

アイドルが殴り倒し抱き寄せた夜──壮絶すぎた同門プロレス対決の真実【東京女子プロレス】
アップアップガールズ(プロレス)の鈴木志乃と高見汐珠が、6月21日(土)山梨・小瀬スポーツ公園体育館サブアリーナで激突した。グループ内でのシングル初対決であり、東京女子プロレス夏のトーナメント出場をかけた予選で実現した“同門対決”は、勝っても笑えないほどの極限状態へ──。二刀流アイドルが見せた、プロレスという名の「本気」の記録を元『週刊プロレス』記者の小島和宏氏がレポートする。
「鈴木志乃さんと高見汐珠ちゃんのシングルマッチ、どうでしたか?」
アイドル関係の仕事で一緒になった知人から、心配そうな表情でそう聞かれた。鈴木志乃と高見汐珠(たかみ・うた)はアップアップガールズ(プロレス)のメンバー。アイドル活動と並行してプロレスラーとしても試合をする二刀流である。
グループの歴史はもう7年以上になるが、2人はあとから加入しているのでまだ歴は浅い。一応、鈴木志乃がひとつ先輩で、高見汐珠がグループでいちばんキャリアが下の妹的存在ということになる。 そのふたりがシングルマッチで闘うことになってしまった。これは夏の一大トーナメント『東京プリンセスカップ』への出場権をかけた予選試合。つまりアイドル同士の同門対決だからわちゃわちゃと……なんてわけにはいかないシビアな闘いなのだ。特に先輩の鈴木志乃にとっては「絶対に負けられない闘い」なのだが、勝ち星に恵まれない現状を考えると、いろんな意味でギリギリの試合になることは必至、である。 二刀流だからこそ、アイドルとして知って、プロレスに興味を持ってくれた人もいる。そっち側から来た人にとっては、やっぱりこの一戦はプロレスファンよりも心配かつ興味深いものだったようで(もちろんアイドルにもセンターや選抜を巡る闘いはあるが、さすがに殴ったり、蹴ったり、投げ飛ばしたりはしない)前出のアイドル関係者はこう言った。
「いまの勢いだったら汐珠ちゃんが勝っちゃいそうじゃないですか? その歓喜のシーンも見たいんですけど、そうなった場合、負けた志乃さんがメンタル的に大丈夫か心配になっちゃうんですよねぇ〜」 そう、キャリア的には鈴木志乃が先輩にあたるので、普通に考えたら彼女が勝てるはずなのだが、ここ数カ月、とにかく高見汐珠の勢いがすごいのだ。正直、体はめちゃくちゃ小さいのだが、どんな大きな相手であっても、恐れずに真正面から突進していく。その姿は彼女のファンではなくても、おもわず「がんばれ!」と応援したくなってしまうし、試合後には謎の感動に場内が包まれる。まさにピープルズ・アイドルレスラー! そうなると彼女の評価も上がり、チャンピオンクラスの選手とのシングルマッチが頻繁に組まれるようになる。もちろん勝てないのだが、怯まず突進していく姿に観客からの評価と支持はあがっていく一方なのだ。昨年来、東京女子プロレスの興行がパッケージとして面白さがグググッとアップしているのは、こうやって前座戦線が異様な熱を帯びながら盛りあがってきているから、である。 そんな後輩を見て「うらやましい」と思っていた、と鈴木志乃は吐露する。彼女もまた体は大きくないし、とにかくプロレスラーとしては不器用なタイプ。見ていてもどかしくなってしまうことも多々あるのだが、それでもめげずに立ちあがる姿には、やっぱり応援したくなってしまう。思わず応援したくなる、というのはアイドルとしては最強の才能。タイプはまったく違うけれども、ふたりともやっぱり根っからのアイドルなんだな、と感じさせられる。 そんなふたりのシングル初対決は当初、6月7日に品川でおこなわれる予定だった。都心での試合、しかも生配信がおこなわれるということで密かに注目を集めていたのだが(なにを隠そう筆者もそのひとり、である)、高見汐珠の体調不良により6.21甲府大会に延期。こちらは生配信ナシの大会ということでがっかりするファンも多数、出てしまったが、こういうシチュエーションのときほど好勝負が生まれるのがプロレスの奥深いところなのである。この日も高見汐珠はいつものようにゴングと同時に突進しようとした。先輩超えするためには勢いも大切。いまの勢いがあればイッキに突き抜けることも可能……だと思ったのだが、高見汐珠は一歩、二歩と踏みこんだところで動きを止めた。 鈴木志乃の放つ殺気、妖気に完全に気圧されて、足が進まなくなってしまったように見えた。これぞリアルな「魂のプロレス」。アイドル同門対決はピリッとした緊張感の中、オーソドックスなレスリングが展開される、という予想外の展開に。 基本は高見汐珠が仕掛け、鈴木志乃が耐えて、切り返すという流れだったが、先輩の意地で妹分の猛攻を耐え抜いた。そして力づくで投げ捨て、がっちり3カウントを奪った。 衝撃的だったのは、その次の瞬間だった。 笑顔が爆発するのか、それともうれし泣きしてしまうのか? 鈴木志乃の表情に注目していたのだが……彼女の表情からは、なんと感情が消えていたのだ。かつて「私はあんまり勝ったことがないから、どうやって喜んだらいいのかわからない」と語っていた彼女だったが、もはや、そんなレベルを超えている。全身の魂がからっぽになったかのような表情。それほどまでにこの一戦にすべてを出し切ったのか? アイドルも、プロレスラーも飛び越えた「人間」としての極限状態を見せつけられた気がした。 その後、リングに倒れこんでいる高見汐珠の姿に気が付くと、優しく駆け寄りそっと抱き寄せた鈴木志乃だったが、大きな拍手を浴びながら花道を引きあげるときも、やっぱり笑顔を見せなかった。これが予定通り、品川でおこなわれていたらどうだっただろうか? 生配信もなく、リアルタイムで見ているのは甲府の会場に集まった人だけ、というシチュエーションも、こんな状況を生み出した要因だったような気がしてならない。 未来のことなんてわからないけれど、いつかこのふたりの一騎打ちがビッグマッチで組まれる日が来たとき「そういえば、あの日、甲府で……』と語り継がれるような一戦になったことだけは間違いない。
これまでアップアップガールズ(プロレス)はエース格の渡辺未詩の活躍ばかりが突出してしまっていた。その渡辺未詩は7.21大田区でタッグ王座に挑戦するが、パートナーはかつて一緒にベルトを巻いたことがある辰巳リカ。いつかアップアップガールズ(プロレス)のメンバー同士のペアがタッグ王座に挑戦し、見事にベルトを巻いたとき、彼女たちの二刀流物語はさらに一段、高みに登る。
そのとき渡辺未詩の隣に立っているのは鈴木志乃か、高見汐珠か? いやいや鈴木志乃&高見汐珠組の可能性だってゼロではない! これからの季節、アイドルフェスへの出演も増え、さらに活動の幅が広がるアップアップガールズ(プロレス)。ぜひ、このタイミングで二刀流の活躍をダブルで体感していただきたい。たぶん、いまがいちばんおもしろい!
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