絵を描くのを仕事にするのはダメなのか？ イラストレーター・さいとうなおきの答えに共感の声

絵を描くのを仕事にするのはダメなのか？

さいとうなおきとは、現在38歳のフリーランスのイラストレーター。
『デュエルマスターズ』『ポケモンカード』『ウマ娘』などのイラストを手掛ける人気絵師です。

そんなさいとうは今回、絵師を目指す視聴者からの悩み相談を実施します。
相談内容は「イラストでお金を稼ぐ」ことについて。

私の周囲にはイラストで生計を立てている人が一人もいません。
そんな中、とある友人に「イラストでお金を稼ぎたい」ということを語ったところ、「イラストを描くこととお金を稼ぐことがなぜつながるのかわからない。単なる承認欲求じゃないの？」と言われました。（中略）
先生は「イラストを描くこと」と「お金を稼ぐこと」の関係についてどう考えますか？やはり単なる承認欲求なのでしょうか？

実家が農家で「絵で生計を立てている人は僕の周りには1人もいなかった」というさいとうは「気持ちはよくわかります」と共感し、自分がどのように絵の道に進んだのか、その背景を赤裸々に語りました。

「仕事」は「モノ消費」から「コト消費」へ

まずさいとうは「絵を描くことは『仕事』と言えるのか」を解説します。

学生時代のさいとうは、仕事は仕事であり、絵を描くことは「あくまでも趣味」と捉えていたそう。
実家が米農家だったさいとうにとっては、稲刈りや田植え、お米の配達などが「仕事」で、アニメやゲームのイラストを描くことが「仕事になるなんてまったくイメージはできませんでした」と振り返ります。
親戚からも「なおき、いつかはらくがきを卒業しなさいね」「ちゃんと家を継いで立派に仕事しなさいね」と言われることがあったのだとか。

しかし、さいとうはこの考えに異論を呈します。
仕事の本質というのは「誰かの役に立って、そして役に立った分、対価としてお金をいただく」というもの。
では、絵は「誰かの役に立っているか？」というと、さいとうは「YES」「というか最近、どんどんそういう世の中に変化してきた」と答えます。

さいとうは、その理由として現代の人間の消費行動が「モノ消費」から「コト消費」に変わっていることを挙げ、

絵を描く能力はますます世の中に求められている。もっと言えば、誰かの役に立つ能力になってきているな、そう感じるんです。

と話します。
さいとうは、絵を使ったコンテンツは「みんなが手軽に元気になれる娯楽」であり、「コト消費」の現代においては「絵を描くこと」はれっきとした「誰かの役に立つ能力」「立派な仕事」だと主張しました。

絵描きならではの“ジレンマ”

しかしさいとうは「絵を描くこと」というのは「仕事にするにはちょっと厄介な問題をはらんでいます」とも話します。

絵を仕事にしたいと決めても、最初はほとんどの絵描きが実際には仕事がない。
だから、頼まれてもいないのに絵を発表し続けるという段階を誰しもが通らなければいけない

その際、他人から「そうまでしてみんなから褒められたいの？恥ずかしい」とあざ笑われることもあるといいます。

そうなんです。絵を描く、ということは少なからず自己表現が入ってきてしまいます。
絵がそういう表現である以上「誰かの役に立ちたい」と考えたとしても、どうしても自分を認めてほしいという気持ち、承認欲求とは切っても切り離せない

と、絵描きならではの“ジレンマ”を明かしました。

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たくさんもらってたくさん与えよう

相談者のような駆け出しの絵師は、この承認欲求を「恥ずかしい」「汚い気持ちだ」などとネガティブにとらえる人が多いそう。
しかし、さいとうは「でもね、あえて言いましょう。その承認欲求、全部認めちゃいましょう！」とアドバイスしました。

承認欲求は僕らの中に確実に存在します。それを抑え込むなんてね、もう無理無理。（中略）
いただいた承認はありがたく頂戴して、むしろ全部かき集めてそれ全部パワーに変換しちゃいましょうよ。
いやだって考えてみてください。たくさん承認されないと、周りの人に対しても、元気あげられなくないですか？（中略）
日頃どっかんどっかん承認されてそれ全部受け入れて、自分の心をいっぱいに満たしていた方が「よし！もっともっと元気にしてあげよう！君も！君も！ほら君にも！」って、いっぱいあげられるじゃないですか。

こう考えるようになってから、さいとうは承認欲求、ひいてはお金を稼ぐことに「一切躊躇がなくなった」そう。

その方が結果的に皆さんに対してガンガン良いものをお届けできるからですね。
僕は、僕が持っている承認欲求は全部受け入れて、皆さんが僕に対して与えてくれるパワーも、褒め言葉も協力もお金も全部受け取って、そしてその分もっともっと数倍にして皆さんにお返ししようと思っているんです。それが僕の考え方です。

人は見たことがあることしか信じられない

さいとうは「イラストを描くこととお金を稼ぐことがなぜつながるのかわからない」と言い放った相談者の友人については「ある意味仕方ない」とコメントします。
なぜなら「人は見たことがあることしか信じられない」から。
絵で生計を立てている人の存在を知らない限り、絵で生計を立てるということが想像できないというのです。

同じく幼少期は「絵はあくまでも趣味」だと捉えていたさいとうですが、中学生のときにテレビで見たイラストレーターの「あきまん」氏がきっかけで「イラストレーターになれた」と話します。

当時『ストリートファイター』が大好きだったというさいとう。
ある日、たまたまテレビ番組の1コーナーでカプコンの社内の様子が映っており、その中にあきまん氏はいたといいます。
「会社の偉い人」が「すごく誇らしげに」「うちのトップクリエイターです」とあきまん氏を紹介した瞬間、さいとうは

僕は子ども心に理解しました。
この人は絵を描いて、本当の本当に周りの人に尊敬されて、そして絵で本当の本当にお金を稼いでいるんだ。

と悟り、

その瞬間、僕は心底思ったんです。「僕もこうなりたい」って。
次の日から、周りの人に対してこう言ってました。「僕は将来トップクリエイターになります」

と考えるようになったそうです。

人は、見たことがないことは信じられないかもしれない。
でも、見たことがあることなら本気で信じられます。そして、それを実現できるんです。

コメント欄では共感の声多数

最後にさいとうは、相談者に

いつか〇〇さんも見せてやりましょう。
「見て！私の絵で元気にできる人がこんなにいるのよ！それが私の仕事なの！なんか文句ある？」そんな輝いた姿を。
きっとできます。諦めないで、応援しています。

とエールを送りました。

コメント欄では

疑問がどんどん解消されてく〜
特にたくさん褒めてもらって自分を満たし、作品でお返しをするっていうのが刺さりました

承認欲求は大事ですよね、それが生活につながればこんなに良いことはないです。

と、共感の声が集まっています。相談者本人も

お答えいただき本当にありがとうございます！（中略）
承認欲求を受け止めるということ、実際に見たことがない人は信じることができないことなど、さいとう先生の答えにバシバシ自信と元気をもらいました！
本当にありがとうございました！

と、さいとうに感謝の声を寄せています。