁にしがみつき向こう側を覗きかけたかと思えばさらに高い壁が立ちはだかるストーリーだ。次から次へと“最強”が現れ、容赦なく襲いかかってくる。そして、『テニスの王子様』で最強だと思っていた彼らも中学生なのだとあらためて実感する。打ちのめされ、しかし泥臭く努力する跡部景吾(演:高橋怜也)、自分に無いものを求めようと奮闘する真田弦一郎(演:吉田共朗)など、頂点を極めたとも言えるキャラクターたちがさらに努力を重ねる姿を見られるのも、新テニミュの醍醐味の一つだろう。
荒唐無稽だったり実際にはありえないプレイが次々に登場する本作だが、ふとしたところで親子関係や先輩後輩関係など、人間関係にはリアルなものを感じる。井澤勇貴演じる越前リョーガに越前南次郎(演:松山鷹志)の雰囲気と空気を感じるのも嬉しいポイント。なお松山鷹志はアニメで南次郎の声を演じているので、喉を含め全てが南次郎だ。
人間関係の描写では、リョーマとリョーガの関係はもちろん、事前のインタビューでリョーマ役の今牧が語っていたとおり、平等院鳳凰(演:佐々木 崇)と徳川カズヤ(演:小野健斗)の関係性にぜひ注目してほしい。
次に演出。原作である『新テニスの王子様』は、さまざまな面で人類の可能領域を超えている。そのため、生身の人間が演じる舞台として再現するには盛大に映像を使わなければどうにもならないだろうと考えてしまうのだが、不思議なことに舞台での映像使用は必要最小限とも感じられる。
試合中の演出は基本的にピンスポットで表現されるボールの軌道のみ。だからこそ、ここぞという時に使われるプロジェクションマッピング的な映像がより効果的に生きてくる。
前作では、初日から地方公演を経て東京凱旋に至るまで今牧たち中学選抜メンバーの歌と芝居の成長力に驚いたが、今作ではゲネプロの段階ですでに、前作の千秋楽よりもはるかに成長した姿を見せてくれている。ここから、神奈川、東京、大阪とさらに成長を続けていくのだろうと思うと楽しみでならない。成長しているのは中学選抜メンバーだけではなく、前作から続投のキャストたちもだ。すでに中堅、ベテランとなっている彼らも歌、芝居ともに前作から大きな成長が見て取れる。
お楽しみの日替わり(であろう)シーンも用意されている。特に今作では、柘植竜二役の進藤 学と黒部由起夫役の村上幸平に注目だ。また、君島育斗(演:樫澤優太)の歌唱シーンでは心の中で「キミ様!」とコールしながら大いに手拍子をして盛り上がりたい。
その他ピックアップしたいのは処刑人・遠野篤京。演じる輝馬のエキセントリックな芝居が強烈な印象を残す。入江奏多を演じる相葉裕樹(泰江和明とのダブルキャスト)の歌唱は圧巻。また、鬼 十次郎(演:岡本悠紀)先輩には観劇者全員惚れてしまうこと間違いなしだ。
キャストコメントで今牧輝琉と小野健斗が語っているように、完全に目が足りない。特に試合のシーンでは中心部の2人、左右のベンチでわちゃわちゃとはしゃぐ各メンバーたち、さらに上手下手のコーチたちと、一度に全てを楽しむのには限界がありそうだ。この試合の他にもベンチワークはあるので、観劇回数を増やすか後述のスイッチング配信を観て楽しんでほしい。
公演は、2022年1月28日(金)から2月6日(日)まではKAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉にて、2月11日(金・祝)から2月20日(日)まではTOKYO DOME CITY HALL、2月25日(金)から27日(日)にはメルパルクホール大阪にて上演される。
なお、公演のライブ+ディレイ配信が1月28日(金)18:00の神奈川公演初日の他、2月20日(日)東京公演の昼夜、2月27日(日)17時の大阪公演大千秋楽で予定されている。
全体を観られる全景、U-17(アンダーセブンティーン)選抜スイッチング、U-17(アンダーセブンティーン) Genius10スイッチング配信が回替わりで用意されているので、ベンチワークも網羅できるこちらも併せてチェックしてほしい。
取材・文:広瀬有希
(C)許斐 剛/集英社・新テニミュ製作委員会
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