

新進気鋭の映画スタジオ「A24」はなぜ凄い!? アカデミー賞常連、話題作が続く理由【有村昆が解説】
アリ・アスター監督の『ボーはおそれている』が大きな話題となっている。制作は気鋭の映画スタジオA24だ。A24といえば、第95回アカデミー賞では、A24が手掛けた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞・監督賞・脚本賞をはじめ7部門で受賞するなど、アカデミー賞の常連。なぜ、映画界でA24の躍進がめまぐるしいのか、有村昆が解説する。
『ボーはおそれている』、これがまた凄い映画です。アリ・アスター監督は、いい意味で頭おかしい。それにホアキン・フェニックスという、いい意味でヤバい役者が主演なので、かなり濃厚です。さらに上映時間が3時間もあって、その間、本当に嫌なことしか起こらないというか、不安な感覚がずっと続くというホラーともコメディともいえない作品に仕上がっています。
物語としては、ボーという中年男性が、実家にいるお母さんに会いに行くという話なんですが、その道中でいろいろなことが起こってぜんぜん先に進めない。しかも、お母さんが首がなくなった状態で発見されたという連絡が入って、ボーがいないと埋葬できないから早く帰ってこいと急かされる…。
アリ・アスター監督は『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』でも、イヤ~な描写を連発してましたが、今作は精神的にも責めてきます。
映画の冒頭で、ボーは精神科の先生から薬を飲むときに必ず水を飲むようにといわれます。でも、そういう時に限って水がない。蛇口をひねっても、修理中なのか1適も出てこない。仕方がないので、家の目の前にあるコンビニに水を買いに行くんだけど、街が荒れ果てていて、家を出るだけで危ない。それでもなんとか辿り着いて水を飲むんだけど、カードが使えなくなっていて、現金で払おうと思ったら小銭がない。それでモタモタと時間がかかってる間に自分の部屋に街の人たちが侵入して荒らされ放題に…と、悪い夢を見ているような、絶望的な状況が連続して起きるんです。
その後も、夢か現実がわからないようなトンデモない展開が続いて、最後のオチまで予想外なことしか起きないんですが、これこそがアリ・アスター映画だなと思いました。
この『ボーはおそれている』という作品は、A24というスタジオが製作・配給を手掛けています。ハリウッドでは比較的小さな規模の独立スタジオですが、個性の強い作品ばかりを生み出し、いまやアカデミー賞の常連となっています。
ハリウッド映画といえば、予算をたっぷり使って、コミックやゲームなどの既に人気のある原作を使い、有名俳優やスタッフを揃えて、宣伝も広告にもお金をかけて、世界中で売れるような作品を製作するというのが主流なわけです。
一方で、いわゆるインディペンデント作品と呼ばれる映画をつくるスタジオもあって、こちらはオリジナル脚本で、 渋めのキャストを起用して、できるだけ低予算でまとめていく。 このような独立系スタジオは、社会派ドラマやホラー、それに軽いコメディ映画などが得意なんですけど、A24もそういうタイプの作品を多く作っています。でも、ただのB級映画ではなく、アカデミー賞も受賞するような、今の時代に求められているセンスのある作品を送り出している。それも最初から賞を狙ってるような感じではなくて、ただ自分たちが面白いと思う映画を作っていて、それが賞レースの常連になっていったような感じなんです。
A24の一作目は、2013年に公開されたロマン・コッポラ監督の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』というコメディ系の作品です。それからハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』とか、ドゥニ・ビルヌーブ監督の『複製された男』などを製作して、評判を高めていきます。
僕は、この初期の頃だと『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』というトム・ハーディ主演の作品が好きですね。 舞台は車の中だけ、登場人物はほぼ1人というワンシチュエーションで、タイトル通り86分で終わる映画なんですけど、よく出来た、渋いドラマでした。
2015年にはブリー・ラーソン主演『ルーム』がヒットして批評家からも絶賛され、2016年には『ムーンライト』でついにアカデミー作品賞を受賞します。この『ムーンライト』は、黒人問題に貧富の差やLGBTの要素も入ってくきて、非常に考えさせられる内容。それでいて撮影もすごく綺麗で、新たな時代に突入したなと感じられる映画でした。
A24は、このようなオルタナティブな監督を発掘して、メインストリームに押し上げるような役目も果たしていて、『聖なる鹿殺し』のヨルゴス・ランティモス、『レディーバード』のグレタ・カーウィグ、『ヘレディタリー/継承』のアリ・アスター監督と次々とブレイクを果たしています。そして、2022年に公開された『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞など、7部門を受賞するほどの成功を収めました。
この年のアカデミー主演男優賞は『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーが獲りましたが、これもA24作品です。ある意味でスター再生工場というか、知る人ぞ知る古着店のような目利きのセンスがすごい。マーケティング重視ではなく、この俳優がいいと思って起用して、それでアカデミー賞も取っちゃうというのが粋ですよね。
これだけ凄い作品が並ぶと、だんだんA24というブランドに信頼が出てきます。ちょっとヘンな映画かもしれないけど、A24作品なら、なにかしら引っかかるものはあるだろうな、という期待が持てるんです。
昔でいうと、ミニシアターに行くような感覚ですよね。かつては、地域にあるミニシアターごとに信頼感があって、そこで上映されているのはオシャレな人たちが認めた映画なんだという感覚で、意味もわからず観ていたような所がありました。
これは単に映画を観るという行為だけでなく、その人のライフスタイルも映し出しているんじゃないかと思うんですよね。
例えば、僕はA24のグッズが欲しいなって思っちゃう人なんですよ。それはA24の世界観が好きで、それを身に着けている自分に酔いたい。普通の映画のTシャツを着てるよりも、A24ならちょっとセンスがいいと思われそう、というか。A24の映画を面白いと思える自分でありたいというか、A24のあるライフスタイルを送りたいっていうマインドですよね。
とはいえ、A24作品でも正直ハズレもあるんですよ。 個人的にぜんぜん刺さらなかった作品もあって、これ全然わかんないんですけど、みたいな作品もあります。
ただ、それもA24らしさというか、僕にはわからなかったけど、どこかの誰かには刺さってるんだろうなという気にさせられるんですよね。
これはやっぱりメジャースタジオには真似できない分野だと思います。あっちはやっぱり8割の人に面白いと思ってもらわなきゃいけないんですけど、 こっちは本当に好きな人に刺さる大人のエンターテインメントでいい。そこがA24作品の強さであり、面白さなのかなと思いますよね。
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