『ちるらん』山田裕貴版・土方歳三は何が違う? 歴代名優が演じ継ぐ“鬼の副長”を徹底比較
幕末に波乱万丈な運命をたどり、今日まで数多くのフィクションで題材にされてきた「新撰組」。中でも近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一といった中心メンバーは、ドラマや時代劇、乙女ゲームに至るまで、媒体やジャンルを越えて描かれてきた存在だ。本稿では、その中でも“鬼の副長”として知られる土方歳三に焦点を当て、俳優ごとに異なる人物像や魅力を比較していく。
まず、2026年春放送のスペシャルドラマ『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(TBS系)にて土方歳三役を務めるのは、映画『爆弾』での名演が記憶に新しい俳優の山田裕貴。本作は梅村真也と橋本エイジによる同名コミックスを原作としており、不良漫画的なテイストを取り入れた時代ものとして根強い人気を誇っている。
本作の土方歳三は、強さを求めて道場破りを繰り返す好戦的な青年として登場する。自分よりはるかに強い近藤勇にボコボコにされた際も「久しぶりにオレを強くしてくれるヤツだ」と高揚するなど、まるで少年漫画の主人公のようなキャラクターだ。
現在公開されているドラマのプロモーション映像を見る限り、山田は野性味のあるビジュアルで彼を体現している印象。誰彼かまわず戦いを挑む狂犬ぶりを、より際立たせるような演技が見られるかもしれない。
やはりフィクションにおける土方歳三といえば、鬼の副長としての怖さや凶暴さが強調されることが多い。2021年公開の映画『燃えよ剣』でもその路線は踏襲され、喧嘩に明け暮れる“バラガキ”から武士を志す土方歳三を、アクションに定評のある岡田准一が力強く演じている。
なお『燃えよ剣』は、これまで幾度も映像化・舞台化されてきた作品。1966年の映画版と1970年のテレビドラマ版では栗塚旭、1990年の単発ドラマでは役所広司、そして2004年の舞台版では上川隆也がそれぞれ土方役を務めており、いずれもワイルドで渋い人物像として描かれてきた。
もちろん2021年版の岡田も同様だ。体術を交えた迫力ある殺陣は言うまでもなく、「歳の鬼あし」と呼ばれた独特な歩き方まで再現するなど、土方歳三の持つ凄みと渋さに圧倒的な説得力を与えている。
しかし作品によっては、“怖い”“ワイルド”といったイメージから大きく外れた人物像で描かれることも少なくない。その代表例が、2004年に放送されたNHK大河ドラマ『新選組!』の土方歳三だ。本作で土方歳三を演じたのは、放送当時27歳だった山本耕史。岡田准一の土方とは対照的に、ベビーフェイスで色白という柔らかなビジュアルで、キャラクターもかなり常識人寄り。切り込み隊長というよりは頭の切れる参謀タイプとして描かれていた印象が強い。この土方像は、脚本を手がけた三谷幸喜の思い描くイメージに基づくもので、“ソフトな容貌でありながら内面は硬派”というギャップがぴったりと考えられていたことが後に明かされている。
ちなみに山本にとってこの土方役は大きな当たり役となり、NHK連続テレビ小説『あさが来た』や映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』でも土方役として出演。その際には『新選組!』の名台詞「待たせたな」を披露している点からも、山本版土方がいかに愛されているかがうかがえる。
また2021年に放送された大河ドラマ『青天を衝け』では、町田啓太が演じる爽やかな雰囲気の土方歳三が印象的だった。本作の土方は、周囲や自分に対して厳しいものの、怖さよりも“カッコ良さ”が前面に出ている。殺陣も野性味を押し出す感じではなく、流れるように美しく、どこかスタイリッシュな佇まいだった。
恐らく、指揮官としての土方歳三を描くのか、それとも多摩の農家から成り上がりで武士を志した青年期にスポットを当てるのか――その違いによって、作品ごとに土方像は二分しているのだろう。そしてキャラクター性は異なっていても、各時代のイケメン俳優が起用されてきた点を踏まえると、史実で語られる“幕末きってのモテ男”というイメージには、おおむね忠実と言えるのかもしれない。
今後はどのような“土方歳三”が描かれていくのか。個人的には、なよなよして冴えない土方といったこれまでにない解釈も、いつか見てみたい気がする。
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