【ゲネプロレポ】細かいことは気にするな! LIVEミュージカル演劇「チャージマン研!」R-2開幕
2020年10月10日(土)、LIVEミュージカル演劇「チャージマン研!」R-2が開幕した。
原作は1970年代に放送されたアニメ「チャージマン研!」。低予算ゆえの「脈絡のない展開」「SEカット」「安定しない作画」などの作りで、2010年頃からネットを中心に話題になった。
2019年の初演では、スマホでの撮影やSNSへの投稿が許可されていたほか、ニコニコ生放送で後半回の主役のチャージマン研役を決める「チャージマンドリーム企画」など、新しい楽しみ方のできる舞台としても注目を集めた。
続編となる本作「R-2」のゲネプロを観劇後、体温は平熱ではあるものの、その内容から筆者の脳内は熱におかされてしまった。“頭がお詳しい”ところもあるネタバレ満載のレポートとなるが、お許しいただきたい。
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※以下、ネタバレを含む内容あり
考えるのは野暮、合言葉は「気にするな!」
初演は全公演観劇したので耐性はついているつもりだったが、ダメだった。何が何だか分からない。観終ってただ「楽しかった」という充実感だけが残っている。何を見せられているのだという疑問が脳を支配するが、考えるのは野暮というものだ。
頼れるリーダー、安定の古谷大和研。彼の振り切った強いテンション無しではチャー研ステは始まらない。
癒やしの茨城研、安達勇人。4人の研のバランスを見ても、彼のほのぼの感はこの舞台にとって重要だ。
東拓海研。髙﨑俊吾がお休みのため、サイコ枠は無しかと思っていたが、メーターを振り切ったデンジャラス研が誕生していた。
大人の事情で名前を出していいのか分からない研の若井おさむ。キャスト発表の時点で「そうなるだろうな」と予想していた通り、アニメ好きの筆者のDNAにすりこまれたあの声とセリフが聞こえてくるが、ここで突っ込んだら負けだ。
某ニュータイプだけだと思っていると、とんでもない火傷をする。端々まで気を抜かずに気をつけてほしい。
どこからどう見ても性別不明のかわいらしさ、星元裕月演じるキャロン。まるでお人形のようだ。今回はキレキレのアクションも披露してくれる。竹のような何かをくわえるシーンもあるが、もちろん気にしてはいけない。
村上幸平扮する魔王。公演前のインタビューで語っていた通り、歌あり、ダンスあり、さまざまな引き出しでベテランの経験値と演技力を見せてくれる。
ジュラルの“魔王”だが、徹底してホワイトなトップだ。地球の支配が目的なのだが、(蝶を解き放ったりはするものの)地球人を虐殺しようとはしていない。むしろ、研の方が理不尽だと言えるかもしれない…。
理想の上司、浜ロンのジュラル星人。個性アピールでは、持ちネタの「安室奈美恵をすごく早く言う」を披露。前説やさまざまなシーンで場内を盛り上げる。
初演は声のみの出演だったが満を持して出演の星くん役の藤原祐規。ネタバレをするが、星くんが登場する原作アニメ4話は、この舞台では上演されない。
しかし星くんは、ストーリーに出てこなくても地球上にはいる。観客の心に常に生き続けているのだ。耳をすませば藤原祐規のいい声が聞こえてくるような気がする。
初演では空前絶後のブームを起こしたパパ、泉博役の篠原麟太郎。スーパーパパタイムではその本格的な歌声を堪能できる。
コロナを逆手に取った演出 100分間の白昼夢
本作は初演で行われた回のブラッシュアップと新作回を組み合わせた構成で、時事ネタも入れた豪華かつカオスな内容になっている。今回のゲネプロでは、原作アニメ第25話「雄一少年を救え!」が上演された。
また、初演同様、「チャージマンドリーム企画」もある。ささやかに「好き」と応援の気持ちを伝えるために課金してもよし、札束で殴り合うもよし。好きなように楽しんでみよう。
本格的な殺陣が楽しめるのも今回の公演ならでは。なぜだと聞かれても大人の事情で詳細を書くのをためらってしまうが、お休み研に中村誠治郎が入る日は、さらに見ごたえがあるに違いない。
また、ボルガ博士の名シーンは必見だ。
本公演では、新型コロナウイルスに対してさまざまな対策が講じられている。
その一つが「基本的に口パク」だ。開幕前に行ったインタビューで星元裕月が語った通り、舞台にとって厳しいこの状況を逆手に取っている。実際に観てみると、コロナ対策だけではない、演出上の効果が出ているのが分かる。
声と口の動きが微妙に合っていない時もあれば明らかに違う時もあり、また、要所要所でマウスガードをつけて生声で演技になるのだが、大体音声が割れている。しかしそれが実にチャー研らしいのだ。
「今だから仕方ない」と妥協するのではなく、「今だからこそ何ができるか」。フェイスガードへのひと工夫、最前列視点での配信、ソーシャルディスタンスのために空けられた席に応援アバターを導入するなど、対策さえも楽しもう、楽しんでほしい、という気持ちが伝わってくる。
チャー研は「エンタメの楽しさ」を純粋に与えてくれる。難しいことは何もなく、ただ楽しい。
1人でも楽しい。友達と観てももちろん楽しい。ニコ生で全公演生配信されるほか、最前アングルで楽しめる有料配信も行われており、ネットを通して大勢で突っ込みながら見るのにも向いている。さまざまな楽しみ方ができるのだ。
ただただ、心から「楽しい!」。難しいことは考えず、素直にそのまま。会場なら隣にぶつからない程度にペンライトを振り回し、自宅でなら一杯飲みながら、気楽に気軽に楽しめる作品になっている。
初演に続き、今回も手島いさむによる音楽のアレンジが格好いい。例のレコードの旋律に歌詞が付いているだけでなく、壊れたオルゴールのように繰り返されることにより、鼓膜と脳が支配される。数日は夢に出てきそうだ…。またこの舞台を毎日服用しないと禁断症状が出てしまう。
本作のタイトルのR-2の「R」とは何だろうか。リターンのR、「レギュラー化するよ!」のR、リベンジのR、令和のR…。いや、考える必要はない。
ゲネプロを観ながら爆笑している筆者の隣では、チャー研ステ初見のカメラマンが盛大に戸惑っていた。いい感じだ。きっと今夜はうなされることだろう。
公演時間は、10分の休憩を挟んで約100分。この衝撃のエンタメを、劇場や配信でぜひ好きなように楽しんでほしい。
(C)2020 鈴川鉄久/ICHI/チャージマン研!Lol
撮影:ケイヒカル
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