“超低空スタート”『もしがく』がとんでもない名作に化けそうなこれだけの理由
三谷幸喜が脚本を担当し、菅田将暉が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(以下・『もしがく』)が、視聴率で大苦戦している。10月1日放送の第1話では平均視聴率が世帯5.4%、個人3.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・以下同)で、第2話は世帯4.4%、個人2.3%とさらに下落。フジテレビの「水曜10時」ドラマ枠は、今年に入ってから不振が続いているが、三谷が25年ぶりにゴールデン・プライム帯の民放連ドラで脚本を手掛けた話題作という点を考えると、期待外れの数字となっている。
『もしがく』は菅田をはじめ、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波らが出演する今季屈指の豪華キャストで、制作費も惜しみなく投入されている。三谷脚本という看板を踏まえると、数字の上では失敗作と言わざるを得ない。とはいえ、同作を単なる「低視聴率ドラマ」で片付けるのは早計だ。なぜ視聴率が伸び悩んでいるのだろうか。その原因は初回放送の構成にあると考えられる。
第1話では、菅田、二階堂、神木、浜辺が演じる主要な登場人物の紹介に多くの時間を割かれた。さらに舞台となるストリップ劇場に関わる人物の背景まで描かれ、結果として説明が多くストーリーがテンポ良く進まなかった。主役級が4人もそろっているので、紹介に時間をかける必要があったとはいえ、初回30分拡大スペシャルの割には間延びしてた印象があった。ラストに用意された二階堂演じる倖田リカのダンスは圧巻だったが、それ以外に「次回も見たい」と思わせるシーンが無かった。実際、初回5.4%から第2話4.4%と視聴率を落とし、第1話だけで離脱した視聴者が多かったことを物語っている。初回放送を登場人物の紹介に費やした結果、スタートダッシュに失敗した格好だ。
しかし、視聴率は落としたものの、第2話を見るとこの構成が正解だったとわがる。第2話では、主人公の久部三成(菅田)が自身の劇団を追い出され、WS劇場に身を寄せるところから始まる。登場人物の紹介を第1話で終えていたため、第2話は驚くほどにテンポ良くストーリーが進んだ。三谷らしいセンスあるセリフが次々飛び出し、第1話とはまったく印象の異なる魅力あるシーンが多く見られた。あまり活躍がなかった菅田も、第2話の後半で高い演技力を見せつけた。
物語の舞台となるWS劇場は、規制強化によって客足が遠のき閉館の危機にある。そんな中、久部は劇場を再利用して芝居を上演しようと提案。ドラマの時代設定である1984年は「小劇場ブーム」にあり、シェイクスピア劇を上演すれば莫大な利益が得られると久部は熱弁する。政治家の演説のように言葉を畳みかけ、劇場関係者を説き伏せる菅田の演技は圧巻だった。久部という人物の持つ情熱と胡散臭さをワンシーンで体現してみせたのだ。また、第2話では脇役陣の熱演も光る。ダンサー役のアンミカや秋元才加、用心棒役の市原隼人らがそれぞれ存在感を発揮。初回放送であえてリスクを負いながら、人物紹介に時間を割いたことが、第2話で効果を上げている。下地が整ったことで、今後は最終回に向けてより濃密な青春群像劇に発展していくことが期待されるのだ。
さらに、潰れかけのストリップ劇場を舞台に、寄せ集めの劇団員たちが芝居を披露するという筋立ては、三谷らしさ全開だ。この設定は彼の代表作『王様のレストラン』に通じるところがあり、名作になる予感を漂わせている。
『王様のレストラン』は、赤字続きのレストランを松本幸四郎(現・二代目松本白鸚)が演じる千石武が再建する物語で、大ヒットした。『もしがく』もまた、久部という部外者が関わり、閉鎖寸前のストリップ劇場を再生へと導く展開である。物語の構成は重なっており、三谷は視聴者を熱狂させる“ツボ”を心得ている。その意味でも、『もしがく』が第3話以降に面白さに拍車がかかる可能性は極めて高い。数字だけでは測れない、未知の可能性を秘めた作品といえる。
厳しい評価を受ける『もしがく』だが、第2話放送後はSNSで話題が拡散している。第1話を見直す視聴者も増え、見逃し配信の再生数は200万回を突破した。ドラマ好きの間で再評価の動きが広がっている。
もし第1話だけ見て離脱した視聴者がいるなら、損をするかもしれない。ネガティブ情報に惑わされず、第3話まで見た上で観るかやめるかを判断することをおすすめする。
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