木村拓哉主演『教場』劇場版レビュー 歴代キャスト再集結と十崎との因縁が描くシリーズの到達点
2020年の正月、フジテレビ開局60周年記念スペシャルドラマとしてスタートして以来、続編や前日譚『風間公親-教場0-』へと広がり、シリーズとして確固たる地位を築いてきた、木村拓哉主演の「教場」。風間が教官になる以前の刑事時代まで描かれ、物語は着実に奥行きを増してきた。
“木村拓哉主演ドラマ”というブランド性の高さは言うまでもないが、本作はそれだけに依存していない。将来を嘱望される若手俳優が多数出演し、風間との緊張感ある関係性や化学反応を楽しめる点も大きな魅力だ。今作でも齊藤京子、倉悠貴、井桁弘恵、大原優乃ら主役級キャストが顔を揃え、それぞれが物語に厚みをもたらしている。
とはいえ、本シリーズの真価はスター性に頼った華やかさではなく、警察組織のリアルなディテールに裏打ちされた物語の強度にある。原作は警察内部を描くことに定評のある作家・長岡弘樹の同名小説。緻密な取材に基づく描写が、作品に説得力を与えている。
舞台は、これまであまり知られてこなかった警察学校。冷酷な“鬼教官”と呼ばれる風間公親と、生徒たちが入学から卒業までの約6か月を過ごす濃密な時間が描かれる。警察学校で事件が起きるなど、ドラマ的な誇張はあるものの、警察官候補生の心理や葛藤に焦点を当てた点は高く評価できるだろう。
警察学校を扱った作品自体は過去にも存在するが、「教場」シリーズは明らかに異質だ。成長を温かく見守るのではなく、適性のない者を容赦なくふるい落とす。閉鎖環境での反応や精神状態を見極める風間の姿勢は、一見冷酷に映るが、その根底には警察官として社会に出る者への責任感と、不器用な優しさが垣間見える。
そんなシリーズがついに劇場映画として展開されることになった。もっとも、もともとスペシャルドラマの時点で映画並みのクオリティを追求してきた作品だけに、劇場版だからといって大きく作風が変わった印象はない。生徒それぞれの物語がオムニバス的に描かれながら交差していく構成も従来通りで、タイトルロールには「教場III」と掲げられている。
映画的な醍醐味として挙げられるのは、過去シリーズに出演したキャストがサプライズ登場し、警察官として成長した姿を見せる“オールスター”的な楽しさだろう。また、風間が義眼となるきっかけを作った凶悪犯・十崎との対決が物語を通して描かれる点も見どころの一つだ。ただし、この因縁自体は過去作でも触れられてきただけに、映画ならではの決定打とまでは言い切れないかもしれない。
前編にあたる『教場 Reunion』はNetflixで1月1日から配信され、2月14日には地上波でも放送された。そして後編『教場 Requiem』が劇場版へと続く。物語は前編からほぼシームレスに始まり、ダイジェスト的な説明が少ないため、少なくとも前編を視聴しておくと理解が深まるだろう。
両作を通して印象的なのは、綱啓永演じる門田の視点が物語を俯瞰しているように感じられる点だ。常にカメラを携える彼は、どこか観察者的でありながら、自身が本当に警察官になりたいのか迷い続けている。
警察学校に入る理由は人それぞれだ。強い使命感を持つ者もいれば、親の影響や就職先として選んだ者もいる。門田のような中間的立場のキャラクターを通して、「警察官になるとはどういうことか」という根源的な問いが改めて浮かび上がる。
気がかりなのは今後の展開だ。「最後」を思わせる言葉が示されつつも、回収されていない伏線や謎がいくつか残されている。今回映画という形を取ったことで、もし続編が作られるなら再びスペシャルドラマに戻るのか、それとも劇場路線を継続するのか——シリーズの行方にも注目したい。
【ストーリー】外部に詳細が明かされることのない警察学校=教場。適性のない者をふるい落とす密室空間で、夢や秘密を抱えた生徒たちと、どんな嘘も見抜く鬼教官・風間公親が向き合う。卒業、すなわち警察官になる資格をかけた真剣勝負が幕を開ける。
▼作品情報映画『教場 Reunion』/映画『教場 Requiem』出演: 木村拓哉、綱啓永、齊藤京子、金子大地、倉悠貴、井桁弘恵、大友花恋、大原優乃、猪狩蒼弥、中山翔貴、浦上晟周、丈太郎、松永有紗、佐藤仁美、和田正人、荒井敦史、高橋ひとみ、佐藤勝利、中村蒼/小日向文世ほか原作: 長岡 弘樹「教場」シリーズ/「新・教場」「新・教場2」(小学館刊)監督: 中江 功音楽: 佐藤 直紀脚本: 君塚 良一配給: 東宝2026年2月20日(金)~劇場公開中
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