山田ジェームス武×樋口裕太、築き上げた信頼関係でつくる“親分子分” 境界なき「ヘタミュ」の世界
12月16日(木)、ミュージカル「ヘタリア〜The world is wonderful~」が開幕する。
本作は、「ジャンプ+」(集英社)にて連載中、シリーズ累計60万部を突破した日丸屋秀和による人気コミック『ヘタリア World★Stars』を原作としたミュージカル(通称:ヘタミュ)。第3弾「in the new world」から4年、「FINAL LIVE」から3年が経つが、キャスト続投で新シリーズ公演が上演される。
2.5ジゲン!!では、スペイン役の山田ジェームス武と、ロマーノ役として新たに加わる樋口裕太に対談取材を実施。“親分子分”関係を演じる2人に、プライベートでの仲良しトークからオーディション秘話、ヘタミュの魅力などについて聞いた。
ヘタミュに懸けるそれぞれの想い
−−山田さんは第2弾「The Great World 」から5年ぶり、ライブ公演から3年ぶりの出演です。本作が決まった時のお気持ちを教えてください。
山田ジェームス武(以下、山田):めちゃくちゃ嬉しかったです。ヘタミュのカンパニーは本当に温かくて、家族みたいなんですよ。「またいつかやらないかな」とキャスト同士で話をしていたくらいです。
でも、そうは言っても舞台3作とライブであんなにきれいに終わったし難しいかな…と思っていたんです。またやれることになってすごく嬉しいし楽しみですね。残念ながらドイツ役の上田悠介くんは今回お休みなんですけれど、また全員で集まって一緒にやりたいです。
−−樋口さんは初登場のロマーノ役として初参加になります。
樋口裕太(以下、樋口):すでに出来上がっているカンパニーに途中から参加させていただくのは、緊張するしプレッシャーもあります。でも、ジェーくんや(長江)崚行(イタリア役)、寿里(フランス役)さんといった仲間たちや先輩がいるのは心強くて安心感があります。自分らしくチャレンジしながら稽古に臨めたらと思っています。
崚行がずっと「ヘタミュやりたいなぁ」と言っているのを聞いていたので、すごく愛されている作品なんだなと感じています。それから、アドリブや無茶振りがすごいとジェーくんから聞いています。「本当にやばいから!」と(笑)。
山田:アドリブは大変だった思い出しかないですね!(笑) 演出の吉谷(晃太朗)さんが無茶振りパートをわざわざ作るんですけれど、つまらなかったら本当につまらなそうな顔をするし(笑)。でも吉谷さんがものすごく笑っているのを見ると「よっしゃ!」という気持ちになりました。本番中、楽屋で待っていてもモニターで舞台の様子を見たりして、みんなお互いのアドリブを楽しみにしていたんですよ。
−−山田さんは久しぶりのスペイン役ですが、子分・ロマーノの登場によって、向き合い方や役への印象は変わりましたか。
山田:ベースの「明るくて頼れる親分」というのは変わりません。でも、太陽みたいに明るいというのを重視していた当時から、今回はもっと人間味あふれる部分も出せたらいいなと思っています。
スペインとロマーノの関係は、ロマーノの方がしっかりしているように思われるかもしれないけれど、彼の人として欠けている部分をスペインがしっかりと埋めて補い合っているような間柄のように感じます。人間同士の間柄を描くことで、その人のいいところも同時に表現されると思うので、今回はスペインの素敵なところをたくさん伝えられたらいいなと思っています。
僕はもともと歴史が大好きですし、スペインの血が混じっていることもあって、スペインという国が大好きなんですよ。そのスペインが関わってくる辺りの歴史を舞台でやれるのはすごく嬉しいです。
−−ネタバレにならない範囲で今回のストーリーを教えてください。
山田:イタリアとロマーノが主軸で、人と人との繋がりを強く感じられる話になっています。そこに周りのキャラクターが絡んできて、プロイセン(演:高本学)が進出してきたりして…台本を読んでいて、何で学にこんなにスポット当たってんの? って思いました(笑)。
このキャラクターたちがどう生まれて、どう生きてきたのかが語られるので、これまでヘタミュを観てくださっていた方は今作を観ることで、過去作の解像度が上がると思います。特にイタリアは原点が丁寧に描かれます。
樋口:ヘタミュにおけるエピソードゼロ的な要素がありますね。今回から初参加の僕自身、台本を読んでいてすんなりと世界に入れたので、初めてヘタミュを観るという人でもすんなり観られるのではないかなと思います。ロマーノは役作りの面でもイタリアとの関係性が大事なので、崚行とよく話し合っていきたいです。
−−お2人は舞台の外でもゲームの配信などでご一緒されていますが、いつから仲良くなられたのでしょうか。
樋口:2017年の舞台、「薄桜鬼SSL 〜sweet school life〜 THE STAGE」での共演からです。その時はがっつりと深く絡む役ではなかったんですけれど、稽古場でよく喋っていて仲良くなりました。
山田:そこからゲームを一緒にやるようになったんですよね。興味のあるものや好きなことが似ているし、信頼できる友達の一人です。
樋口:嬉しいですね。その言葉、絶対記事に書いてください(笑)。
山田:建前だよ(笑)。
樋口:そういう一言!(笑)
−−親分と子分という強い関係性の2人を演じることになりますが、すでにしっかりと絆ができていますね
樋口:本当に“山田さん”には色々と教わっていつもお世話になっていますから…。
山田:お前、1ミリもそんなこと思ってないだろ(笑)。
−−山田さんは、ロマーノ役が樋口さんだと聞いた時、どのように思われましたか。
山田:2020年に僕と裕太の他にも(アメリカ役の磯貝)龍乎くんと崚行も共演する舞台があったんです。その舞台もアドリブの多いものだったので、裕太が「龍乎くんやばいな…」と言っていて(笑)。それを聞いて、ヘタミュでのアドリブの話やカンパニーの楽しさを裕太に話して「裕太がもし出たら面白いかもね」なんて言っていたんですよ。それで今回、ロマーノ役が裕太に決まったと聞いて「お前なんかい!」って思いました(笑)。
樋口:その舞台の時はもちろんまだヘタミュへの出演は決まっていなかったので、話を聞いていただけなんですけれど(笑)。
山田:後で制作さんから「裕太くん、オーディションに来たよ」って聞いて(笑)。
樋口:みんなからヘタミュの話を聞いていたので、絶対に出たい、絶対取ってやる! っていう意気込みでセリフを読んで、歌とダンスをして…。スタッフさんにも「裕太がマジで取りに来てる」って言われました。
山田:僕もスペイン役はオーディションからです。「この台詞を読んでください」って課題に出されたのは、スペイン役のオーディションなのになぜかロマーノのセリフでした。実は、その時のセリフに近い言葉が今回の舞台で出てくるんですよ。
樋口:それは熱いね!
山田:裕太は素の状態でもロマーノに近いと感じています。ナチュラルにロマーノでいられる人ですね。何を打っても反応が速くてすぐに打ち返してくるし、今回の舞台ではみんなのボケの最終処理役になっちゃうんじゃないかな(笑)。
樋口:そうなったら一公演終わるごとにどっと疲れそうだね。
山田:楽屋にいても呼ばれるから覚悟しておいた方がいいよ。前の時なんて、楽屋で着替え中だったドイツが「ドイツー!」って呼ばれて、靴だけ持って着替えながら裸足で出たこともあったから。
樋口:それは楽しみだな(笑)。
ヘタミュは「舞台と客席の境目が無い」
−−演出の吉谷さんとは、お2人とも何度かご一緒されていますね
山田:ヘタミュでは、吉谷さん自身がキャストの一員のように笑いながら楽しんでいます。このヘタミュのカンパニーみんなのことが大好きで、キャストのことを心から信頼してくれていますね。もちろん、演出家としてきちんと見て演出をつけてくれているんですけれども、僕らの意見も聞いて一緒に考えていて、すごく楽しそうですよ。
樋口:吉谷さんとは2019年の「少女革命ウテナ」と2019年のミュージカル『スタミュ』-3rdシーズン-でご一緒したのですが、もちろんきっちりと“演出家”でした。
先日吉谷さんと話す機会があって、その時に「吉谷さん、まだ俺に人見知りしてるな…」と感じたので、「俺、吉谷さんの人見知りの壁ぶち壊しに行きますからね!」って言ったら爆笑していました(笑)。
山田:吉谷さん、人見知りだよね。初めて仕事をご一緒した時、ダメ出しを全然くれなかったので、飲みに行って理由を聞いたんですよ。そうしたら「ジェー、見た目怖いし…」って(笑)。でも、「カレイドスコープ」(2020年)からは言いたいことを言い合えるようになりました。
樋口:俺も吉谷さんから怖いって思われているのかもしれない(笑)。
−−吉谷さん含め、スタッフの皆さんも楽しまれている様子が舞台からも伝わってきます。
山田:本当にそう思います。台本に沿った小道具を渡すべきなのに、突然何の関係もないバナナを渡してきたりするんで(笑)。受け取って、一回それでモノボケをしてからちゃんとした小道具を取りに袖に帰らないといけなかったりもしました。
樋口:トマトもあったでしょう、生トマト。
山田:そう、「The Great World」千秋楽では生のトマトを渡されて、舞台上にトマトの汁が飛び散って劇場に怒られるレベルになりました(笑)。お客さんもいろいろなことを楽しみにしているし、その期待を超えたい思いがあるんですよね。今回もきっとやばいものになると思いますよ。
樋口:すごいタイミングで入っちゃったな!(笑)
−−改めてミュージカル「ヘタリア」の魅力はどこだと感じられていますか。
山田:こんなことがあったんだと世界の歴史を感じながらも、人間ドラマとしても見られる点が面白いと思っています。
それから、どの作品でもお客さんが入って舞台が完成するのは変わりないのですが、ヘタミュに関しては、舞台上と客席の境目が無いように感じるんです。
僕たち演者が作り上げた「作品」をお客さんが客席で受け取るのではなく、劇場内にいる全員でヘタミュの世界を楽しんでいるように思います。一緒に笑って泣いて楽しんで、一つの世界を作る。よく「お客さんもキャストの一員だ」と言いますが、それを本当に感じられる作品です。お客さんを巻き込んでこそだという僕たちの意識もあるのかもしれませんが、劇場の最後列まで全部がステージで皆さんと一緒に舞台に立っている気持ちになれる、不思議な空間ですね。
樋口:そんな舞台に参加できるのは本当に嬉しいですね。稽古が楽しみです。
−−最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします
樋口:今回からロマーノとして初参加になります。新キャラなので作品にいい風を吹かせていきたいです。作品への関わり方や立ち位置をちゃんと理解しつつ、楽しみを見つけながらカンパニーの一員になっていけたらなと思っております。
山田:コロナ禍で、表に感情を出しきれない生活がずっと続いていたと思います。僕らも同じで、抑えていたものがたくさんあります。ふさぎ込んでいた気持ち、溜め込んでいたもの、そういうものを今回のヘタミュで吐き出してほしいです。
めちゃくちゃ笑って感動してすっきりできる、舞台は楽しいな、ヘタミュって素敵だなと思ってもらえる作品をしっかり作り上げて皆さんと一緒に楽しみたいと思っています。絶対に楽しくなるので期待していてください。
取材・文:広瀬有希/撮影:ケイヒカル
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