小松準弥×里中将道、『桜蘭高校ホスト部』で“あうんの呼吸”へ 個性豊かなキャストは「まるで動物園」
2002〜2010年にかけて連載された葉鳥ビスコによる『桜蘭高校ホスト部』。伝説の少女漫画として今なお根強い人気を誇る同作が、連載開始から20年の時を経て歌劇『桜蘭高校ホスト部』として初めて舞台化される。
2.5ジゲン!!では須王環を演じる小松準弥、鳳鏡夜を演じる里中将道にインタビューを実施。お互いの印象や演じる役との共通点、稽古に向けて楽しみにしていることなどを聞いた。
――出演が決まった際の心境について教えてください。
小松準弥(須王環役):これまでテレビアニメ化・実写ドラマ化もされてきた大きな作品なので率直に言って緊張しましたし、プレッシャーも感じました。でも出演させていただけるということは光栄に思いましたし、環先輩という明るくておバカで何事にも一生懸命で素直でっていう、いろんなことに対してエネルギッシュに行動する役どころに挑戦してみたいっていう思いもあったので、楽しみもありました。なので、楽しみとプレッシャーが一気に押し寄せてきたっていう感じでしたね。
里中将道(鳳鏡夜役):右に同じです。
一同:(笑)。
里中:僕も『桜蘭高校ホスト部』という作品は知っていましたし、長い歴史があって愛されてきた作品なので、鳳鏡夜を演じられるということで、責任を持って素敵な舞台にしていきたいなという気持ちでいっぱいです。
――実際に作品に触れてみて、どんな印象を抱きましたか。
里中:印象って言葉にするの、難しいですよね。
小松:そうね。僕が思ったのは、すごく華やかでコメディ要素もたくさんあって、そういうところが肩に力を入れずに楽しめる作品だなっていうイメージを最初は持っていました。
でも、読み進むにつれて登場人物の色々な一面が見えてくるようになって、抱えている心の悩みとか、原動力がどこから来ているんだろうってことが気になり始めて。後半では一人一人の過去のトラウマとか悩みを掘り下げるエピソードが増えてくるので、すごく人間味を感じました。ただ楽しいだけじゃなくて、自分の悩みと重なる部分があったり、これからどう生きていくかというヒントが含まれていたりする、楽しく人生のお勉強ができる、そういう印象でしたね。
里中:確かに、それはあるかも。
小松:ね、そういう感じあるよね。
里中:僕もそういう感じですね。ゴージャスさもあるんですけど、心に効くというか。
小松:うん、心が満たされるというかね。
里中:ただ楽しいだけじゃなくて、っていうのは一緒で。メッセージ的なものが節々に散りばめられていて勉強になるというか、大事なこともたくさん伝えてくれる、すごくいい作品という印象です。
――演じる役とご自身との共通点を一つ挙げるとしたらどこでしょうか?
小松:「楽しくをモットーに」っていう環先輩の信念がすごく似ているなって思っています。俳優業をやる中で、自分も楽しみたいし、お客さまやファンの皆さんにも楽しい気持ちになってもらいたい。皆さんにパワーを与えるには、まず自分が楽しまないとって思うんですね。そういうところが一番環先輩と似ていると思います。細かいところだと、犬が好きなところも似ていると思うんですけど、一番を挙げるとしたら、読んだときに一番共感できた「楽しくをモットーに」です。
里中:すごく分かります。「楽しくをモットーに」いいですよね。
小松:ね! いいよね!
里中:僕も一緒に環先輩やりましょうか?
一同:(笑)。
小松:ダブルキャストでやる? 一緒に出ていって「どっちが本物でしょう」って双子みたいにやろうか(笑)。
里中:環の「楽しくをモットーに」はすごく自分と似ているところなんですけど、逆に鏡夜先輩(との共通点)はどこだろうな。そこまで冷血でもないので…(笑)。でも、鏡夜先輩は実は優しいんですけどね。人前ではクールに見えるけど、本当のところはみんなを守っているというか。あの人はなんやかんや仲間意識がすごく強いと思うので、人と人とのつながりを大切にしているところが一番似ているかもしれないですね。自分で言うのはアレですけど(笑)。
小松:(将道は)熱い思いを持ってるじゃない。鏡夜先輩もそうだと思うんだよね。
里中:そうですね。僕も表には出さないけど、熱い方だと思うので、そこは一緒だと思うし、一緒でいたいですね。
――では逆にお互いに感じる、環っぽい部分、鏡夜っぽい部分はどこですか。
里中:(準弥くんは)本当に明るくてちょっと天然なところもあるじゃないですか。そこがすごく愛される環に近いんじゃないのかなって、何回かお会いして思いましたね。キャスティング完璧だなと(笑)。
小松:将道とはビジュアル撮影のときに初めてお会いして、そのときはめっちゃクールな方だなっていう第一印象でした。その後、色々話してみたら、めちゃくちゃ人見知りなんだよね。
里中:そう、すごい人見知りなんです。
小松:ね。先日も取材で一緒に話す機会があって、もちろんちゃんと話せるんだけど、やっぱり印象としてはクールで落ち着いているっていうのがまだある。寡黙だなって。でも絶対的な自分というものをしっかり持っている人だと思うので、そういう部分は鏡夜に通じるものがあるんじゃないのかなって。
里中:(小声で)嬉しいですね。
小松:あと“陰と陽”で表したら、陰(里中)と陽(小松)なのよ。
里中:完全にそうですね!
小松:環と鏡夜にも僕はそういう印象を持っているので、お互いもともと持っている部分で関係性ができているなって。
里中:これから稽古の中でさらに、あうんの呼吸の関係になれるように合わせていけたらなと思います。
――現時点で役をどう落とし込んでいこうと思っていますか。
小松:何事にもエネルギッシュに振り切っているのが環先輩の魅力だと感じているんですけど、なぜそこまで人前で振り切れるのかって考えたときに、彼の心の中に絶対的な核となるものがあって、それがきっと彼の過去だと思うんです。そういう昔の思いとか彼が大事にしてきたものから、まずはしっかり向き合っていきたいなって思っています。
最初の(核となる)思いを厚く作っていけばいくほど、舞台上で120%、130%のエネルギーで環先輩を生きられると思うので、まずは心の奥底にある思いっていうものを掬っていくことから始めたいですね。
里中:ありがたいことにこの作品はテレビアニメもあるので、そういうものも研究しつつ、舞台ならではの人間味みたいなものをより伝えられるようにできたらいいなって思います。実写ドラマで鏡夜役を演じていた大東駿介くんに電話して、どうやって役作りしたか聞いたんですよ。そうしたらテレビアニメをめっちゃ研究したって言っていたので、僕もテレビアニメや実写ドラマを研究して、僕ならではの鏡夜がどういうものか探りたいと思っています。
――お二人がホスト部に訪れるなら、どのキャラクターにおもてなしされたいですか。
小松:この前、将道と取材受けたじゃない。そのとき僕は双子(常陸院ブラザーズ)におもてなしをしてもらって、“禁断の愛”営業を目の前で繰り広げてほしいって思っていたんですね。そういう世界に触れたことがないから、どんな感じなのかなって。
でも稽古が近づいてきて、改めて環先輩を生きるのかって思ったら、どんな人なんだろうとかどんな接客するんだろうとか、もちろん原作漫画にも描かれてはいるんですけど、もっとヒントがほしいっていう欲が出てきたので、環先輩におもてなししていただいて、ホスト部としての心得とか振る舞いを肌で感じてキュンキュンしたいです。どういう仕草してるのかとか環先輩からしっかり学びたいですね。
里中:なんかやっぱりちょっと似てますよね、環先輩に。
小松:本当に!? そう言ってもらえると嬉しいですね。
里中:僕は、最近はモリ先輩(銛之塚崇)。
小松:おお!
里中:何もしゃべらずに、ただ一緒にお茶とか飲みながら将棋とかやりたいです。
小松:渋いな~。語らずとも、っていう感じね。
里中:しっぽり落ち着きたい。
小松:なんかかっこよくて、ずるいな(笑)。
――では、お互いをおもてなしするなら、何をしてあげたいですか?
里中:ご飯ですね。僕、大阪出身なのでお好み焼きがいいですかね。
小松:いいね!
里中:大阪人なので毎日でもお好み焼き食べられるんですよね。だからおいしいお店に連れて行ってあげたいです。
小松:それをしてもらうなら、僕はもんじゃ作るわ(笑)。あとはテーマパークとか行きたいかな。なかなか遊びに行きたくても行けないっていう時期が続いたから、一緒にパーッと遊んで、そこでまた将道の新たな一面を知れたらいいなって思います。
――稽古に向けて今一番楽しみにしていることを教えてください。
小松:ホスト部には個性的なキャラクターが揃っていますが、将道や他の共演者の方と話している中で、多分キャストも個性的な人が多いんじゃないかなと感じました。その個性的な人たちが集まったときにどんな雰囲気になるのかなと想像したと時に、僕は動物園みたいになるのでは?と思いました(笑)。楽しみでもあり怖くもあるんですけど、そういうところがすごく楽しみですね!
里中:稽古に入ったら役の意識が必要なので、普段よりもツッコミ側になっちゃうと思うんですよ。僕も本当に動物園みたいになると思っているから、ちゃんと制止して、「はいみんな聞いてー」みたいな本当にお母さんみたいな立ち位置になりそうだなって思っています(笑)。そういうのも含めて楽しみですね。
――共演が楽しみなキャストや注目しているキャストはいますか?
小松:僕は猫澤先輩役の大海将一郎ですね。彼はだいぶ古い友人であり役者仲間なんですけど、彼も最初すごい人見知りだったんですよ。でも時間が経つにつれて、いい意味でどんどん壊れていって(笑)。彼がしゃべれば面白いというか盛り上がるというか、もっとしゃべってほしいって思わずにはいられないくらいすごいパワーを秘めている人で。当時ゲラゲラ笑っていた印象が強いので、久しぶりに会う彼が今どうなっているのか楽しみですね。本当にすっごく仲が良いので、今回出演が決まったときも彼に連絡して楽しみだねって話しました。
里中:僕は(埴之塚光邦役の小西)詠斗が楽しみです。本当にかわいくて、なんでも許しちゃうというか。稽古入ったら鏡夜先輩としてどこまで鬼になれるのか…、多分許しちゃうんですけど(笑)。彼のかわいさが十二分に発揮される役だと思うので、それがすごく楽しみですね。
――賑やかなカンパニーになりそうですが、どなたがまとめ役になりそうですか。
里中:まだ想像できてないけど、鏡夜先輩として僕…なのかな?
小松:鏡夜になりそうな気もするけど、今回僕が初座長なんですよね。これまで先輩方が座長をされている姿をたくさん見てきたので、これまでと同じ感覚で参加しちゃいけないと自分の中では思っているので、座長としての意識は現場でもずっと持っていると思います。
動物園に入りたいし、たまに入っちゃうかもしれないけど、一歩引いてまとめなきゃっていう気持ちが働くのかなと。脱線しちゃっても、鏡夜が止めてくれるから大丈夫という安心感を勝手に持ちながらやっていこうと思います。頑張ってまとめたいっていう気持ちはあるんですけど、ダメだったときはよろしくお願いします。
里中:頑張ります(笑)。
――環と鏡夜のような絶妙なタッグになりそうですね! では最後に公演を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
里中:歌もダンスもたくさんあると思うので、『桜蘭高校ホスト部』の魅力である華やかさを楽しみにしていただきたいです。僕たち自身もどんな感じになるのかもまだ想像できていなくて楽しみなので、皆さんにもそこを楽しんでもらえたらと思います。
小松:原作漫画を愛している方や舞台が決まって興味を持ってくれた方、色々な方がいると思うんですけど、これまでテレビアニメや実写ドラマなど色々な形で『桜蘭高校ホスト部』が表現されてきていて、それぞれにいろんな魅力が詰まっていると思います。
舞台化ということで、歌劇として歌もあって、皆さまと同じ空間で『桜蘭高校ホスト部』が表現されることになります。新たな試みでもあるし、僕たち生身の人間が表現するっていうことにも意味があると思うので、そういう意味をしっかり考えながらやりたいと思っています。原作漫画への愛やリスペクトを持ちつつも、舞台ならではの表現を使って、新しい一面や魅力を僕たちも見つけていきたいし、それをお届けしたいです。
あとは純粋に、観てくれた方に華やかで楽しくて心が温まったな、またここに帰ってきたいなって思ってもらえるような作品にしたいなって思っているので、楽しみにしていてください。
* * *
朗らかという言葉がぴったりの小松が場を盛り上げながら、里中が随所でキレあるコメントを入れるという、どこか環と鏡夜を彷彿とさせる関係性が見て取れるインタビューとなった。同時に彼らが演じる須王環と鳳鏡夜を早く観てみたい、そんな気持ちにさせてくれた。
歌劇『桜蘭高校ホスト部』の華やかな世界観が、一年の始まりを鮮やかに彩ってくれるのではないだろうか。
取材・文:双海しお/撮影:梁瀬玉実
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