『地面師たち』(Netflix)

『ふてほど』『地面師』『虎に翼』…年末年始におすすめ! 一気見したい注目ドラマ5選

2024.12.28 16:06
提供:ENTAME next

寒さと人混みを避けて家でまったり年末年始を過ごす人は多いはず。そんな人にはドラマの一気見がオススメだ。2024年に放送され、現在動画配信サービスで配信中のドラマを5本紹介したい。先に謝っておくと、普段ドラマを見ない人向けの選出になっている。ドラマ通からすれば「定番どころばっかじゃん!」と眉を顰めたくなるかもしれないが、その辺りはご容赦願いたい。

1本目は現在、「NHKオンデマンド」や「U-NEXT」などで配信中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』。日本初の女性弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルに、法曹界に飛び込んだ猪爪寅子(伊藤沙莉)の人生を描く。放送後には毎回SNSで感想が飛び交うほどの話題作であった。

女性が法曹界で活躍することは前例がなく、寅子をはじめ進学先の明律大学女子部の学友はさまざまな壁にぶつかる。寅子が無事に弁護士として働き始めた後も、女性ということを理由に依頼が来ず、“女性は家庭を守ることが役割”という空気に気圧されて心がボキボキに折られるなど、かつての女性の生き辛さが描かれるシーンが多い。とはいえ、寅子たちが生きている数十年前と、今現在の女性に対する価値観があまり変わっていないことにも困惑する。

本作が描くのは女性の苦境だけではない。戦争の愚かさや、声を上げた人々の努力が今の社会の豊かさを支えていることなど、今を生きる私たちが胸に留めておかなければいけない教訓をいくつも示す。朝ドラは全話視聴するのに時間を要するが、『虎に翼』はテンポが良く、ストーリーも魅力的であるため一気見は全く苦にはならない。

2本目は「Netflix」や「U-NEXT」などで配信されている、宮藤官九郎が脚本を務めた『不適切にもほどがある!』(TBS系)。1986年から2024年にタイムスリップした中学校の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が、昭和と令和のコンプライアンス感覚の違いに戸惑いながら奮闘する姿を描いた作品だ。

市郎は娘に「起きろブス! 盛りのついたメスゴリラ!」と声をかけたり、野球部の練習中に「水飲むな、バテるぞ」と指導したりと、令和の価値観では許されない発言を繰り返す。昭和の“普通”の非常識さに笑いつつも、令和の“普通”も過剰に映る場面があり、両時代を皮肉りながら笑いに昇華させる。ただのコメディに留まらず、「コンプライアンスの本質とは?」を考えさせられる社会派作品でもあり、宮藤の相変わらずのセンスが光る。

また、宮藤脚本のドラマで言えば、2024年9月に放送された「TELASA」や「U-NEXT」などで配信されている『終りに見た街』(テレビ朝日系)も見ると、『不適切にもほどがある!』の面白さをより噛みしめられるかもしれない。こちらは現代のテレビ脚本家・田宮太一(大泉洋)とその家族、さらには太一の旧友・小島敏夫 (堤真一)とその息子・新也(奥智哉)が1944年にタイムスリップし、戦時中の価値観に直面する物語だ。ストーリー終盤に子供たちが軍国主義に感化され、新也が多様性を否定する場面はとても印象深い。どちらも時代を超えて価値観を問う興味深い作品であり、時間があれば併せて視聴してほしい。

3本目は『アンメット ある脳外科医の日記』。子鹿ゆずる原作・大槻閑人作画の同名漫画を原作とし、「Netflix」「U-NEXT」「Prime Video」などで配信中だ。不慮の事故で脳を損傷し記憶障害を抱えた脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)が、患者を救いながら自らの障害と向き合う医療ヒューマンドラマだ。

原作ではアメリカ帰りの凄腕医師・三瓶友治(若葉竜也)が主人公だが、ドラマではミヤビが主役に据えられている。この大胆な原作改変により、ミヤビ目線で描かれるドラマと友治目線の漫画、それぞれ異なる魅力を味わえる。制作陣の原作へのリスペクトと「より良いドラマを作りたい」という意欲が伝わる作品だ。また、映画のような質感の映像美も魅力的で、テレビ画面越しでも引き込まれる。

特に注目したいのが若葉竜也の演技だ。若葉はテレビや映画の出演はこれまで多いが、メインを飾ることはあまり多くなかった。そんな若葉をたっぷり堪能できる内容となっており、セリフを発さないながらも表情や目の動きで感情を表現する精細な演技を随所に見せている。じっくりと物語に集中したい時にオススメの1本だ。

4本目はNetflixシリーズの『地面師たち』。2017年に実際に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」をモデルにした新庄耕の同名小説を原作とする本作は、個性が強烈すぎる地面師集団のキャラクターたちが大きな魅力だ。紳士的でありながら狂気を漂わせるリーダー・ハリソン山中(豊川悦司)、胡散臭い関西弁で独特の存在感を放つ法律屋・後藤義雄(ピエール瀧)、さらに“キマった”言動に注目せざるを得ない情報屋・竹下(北村一輝)など、全員が物語を引き立てる。

一方、地面師集団に騙される大手不動産企業「石洋ハウス」の開発事業部部長・青柳隆史(山本耕史)の存在も秀逸だ。「積水ハウス地面師詐欺事件」がモデルになっており、青柳がとんでもない詐欺に引っかかることは言わずもがな。バッドエンドの未来がわかっているものの、「どのような結末を迎えるのか」と最後まで手に汗握らせる演技はすさまじい。また、音楽を担当した石野卓球(電気グルーヴ)のBGM が疾走感や緊迫感をさらに盛り上げ、物語に没入感を与えている。

テンポの良い展開と緊張感あふれるストーリーで、一気見に最適な作品である。まとまった時間がある際にぜひ視聴をおすすめしたい。

最後に紹介するのは、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』。「U-NEXT」で配信中の本作は、練馬ジム作の同名漫画を原作に、昭和堅気の主人公・沖田誠(原田泰造)がゲイの大学生・五十嵐大地(中島颯太)と関わりながら価値観をアップデートしていくホームドラマだ。

当初、誠は高校生の息子・翔(城桧吏)が大地と仲良くすることに嫌悪感を示し、「ゲイがうつる」とまで発言してしまう。しかし、壁にぶつかりながらも変わろうと努力する誠の姿は微笑ましく、同時に胸を打つ。大地も上から目線で講釈を垂れるのではなく、誠に寄り添う態度を見せるため、説教臭さを感じさせないのも魅力だ。

物語が進むにつれ、セクシャルマイノリティの葛藤や社会での立ち位置が丁寧に描かれるが、それだけではない。妻の美香(富田靖子)が作った料理を家族が“当たり前”のように食べることにモヤモヤしたり、翔が以前所属していた野球部の部員に女子生徒の“品評会”に付き合わされることに嫌悪感を覚えたりなど 、日常に潜むモヤモヤも丁寧に描いている。一見ユニークなタイトルに敬遠されがちだが、現代社会の課題を優しく問いかける、ぜひ見てほしい作品である。

今回紹介したドラマを見て、英気を養ってもらえればと思う。

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