1stアルバム『解放』をリリースする青山なぎさ

「自分が納得するものを妥協せずにやりたい」全10曲の作詞を手がけた青山なぎさの1stアルバム

2024.10.16 18:30
1stアルバム『解放』をリリースする青山なぎさ

今年5月16日、自身の誕生日にアーティスト活動の始動を発表すると同時に、初のオリジナル曲「解放」を配信した声優・青山なぎさ。そんな彼女がすべての楽曲で作詞を手がけ、楽曲やミュージックビデオ、衣装などでセルフプロデュース力を発揮した1stアルバム『解放』が、10月16日にリリースされた。

子供の頃からクラシックバレエを学びながらも尾崎豊やONE OK ROCKのほか、OASISやGREEN DAYなどの洋楽も好きと公言し、ミュージカル鑑賞やクラシック音楽を聴くことも欠かせないという、さまざまなジャンルの音楽から影響を受けた等身大の彼女の魅力が、このアルバムの中にはぎっしりと詰め込まれている。インタビューではアーティスト活動を始めるきっかけからアルバム制作の過程、『解放』というタイトルに込めた思いなどをじっくり語ってもらった。

最初から「ライブをやる前提で」とアルバムをつくる方向に傾いたんです

──アーティスト活動のお話はいつ頃、どういう形で決まったんですか?

2023年のバースデーイベントをBillboard Live(OSAKA・YOKOHAMA)で開催させていただいたとき、生バンドでカバーライブをさせていただいたんですが、原曲のイメージを大切にしつつも自分なりの歌い方を取り入れることが楽しくて、「自分のオリジナル曲だったらもっと好きな感じで歌えるし、音楽を通して自分を表現するのもいいかも」と思うようになりました。所属事務所の社長さんからも「アーティスト活動をやってみたらどう?」と助言をいただいて、「やりたい」から「やる」に気持ちが切り替わり、(2023年)11月から本格的にアルバム制作の話が進んでいきました。

──いきなりアルバムっていうのも、かなり気合いが感じられますよね。

本当はシングルでもよかったのかもしれないですけど、シングルってだいたい(収録される曲数が)2、3曲じゃないですか。そういう形で作品をお届けし続けていたら、「ライブをするまでに何年かかるんだろう?」と気になってしまって。私はなるべく早く皆さんの前で音楽を届けたいという思いがあったので、だったら最初から「ライブをやる前提で」とアルバムをつくる方向に傾いたんです。その流れで、まずジャズテイストの「解放」をリード曲として今年の誕生日に発表させていただいて、続けて声色も曲調もまったく系統の違う応援ソング「キミと」をリリースすることで、聴いてくれた人に「次はどんな曲が来るんだろう?」とワクワクしてもらいたいと思いました。

青山なぎさだからこその考えを歌詞に含められたらいいなと思いながら作詞しました

──そういう戦略があったんですね。「解放」のミュージックビデオではコンセプトや着ている衣装が青山さん発信でしたが、アルバムの楽曲選びにもご本人の意見が反映されているそうですね。

はい、10曲すべてコンペで決めさせていただきました。作曲者の方の名前を見ずに音だけを聴いて、「これがいい」とたくさんの中から選ばせていただいて。「私が歌うんだったらDメロの部分をバッサリカットしたいです」「サビが2周しているところを1回に減らしたいです」とか「曲の長さをもうちょっと短くしたいです」とかいろいろお伝えして、一緒につくっていくという形でやらせていただきました。

──大元になるネタとして楽曲をいただいて、そこから青山さんが歌うためにカスタマイズしていったと。プロデューサー気質が強い方なんですね。

私、これがセルフプロデュースだということにまったく気づいていなくて。ほかのアーティストさんがどうやって曲をつくっているのか全然知らなかったので、「自分が歌うんだったらこうしたいな」っていうことをただお伝えさせていただいただけなんです。せっかくやるなら自分が納得するものを妥協せずにやりたいと思って、今回は作詞も全部自分でやらせていただいたんですけど、それも伝えたいことを自分の言葉で直接伝えたほうが応援してくださる方の心にも届きやすいんじゃないかなと思ったから。今までのイベントでのMCとかラジオで自分が話した言葉を一部使ってみたり、青山なぎさだからこその考えを歌詞に含められたらいいなと思いながら作詞しました。

──そういう思いが込められた作品を青山なぎさ名義で発表するということは、ご自身に対する責任も生じてきますよね。

そうですよね。私は自分が納得できるものじゃないと、リリースした後で後悔するんじゃないかなと思っていて。私はなるべく長く歌える曲、長くファンの人が楽しめる曲を届けたくて。そういう意味でも歌詞で使う言葉や表現についてはいろいろ考えましたし、特定された状況にいる方だけじゃなくてどれだけ多くの方に共感してもらえるか、客観的に物事を見た歌詞を書けたらいいなといろいろ意識しました。

常に何か新しい自分を探して生きていることを実感したい

──アルバムやリード曲のタイトルにも選ばれた「解放」は今回のプロジェクトにおける大きなキーワードにもなっていると思いますが、この言葉にはどのような思いが込められているんでしょう。

新しくアーティスト活動を始めたり、作詞したりすることで、新しい私を解放してもっと皆さんに知ってほしいという気持ちがひとつ。あとは、自分自身の葛藤を解放させるという意味も込められていて。最近の私やアーティスト活動を目指し始めた頃の葛藤だけでなく、中高一貫の学校に通っていた頃に新しい環境に行きたいと考えて別の高校に進学しようと思った頃の思いも込められているんです。「解放」のDメロに〈茨の道で立ち尽くす日も〉ってフレーズがあるんですけど、この〈茨の道〉という言葉を知ったのが中学3年生のとき。親から「この先の人生、平坦なものではないぞ」と言われても「それでも私は茨の道を進むんだ!」って宣言したんです。それを「あの言葉、この曲に使えるかも」と思って取り入れたんです。

──安定した世界よりも、あえてそういう道を選んでしまうタイプなんでしょうか。

茨の道大好き人間なんですよ(笑)。なので、常に何か新しい自分を探して生きていることを実感したいという意味では、「葛藤」は自分のことを指した言葉なのかもしれませんね。

「解放」と「キミと」は私のアーティスト活動における大きな指針かもしれませんね

──「解放」の対極には「束縛」や「閉鎖」という言葉がありますが、青山さんの中でなかなか抜け出せないこと、克服できないものって何かありますか?

「解放」の中に〈優等生〉って言葉が出てくるんですけど、私は全然優等生じゃないのにそう見られがちな人生を送ってきたんですね。そのことで得することも多いんですけど、「あなたはちゃんとできる子だよね?」っていうレッテルを最初から貼られることで、それに応えなくちゃいけないと縛られてしまうこともあり、解放できていないかもねと友達からよく言われます。だから、このアーティスト活動はただ真面目で優等生なだけじゃない、いろんな青山なぎさを知ってもらえる機会にもなるんじゃないかと思っています。

──先ほど話題に出た「キミと」には、応援してくれる方々への思いが綴られています。

やっぱり応援してくださる方、支えてくださるスタッフさんがいないとこういう活動もできませんし。自分の芯は持ちつつも感謝や初心を忘れずにいきたいなということで、「解放」の次に(歌詞を)書きました。そういう意味では、「解放」と「キミと」は私のアーティスト活動における大きな指針かもしれませんね。

本当なら修正されてしまうところをあえて何もいじらないでほしいとお願いした

──個人的には「Addicted to you」がめちゃめちゃツボでした。これ、歌うのは相当難しくないですか?

えげつなく難しいです(笑)。曲を聴いた瞬間にめちゃくちゃおしゃれだなと思って「これやりたいです!」と言ったものの、いざ歌詞を書こうとしてメロディにじっくり耳を傾けると「これは人間が歌う音階なのか?」って、それぐらい高低差が激しい楽曲で。しかも、キャラクターを背負った曲だと仮歌という指針となる歌い方が存在したんですけど、今回に関してはまず私が歌わなければ何も始まらないし正解もわからない。なので、レコーディングではいろんなパターンで録らせていただき、時間をかけて完成させました。

──ピアノバラードの「そよ風」は音数が少ない分、歌に対する比重がかなり大きな1曲です。

この楽曲はピアノの方と一緒にレコーディングをしたので、リズムがちょっとズレているところがあるんですよ。そういう意味では、生の臨場感をより楽しめるんじゃないかと思います。

──その若干のズレっていうのが絶妙なスイング感を生み出していて、そこが心地よさにつながったと思います。

感情を重視して歌ったんですけど、本当なら修正されてしまうところをあえて何もいじらないでほしいとお願いして。そのぶんレコーディングで納得いくまで録らせてもらいました。なので、最初に予定していた時間よりも大幅に延長していただいて、修正なしで完結できるクオリティの歌を心がけました。

何事も一つひとつ丁寧に向き合っていきたい

──そこから「wake up」へと続く流れは斬新ですよね。

一気に流れが変わりますしね(笑)。がなりを入れて激しく歌うことに関しても、私が声優活動をする前の歌い方に近いと思っていて。久しぶりにこの歌い方ができて楽しかったですね。

──「Voice」みたいなデジタル系の楽曲も、バンドサウンド中心の本作では新鮮でした。

1曲はこういうサウンドの曲が欲しかったですし、声にもエフェクトをかけてほかの曲とはまったく違うものをつくりたかったんです。この曲は一番時間をかけてつくったんですよ。というのも、英語のフレーズは私が自分で調べて書いたものなんですけど、本当にそれがネイティブなものかどうか不安で。現地に住んでいる方や帰国子女、英語が得意な友達とかいろんな人に確認してもらったりと、そこにも時間を割いたんです。特に、私のファンには海外の方もたくさんいらっしゃるので、そういう方が聴いたときに「この人は英語、間違ってるよ?」って思われたくないですし、スッと頭に入ってくるフレーズがいいなと思ってたくさんの方にご協力いただきながら完成させました。

──ここからの音楽活動における基盤となる1枚ができたんじゃないかと思いますが、ここで得た手応えをもとに今後どんな活動をしていきたいですか?

リリースイベントを何度かやらせていただいてファンの方の表情を見たときに、「こんなに楽しそうな顔をして聴いてくれるんだ」ってことがわかってうれしかったので、まずはいろんなところでライブができるようになりたいですし、加えて日本を飛び出してライブができるような人にもなりたくて。そのためにも何事も一つひとつ丁寧に向き合っていきたいなと思います。

(取材・文/西廣智一)

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