"敵"は安住紳一郎ではなかった…和久田麻由子『news LOG』が打ち破るべき"壁"
今春にNHKを退局し、現在はフリーで活動する和久田麻由子アナが、民放で厳しい船出を強いられている。メインキャスターを務める日本テレビ系報道番組『追跡取材 news LOG』が、視聴率で苦戦しているのだ。鳴り物入りで始まった新番組は、なぜ思うような結果を出せていないのか。
土曜夜10時台に放送されている『追跡取材 news LOG』は、記者の取材過程を見せながら、ニュースの背景に迫る構成が特徴。メインキャスターに起用された和久田アナは、東京大学経済学部出身で、NHK時代は『NHKニュースおはよう日本』『ニュースウオッチ9』などの看板ニュース番組を担当してきた。落ち着いた進行力と聡明さで視聴者からの人気も高く、初の民放レギュラーとなる『追跡取材 news LOG』には大きな注目が集まっていた。
しかし、数字は伸び悩んでいる。
4月25日の初回放送は平均世帯視聴率3.8%、個人視聴率2.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。同時間帯で放送されたTBS系の長寿報道番組『情報7daysニュースキャスター』は世帯10.4%、個人6.0%で、大きな差がついた。5月16日の放送でも『追跡取材 news LOG』の視聴率は世帯3.7%と報じられ、初回からほぼ横ばいの状態が続いている。
苦戦の理由として、和久田アナが民放の番組にまだなじんでいないのではないか、との見方もある。NHK時代の彼女は、進行の正確さや安定感で支持されてきた。一方、民放の情報番組では、キャスターの強い個性や、共演者とのざっくばらんな掛け合いなど、予定調和を崩す柔軟さも求められる。まじめな印象が強い和久田アナは、そうした民放の報道番組にどう対応していくのか。
比較対象として名前が挙がりやすいのが、NHK出身の先輩・有働由美子アナだ。有働アナはNHK時代から、失敗談や本音を交えたトークで個性を打ち出していた。『あさイチ』では硬派なニュース番組とは違う顔を見せ、民放に移ってからも、その人間味が武器になっている。和久田アナはNHK時代の安定感を保ちながら、有働アナのような人間味をどう見せていくのかが今後の課題となりそうだ。ただし、番組の苦戦を和久田アナだけの責任と見るのは乱暴だ。最大の要因は、土曜夜10時台という放送時間帯にある。同時間帯では、TBSの絶対エース・安住紳一郎アナがメインキャスターを務める『情報7daysニュースキャスター』が長らく高視聴率を維持してきた。TBSでは1991年開始の『ブロードキャスター』から現在に至るまで、土曜夜の報道番組の流れを継続している。約35年にわたり築かれた視聴習慣は、他局で新番組が始まったからといって、そう簡単には崩れない。
和久田アナを旗頭として、日本テレビがTBSの「土曜夜10時」の牙城に切り込もうとした意図は分かる。だが、多くの視聴者に「土曜夜10時は安住アナ」という視聴習慣が根付いている以上、そこにキャスターの人気や知名度だけで割って入るのは困難だ。
どれだけ人気や実力のあるアナウンサーでも、番組の企画、構成、共演者、時間帯などがかみ合わなければ、視聴率にはつながらない。和久田アナを生かせるかどうかは、本人の力量だけでなく、番組側がどんな役割を与えるかにかかっている。
現在の『追跡取材 news LOG』には、和久田アナでなければならない場面をもっと作れる余地がある。記者の取材過程を見せる番組なら、和久田アナの強みである聞く力や、物事をわかりやすく整理する力を前面に出せるはずだ。逆に、他の報道番組と代わり映えのしない構成なら、元NHKエースの存在感は薄まってしまう。
とはいえ、新番組の成否は早い段階で判断することはできない。たとえば、フジテレビ系の朝の情報番組『めざましテレビ』も、1994年の開始当初は平均世帯視聴率2~3%程度だったとされ、苦戦していた。それでも焦らずに長く続け、テコ入れを重ねることで固定視聴者を獲得し、現在は朝の時間帯でトップクラスの人気番組になっている。
和久田アナは民放で個性を発揮できるのか。そして局側が、視聴者の習慣を変えるまで番組を育てる覚悟を持てるのか。元NHKエースであっても、民放の情報番組は一筋縄ではいかない。だからこそ、ここから和久田アナを中心に番組のカラーを作り、どのように独自の魅力を視聴者に届けていくのかが、本当の勝負になる。
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