「赤ちゃんの頃はよく笑う子だったのに……」 笑顔が減る原因は?【脳科学者が回答】
【脳科学者が解説】愛想よくニコニコしていた赤ちゃんの笑顔が次第に減ってきたとしても、コミュニケーション不足や愛情不足を心配する必要はありません。感情の発達について、わかりやすく解説します。
Q. 赤ちゃんの頃はよく笑う子だったのに、あまり笑わなくなり、心配です。
Q. 「赤ちゃんの頃は、いつもニコニコと愛想がよく、よく笑う子だったのですが、成長とともに笑顔が少なくなってきたように感じます。
いつも一緒に過ごしているのが母親の私ばかりなので、コミュニケーション不足なのか、子どもが愛情不足と感じているのではないかと心配です。他の発達には特別不安な点はないのですが、このまま様子を見ても大丈夫でしょうか?」
A. 大丈夫です。いろいろな感情を獲得している「成長の証」と考えてください
私たち人間が顔に表せる感情は、大きく分けると、「うれしい・悲しい・怒り・驚き・恐怖または困惑・嫌い」の6種類です。最初に獲得されるのが、「うれしい」という気持ちを表す「笑顔」です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、未熟過ぎて一人では何もすることができません。誰かに助けてもらわないと生きていけないので、顔の筋肉を動かすことで周囲の人に気づいてもらうというコミュニケーション方法を、生まれつき身につけています。
赤ちゃん自身は「笑顔」の意味は分からないままに、顔をくしゃくしゃにしているだけかもしれませんが、大人は微笑んでくる赤ちゃんを「かわいい」と感じ、愛情を込めて面倒を見ようとします。
その体験を経て、赤ちゃんは再び笑顔を示し、自分の満足度を表現することを学んでいきます。こうして、赤ちゃんと両親を中心とした大人たちの絆が深まり、赤ちゃんは自立した大人へと成長する道筋がたつのです。
笑顔を通して、周囲との絆が深まると、成長段階は次に進みます。
いつまでも笑顔を振りまいて、周囲に甘えているだけでは生きていけません。自分の身を自分で守れるようになるためには、出来事に対して、適切な行動が取っていく必要があります。自分にとって、有益なものか害になるものかを、その都度、判断する必要が出てきます。
もし害になりそうだと感じたら、それを排除する必要がありますから、笑顔ではなく、怒りや嫌悪の感情を表さなくてはなりません。
ですので、通常の子どもの発達過程では、笑顔の意味を学び終わると、次のほかの表情へと学習は進んでいきます。赤ちゃんの頃に比べて笑わなくなったのなら、それは幼いながらに独立心が芽生えてきた成長の証です。
お子さんが無邪気に微笑んでくれなくなっても、「赤ちゃんを卒業して、次のステップへと成長してるんだな」と考えるとよいでしょう。幼いときに築かれた親子の絆は、そう簡単には消えません。安心してください。
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)
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