Conton Candy「人それぞれの“普通”ってどこにあるんだろう」 アニメ『SAKAMOTO DAYS』EDテーマに込められた思いや楽曲制作の裏側を語る
TVアニメ「SAKAMOTO DAYS」が1月11日(土)より放送開始する。(毎週土曜夜11:00-11:30ほか、テレ東系ほか)。同作は、週刊少年ジャンプ(集英社刊)にて連載中の人気漫画が原作の殺し屋ソリッドアクションストーリー。本記事では、アニメのエンディング・テーマを担当するConton CandyのVo./Gt.紬衣(つむぎ)、Ba./Cho.楓華(ふうか)、Dr./Cho.彩楓(さやか)にインタビューを実施。楽曲づくりの工程やこだわり、アニメに関連したメンバーの“隠れた能力”などをきいた。
楽曲のキーワードは“普通”、「葵さんが坂本を思う気持ちに着目した」
――最初に、アニメ「SAKAMOTO DAYS」のエンディング・テーマを担当すると聞いたときの気持ちを教えてください。
紬衣 うれしかったです。ただただ光栄でした。「決まるかわかりませんが、頑張ってみましょう」という温度感からのスタートだったので、まさか決まるとは思っていなくて。みんなでスタジオにいるときに決定の連絡をもらったので、3人で「ワー!」って喜びました。
彩楓 本当に驚きを隠せませんでした。私も3人で「ワー!」と喜んだことは思い出に残っています。同時に、「いい曲を作ろう」「やってやるぞ」という気持ちになったことも覚えています。
楓華 私と彩楓は双子なのですが、2人とも小さい頃からアニメを見ながらしっかり主題歌やエンディング曲も聴いていたので、「アニメの曲を担当させてもらえるなんてすごい!」と思いました。うれしかったです。
――アニメの主題歌をよく聴いていたということですが、オープニングやエンディングにはどのような役割があると感じていましたか?
楓華 オープニングはとにかく明るく元気に「ドカーン!」という感じで、エンディングは優しさや温かさを感じる曲が多いなと思っていました。作品を見終わったあとに聴くものだから、より本編に関連させていかなきゃという思いがありましたね。
――では、今回書きおろしされたエンディング・テーマ「普通」は、どういったところからインスピレーションを受けて作っていったのでしょうか?
紬衣 楽曲を作るにあたり、キーワードになりそうな言葉を探しながら原作を読んでいたのですが、そこで見つけたのが“普通”という言葉でした。主人公・坂本(太郎)と、妻の葵さんが、結婚記念日にフェリーでご飯を食べる場面があって。そこに、いろんな殺し屋が坂本を狙いに来るんです。夫婦の大切な時間なのに、どうして2人の時間が取れないんだろうともどかしくなるシーンなんですが、そこで葵さんが「あなたと過ごす 普通だけど普通じゃない日常が大好き!」と言うんです。そのセリフが私の中ですごく印象に残って。確かにこの生活って、坂本からしたら普通の生活だけど、はたからみたら普通じゃない。人それぞれの“普通”ってどこにあるんだろうと考えさせられました。その疑問や私なりの答えを、リリックに落とし込めたらと思いました。
――作品から引き出されたワードが“普通”ということもあって、アニメに添った歌詞でありながら、「SAKAMOTO DAYS」を知らない人でも共感や理解ができる歌詞だと感じました。そこのバランス感は意識していたのでしょうか?
紬衣 はい。エンディング・テーマを担当させてもらうことはすごくありがたいですし、うれしいことですが、もともとConton Candyを聴いて応援してくださっている方に「アニメのタイアップをやって、何か変わっちゃったね」と思われるのは違う。私たちはもともと恋愛を題材にした楽曲が多いので、今回は葵さんが坂本を思う気持ちに着目して、普段自分が描くラブソングから遠ざからないようにということは考えていました。
――「SAKAMOTO DAYS」のエンディングだからこそ入れたフレーズなど、特にこだわった部分があれば教えてください。
紬衣 サビの最後に「ただ隣で笑っていて」というフレーズがあるんですが、心の声を表現したくて「“”」で囲っているんです。ただし、最後だけは「」(カギカッコ)で囲っています。あまり言葉にしないというのも坂本の個性だなと思って「“”」にしていて、でも最終的には言葉にして伝えるという坂本の人柄を表現してカギカッコにしました。この歌詞はお気に入りです。
――耳で聴くだけでなく、歌詞もしっかり読んでほしいですね。
紬衣 はい!
最初のデモが“普通”じゃなかった? 楽曲づくりの裏側に迫る
――トラックやサウンド面の制作はどのように進めていったのでしょうか?
紬衣 私が「こういう感じにしたい」というのを2人に投げたのですが、最初はもっとロック調の疾走感のある感じでした。でも3人で話し合って、「もうちょっと作品の温かさを出したいね」ということから、アコギを入れたりして温かさを出していきました。
彩楓 ドラムは特にイントロを、「ツクツクツク」みたいな疾走感ある感じで作っちゃっていたので、優しい音色やフレーズに変えて、頭から温かさを出すように工夫しました。
――ドラムで言うと、リズムの展開が次々に変わったり、変拍子が入っていたりもしますよね。
彩楓 はい。そもそも、つむ(紬衣)が作ってきた最初のデモが“普通”じゃなかったんですよ(笑)。
紬衣 ごめんなさい(笑)。
楓華 しかも、その変拍子にコーラスが乗っているので、私もコーラスをしながら「普通じゃないな」と思っていました(笑)。そんなところも含めて、いろんな挑戦ができた1曲ですね。自信作です!
――ボーカルや演奏など、レコーディングで意識したことを教えてください。
彩楓 ドラムは、柔らかいイントロから、変拍子に変わって、どんどんドラムの音がタイトになっていって、サビでドンっとくる、その展開感を味わってもらえたらうれしいです。
楓華 ベースで言うと、私たちの楽曲では珍しくベースソロが入っていまして。このフレーズは電車の中で思いついたものなんですが、曲にマッチしたものが入れられたなと思います。
紬衣 今までは、歌詞より歌声を全面に出している感じがあったんです。自分の声がまずあって、そこに歌詞が追いついてくるみたいな。でもこの曲は逆で、歌詞にどう歌声を乗せて、どう表情をつけていくかを考えてレコーディングしました。特にBメロはだんだんメッセージ性が強くなっていくので、熱量をどんどん足していったり、2番の<言葉だけじゃ伝わんないの?>は不安な様子を出すために裏声を使ってみたり。言葉に寄り添ったボーカルレコーディングをしました。
――その考え方の変化はどうして起こったものなのでしょうか?
紬衣 今までは自分の実体験を歌詞にして歌っていたので、たぶん1を伝えようとするだけでも50くらい出ていたんです。だけど、今回は自分じゃない別の人の人生を描いているので、「ちゃんと2人の像を見せよう」と意識しないと伝わらない気がしました。だから自分が思っている以上に、伝える気持ちを持たないといけないなと思いました。
――今回のその発想の転換は、今後の楽曲作りやレコーディングにも活きそうですか?
紬衣 はい。もっといろんな着眼点で歌詞を書いてみたいなと思いました。新たな扉を開いたような感覚です。
メンバーの“隠れた能力”は三者三様! 心を読める、「朝倉シン」がいる!?
――そんな「普通」が彩るアニメ「SAKAMOTO DAYS」。皆さんはこの「SAKAMOTO DAYS」という作品のどのようなところに魅力を感じましたか?
楓華 私は、坂本の愛です。いろんな登場人物が出てきますが、みんな坂本のことが好きだし、信頼しているから集まってくる。すべて坂本の愛があるからこそだなって思って。坂本の愛にやられちゃいました。
彩楓 キャラクターがみんな魅力的ですよね。仲間だけじゃなくて、敵の殺し屋にも過去があったりして。私は眞霜平助が好きになっちゃいました。素直で熱くていいなって。
紬衣 私は、緩急やギャップが面白いなと思いました。戦うシーンはカッコいいし、でもふくよかに戻ったら頬杖ついたり横になってポテチを食べたりしていて。完璧に見えるキャラクターにも、抜けているところがあると応援したくなるし、そこが沼のきっかけだと思うんです。そういうところが全キャラにあっていいなと思ったし、緩急があるから、読んでいても全然飽きなかったです。
――坂本太郎は元殺し屋であることを隠して、平和な日常を過ごします。これにちなんで、他メンバーの隠れた能力や意外な一面を教えてください。
紬衣 ベースの楓華は、楽曲を作るときにキーやリズムを掴むのが早いです。たぶん私が作る曲は“紬衣節”みたいなものがあると思うんですが、そういうものをすぐ掴んで「こうでしょ」って理解してくれるので助かっています。
楓華 ありがとうございます!
彩楓 もしかして……心を読んでる?
楓華 うん! ……シン(朝倉シン)だ!(笑)
彩楓 つむの能力は、誰とでも話が合うこと。知識の幅が広いんですよ。芸能人や、音楽、映画……どんな話が出ても「知ってる!」と言って話ができるから、誰とでもすぐ仲良くなれる。すごいなと思います。
紬衣 インプットの塊なんで(笑)。昔から、良い意味でも悪い意味でも流されやすいところがあって。友達が好きって言っているものを私も追いかけて、見たり聴いたりしていたんです。
楓華 めっちゃいい友達だ!
紬衣 共通の話ができたほうが楽しいじゃないですか。だから自然とインプットする癖がついたんだと思います。
楓華 彩楓は、おいしいご飯を見つけるのがうまい! チームの中で「食大臣」って言われているんですよ。
紬衣 食べることが好きなんだよね!
楓華 好きな言葉は?
彩楓 「いただきます!」(笑)
楓華 ライブの遠征先で「ご飯、どうする?」って話になると、彩楓が適当に「ここどう?」ってお店を見つけてくれて。行ったお店がすごくおいしいんです。
紬衣 ご飯に限らず、調べ上手な気がします。近くのガソスタとか、「近くの○○」っていうと、すぐ「あるよ」って見つけてくれる(笑)。
――ちなみに、おいしいご飯屋さんを見つけるコツは何なのでしょう?
彩楓 えー、何だろう……勘です(笑)。
来年の抱負に、「ロックバンドという自分たちの軸はぶれさせず、より強くなる1年に」
――もし、ご自身が少年漫画の主人公だったら、憧れのシチュエーションはありますか?
――最後にバンドの活動について聞かせてください。2024年は様々なフェスやイベントに出演したり、初のフルアルバム「melt pop」をリリースしたりと、バンドにとって大きな出来事の多い1年だったかと思いますが、どんな1年でしたか?
紬衣 本当にいっぱいライブをさせてもらったなと思います。中でも春フェスや夏フェスなどフェスやイベントに出させてもらうことが多くて、「初めてConton Candyを見ました」というファンの方とたくさん出会えた1年でした。他のバンドのライブもたくさん見させてもらって、学びも多かったです。
彩楓 初めてのワンマンツアーを6月から7月にかけて開催して、初のアルバムを10月に出させてもらって。初めてだらけの1年でした。楽しかったけど、勉強することもたくさんあって、いい1年でした。
楓華 さっき言っていたように春フェスから始まって、夏フェスに出て、初めての自主企画イベントを開催して、アルバムを出してまたツアーを回って、タイアップのお話もいただいて。すごく充実した年でしたし、だからこそ来年はもっと頑張りたいなと思える一年でした。
――では2025年はどんな1年にしたいですか?
紬衣 ロックバンドという自分たちの軸はぶれさせず、しっかり曲も作って、より強くなる1年にしたいです。来年4月4日(金)に東京・Zepp Shinjuku (TOKYO) でワンマンライブを開催することが決まっているのですが、その日はターニングポイントのような日にしたいと考えているので、まずはその日に向けてめきめきと活動します。「SAKAMOTO DAYS」でConton Candyを知ってくださった方も、ワンマンライブに来てくださるとうれしいです!
◆取材・文=小林千絵
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