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年間実食700杯以上のラーメン官僚が"つけ麺"の味わい深い歴史を解説「ルーツは戦後の荻窪にあり」
日本全国のラーメン店の発掘と紹介をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンを食べ続け、生涯実食杯数は21,000杯に迫る日本屈指のラーメンフリーク、通称「ラーメン官僚」こと、かずあっきぃ氏。日本におけるラーメンの歴史・文化・進化を語り尽くす短期連載。第4シーズンのテーマは「つけ麺の歴史」。(前後編の前編)
つけ麺の歴史を語る上で、何はさておき、「つけ麺は、いつ、どこで、誰が、どのような経緯で生み出したのか」という起源の話を避けて通ることはできません。
つけ麺の起源については、既にネット、誌面などで語り尽くされています。詳しくお知りになりたい方は、別途調べていただければ十分な情報が得られると思うので、ここでの説明は要点のみにとどめますが、結論から申し上げれば、「丸長」「大勝軒」「山岸一雄氏」「まかない」、これら4つの単語がキーワードとなります。
戦後間もない1947年、長野県から東京に出てきた血縁関係のある5名(通称「丸長五人衆」)による共同経営という形で、荻窪の地に『丸長中華そば店(荻窪丸長)』が産声を上げました。「丸長五人衆」はその後、一人また一人と『荻窪丸長』から巣立ち、それぞれ『丸長』、『丸信』、『栄楽』、『大勝軒』、『栄龍軒』の創業者となりました。これらのお店が更に弟子、孫弟子等への暖簾分けを繰り返すことで、『丸長のれん会』という一大勢力を築き上げていくことになります。
そんな彼らが、『丸長』や『栄楽』の厨房で「まかない」として食べていたのが、つけ麺のプロトタイプです。「丸長五人衆」の地元である長野県は、古くから蕎麦の産地として有名で、彼らは、ラーメン職人になる前は日本蕎麦の世界に身を投じていました。そんな経緯もあり、日本蕎麦をツユに浸していただく「もり蕎麦」のように、中華麺をスープにディップさせるという発想が生まれたのです。
先に進みます。つけ麺は、のちに『ラーメンの神様』と呼称されるレジェンド・山岸一雄氏の手によって商品化されます。山岸氏は「丸長五人衆」のひとり・坂口正安氏のいとこで、1955年、坂口氏が1951年に創業した『大勝軒(中野大勝軒)』の店長に任じられます。店長となった山岸氏が、「まかない」だったつけ麺をブラッシュアップし「特製もりそば」という商品名でお客さんに提供するようになった。これがつけ麺の起源です。ちなみに、ここで言う「特製」というのは、日本蕎麦の「もりそば」を中華そば仕様へとアレンジしたという意味での「特製」で、一般的に用いられる「豪華仕様」といったニュアンスが込められたものではありません。
なお、つけ麺の元祖の店は『東池袋大勝軒』だと思っている人が少なからずいらっしゃいますが、事実は上記のとおりであり、それは誤解です。『東池袋大勝軒』は、つけ麺の商品化を成し遂げた山岸氏が1961年に創業した店であり、つけ麺を商品としてお客さんに初めて提供したのは『中野大勝軒』です。
少し脱線しますが、「つけ麺」という商品名の生みの親は、1974年に創業し昭和50年代にチェーン店として一世を風靡した『つけ麺大王』であり、『丸長』、『大勝軒』ではありません。ここまでの話を注意深く読み返していただければお気付きになると思いますが、『中野大勝軒』、『東池袋大勝軒』は、「特製もりそば」という名称でつけ麺を提供しており、これは今でも変わりません。『中野』、『東池袋』以外の『大勝軒』においても、一部の例外を除けば同じです。なお、『丸長』の暖簾を掲げるお店では、「つけそば」という名称でつけ麺を提供しています。
次に、味にフォーカスを当てたお話をします。『大勝軒』の「特製もりそば」のスープは、おしなべて、甘味・辛味・酸味の「三味」で魅せる構成を採っています。中でも、甘酢のさわやかな酸味が味の決め手となっていますが、これは、まさに「冷やし中華」のスープの特徴そのものなのです。山岸氏は、「特製もりそば=スープが熱い冷やし中華」という構想を抱いており、それを具現化させたのが「特製もりそば」だと言われています。甘味・辛味・酸味をつけ麺に不可欠な要素と捉える考え方は、同じ『丸長のれん会』傘下である『丸長』の各店舗にも受け継がれています。
『大勝軒』、『丸長』のつけ麺は、先に述べたとおり、日本蕎麦から着想を得て考案されました。なので、スープは、煮干し・鯖節などの魚介を利かせた和風味豊かな味わいを持ち味としています。もちろん、ゲンコツ・豚足・鶏・挽き肉などの動物系素材も使っていますが、強火でガンガン炊いたりはしないので、さほど濁らずサッパリしたテイストです。
2025年現在においても、各地の『大勝軒』、『丸長』、及び、『大勝軒』『丸長』をリスペクトしたつけ麺を出す店(いわゆる『丸長・大勝軒系』提供店舗)へと足を運べば、このタイプのつけ麺は、現役で提供されています。
では、ここからは、つけ麺の「その後」を駆け足で辿っていきましょう。
1960年代から80年代にかけては、弟子、孫弟子への暖簾分けによって『丸長』、『大勝軒』が勢力を伸ばし。一都三県に『○○丸長』、『○○大勝軒』が次々と誕生。『丸長・大勝軒系』の味は、徐々に面的な広がりを見せていきます。
1970年代後半に入ると、『丸長』、『大勝軒』に加え、74年に創業した『つけ麺大王』が急速に店舗を拡大し、強力な広告塔となってつけ麺の普及を後押ししました。
が、それでもなお、1980年代ごろまでは、つけ麺は「知る人ぞ知る」存在にとどまり、爆発的な知名度を得るには至りませんでした。つけ麺を出す店も、現在とは比較にならないほど少なかったのです。
さすがに1990年代に入ると、そんな状況にも変化が訪れます。つけ麺界の盟主的存在である『東池袋大勝軒』の山岸氏が、1987年から弟子を取り始め、1990年以降、同店で修業した弟子たちが、続々と独立開業し始めたのです。
『東池袋大勝軒』仕込みのハイレベルな味が一気に各地へと拡散されたこともあり、つけ麺の認知度は右肩上がりに向上していきました。また、認知度の向上と足並みを揃えるかのように、「麺とスープを別々の器に盛り付け、麺をスープにディップさせて食べる」というつけ麺の提供スタイルも、世の中へと浸透していきました。
つけ麺の提供スタイルが広く知られるようになると、特に、創作意欲が高い新進気鋭のラーメン職人を中心に、必ずしも『丸長・大勝軒系』の味の枠組みにとらわれない様々なタイプのつけ麺を作ろうとするムーブメントが生まれました。
1990年代半ばから2000年代にかけて、大量の動物系素材と魚介素材を強火でガンガン炊き上げた白濁スープに、モッチリとした極太麺を合わせた「濃厚つけ麺」や、トッピングのひとつとして、鰹節をベースとする魚粉を味構成へと組み込んだ「魚粉つけ麺」など、これまでなかった新しいタイプのつけ麺が誕生。『べんてん』、『頑者』、『つけめんTETSU』、『六厘舎』、『とみ田』が、オピニオンリーダーとしてこの時期のつけ麺界を牽引し、つけ麺の知名度アップに大きく貢献しました。これらの店舗はいずれも、2025年現在においても、人気店・実力店として不動の地位を築き上げています。
2000年代後半には、透き通ったスープに細麺を合わせた「淡麗つけ麺」が誕生し、次代を担うつけ麺として、一躍、スターダムへとのし上がりました。代表格は、濁りが生じないよう細心の注意を払いながら鶏、魚介等の素材を丁寧に炊き上げた清湯スープに、昆布水に浸した細麺を合わせた「昆布水つけ麺」でしょう。「昆布水つけ麺」は、2000年代後半に『69’n’ Roll ONE(現・ロックンビリーS1)』の店主・嶋崎氏が考案・商品化し、2012年頃から急速に世の中へと広まっていきました。
さらに、2010年代後半に入り、ラーメン好きの関心が麺へと注がれ始めてからは、自家製麺・手もみ麺を清湯スープで食べさせる「麺主役型のつけ麺」が台頭し、今でも、多くの食べ手の胃袋を射止めているところです。
2025年現在においては、オーソドックスな『丸長・大勝軒系』を含め、各店舗において、「濃厚つけ麺」、「淡麗つけ麺」、「麺主役型のつけ麺」など、多種多様なつけ麺が提供されるようになっています。つけ麺のバリエーションは、ひと昔前とは比べ物にならないほど、豊かになりました。
構成/大泉りか
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