SASUKEアイドル予選会で優勝・SKE48の伊藤実希ってどんな子?アイドル兼アスリートを目指して
今月13日、「SASUKE2024アイドル予選会」の模様が『SASUKE』公式動画にてアップされ、SKE48の伊藤実希が優勝したと明かされた。名だたるアイドルグループの猛者に競り勝った伊藤実希とは一体どんなアイドルなのか? 予選会を振り返りつつ、彼女の横顔に焦点を当てる。
TBSの人気番組『SASUKE』への出場枠を懸けた大会「SASUKEアイドル予選会」が開催されたのは10月7日のことだった。会場は千葉・柏市中央体育館。この地に集い、覇を競ったアイドルは12人。大会を前にした会見では、まだ緊張感に包まれてはいなかった。
だが、これまでの誇れるスポーツ歴を聞かれ、岩本理瑚(僕が見たかった青空)が「ソフトテニスを3年間やっていたのですが、全国中学生大会の東京都予選春夏4連覇と、関東大会2年連続5位でした」と答えた瞬間、他の出場者は明らかに動揺した。「これはお遊び気分で挑んだら恥をかく……」。どの顔にもそう書いてあった。
SKE48の10期生・伊藤実希の脳裏にも不安がよぎった。実は、伊藤はこの大会に向けた練習ができていなかった。この時期のSKE48は16周年コンサートに向けたレッスン漬けの毎日が続いており、「歌っている間に握力をつけるものを使ったり」(本人談)する程度で、本格的なトレーニングを積んでいた他の出場者から大きく後れを取っていた。握力を鍛えたくらいでは、この大会では勝てない。
伊藤「一番(練習が)できていないんじゃないかっていうくらい、まったくしていなくて。他の方が(会見で)『ジムに通いました』とかおっしゃっていたから、自分はレッスンしかしてないと思って焦りました。正直、今日も睡眠不足で迎えていました」
他の出場者も別の仕事をこなしながら練習してきたのだろうが、伊藤にとってはあまりにも悪条件だった。いくら「スポーツ基本なんでもできます」と自己紹介のキャッチフレーズで豪語していても、バスケットボール6年+陸上2年(専門は400mと800m)の経験があっても、フルマラソンを4時間29分49秒で走ったことがあっても、不安が消えることはなかった。
第一種目はビーチフラッグス。3位タイで10ポイント獲得。第二種目のシャトルランは4位で40ポイント。この時点で総合5位(50ポイント)だった。
伊藤はシャトルランを走った後、体調に異変を感じ、裏へ駆け込んだ。それでも何食わぬ顔で体育館に戻ってきた。体調不良は観客の誰も知らない。
伊藤が注目を集めたのは、無限ジャンプ。回転するバーを可能な限りジャンプし続けるこの競技、伊藤は144回を跳び、その時点でトップに立ったのだ。さっきまで体調が悪かった者の結果とは思えない。倒れこんでもなお笑顔でいる伊藤からは底知れぬスタミナを感じさせた。結局、1位は風見和香(私立恵比寿中学)に譲ったとはいえ、この競技では2位。総合順位は3位(100ポイント)に上昇した。
運命が決まる最終種目はSASUKEタイムレース。最後に「そり立つ壁」が待っている、SASUKE本選を模した競技だ。これを伊藤は3位で終え、結果を待つばかりとなる。
メンバーが一列に並び、総合順位が3位から読み上げられる。3位でも2位でも名前は呼ばれない。伊藤の名前が呼ばれたのは、1位としてだった。伊藤はこれ以上ないほど目を丸くして驚き、自身の応援団に向かって拳を上げた。
伊藤「2位で呼ばれなかったとき、4位だったらどうしようと不安だったんですけど、1位としてトロフィーももらえて、ほんとに1位になったんだなって」
総合力に長けていた伊藤は1位に輝いた。この上なくうれしいはずなのに、どこかふわふわしていた。
伊藤実希は愛知県の出身の22歳。地元のSKE48に加入したのは2019年。高校2年のときだった。SKE48を受けるくらいだから、アイドルは好きだった。
バスケットボールと陸上を経験してきた体育会系だった。身長は164㎝。長身と運動能力を活かして、精力的に活動していく予定だった。
しかし、活動を始めるとほぼ同時に世の中はコロナ禍に突入。ステージに満足に立てない日々が続いた。コロナ禍が明けて活動が再開されたまではよかったが、圧倒的に先を走る同期がいた。伊藤はアイドルとして悔しさを味わった。
伊藤は、このSASUKEアイドル予選会への出場が決まった日からずっと燃えていた。「1位じゃなきゃ意味ないし、1位じゃなきゃ嫌だった」。結果が知れ渡った翌日の配信でそう語った。大会終了直後にはこんな本音を吐露している。
伊藤「始まる前は優勝するぞっていう気持ちではいたんですけど、ほんとに優勝できるかわかんなくて。いい結果が残せていなかったので、正直ダメなんじゃないかと思ってたんですけど、自分の負けず嫌いさが最後の最後に前面に出て、負けず嫌いさがこの結果につながったのかなと思います」
負けず嫌い。伊藤が自身を表すキーワードとしてよく使う言葉だ。スポーツをやってきたからだろう、負けたくないのだ。
伊藤「シャトルランは本気で1位を獲れると思ってたので。そこで落とした瞬間、本気で落ち込んで、悔しい気持ちでいっぱいでした」
総合優勝はしたものの、いずれかの種目で1位に輝くことはできなかった。この事実が伊藤の心に影を落としている。
伊藤「ほんとにいつもそんな感じで。悪く言えば中途半端で、よく言えば平均を取れる。今日はいい感じでポイントでうまくいったけど、ここにきて平均なのかという悔しさはちょっとあります」
とはいえ、優勝したのは伊藤だ。胸を張ればいい。優勝の記念撮影で隣にいたのは、SASUKEのレジェンド・山田勝己。自分の姿が全国ネットの人気番組に映る。人生は確変に突入した。
「自分が自分じゃない感じ」
伊藤は先日の配信で今の自分をそう表現した。それはそうだ。伊藤はSKE48のシングルを歌う選抜メンバーになったことが一度もない(27thシングル「恋落ちフラグ」は全員歌唱)。つまり、選ばれし精鋭になった経験がない。選抜に入ると人生が変わる。見える世界が違ってくる。多くの選抜メンバーがそう語るが、伊藤はその経験をしたことがない。伊藤は他のメンバーとは違うルートで山を登り始め、違う景色が視界に入ってきた。「自分が自分じゃない」とは、初めて見た景色に対するとまどいだろう。
伊藤が目指しているものは、「アイドル兼アスリートと呼ばれること」だ。去年もSASUKEのオーディションに参加しているが、出場には至らなかった。今年は東京マラソンを完走した。今回の予選会でようやく理想の自分が見えてきた。伊藤が得意とする競技は中・長距離だ。これからのアイドル人生も同じ。負けず嫌いを携えて、これからペースを上げ、巻き返していく。そんな青写真を描いているはずだ。
体力をほとんど使い果たした予選会を終え、1泊してから名古屋に戻った。伊藤を待ち受けていたものは2時間の劇場公演だった。これがSKE48だ。
12月25日、『SASUKE2024 第42回大会』が放送される。番組初のクリスマス決戦に伊藤は出場する。SKE48を背負ってではない。アイドル界の代表としてだ。伊藤実希の人生はもう一度確変に入れるだろうか。
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