AKB48&=LOVEの転機は?衣装デザイナー・茅野しのぶ氏が解説「代表作になるかも」ファンの“悲鳴”に感化も…緻密な衣装作りに迫る【インタビュー前編】
2025.06.05 07:00
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6月5日に初の著書「アイドル衣装のひみつ~カワイイの方程式~」(学研出版)を発売したクリエイティブディレクターの茅野しのぶ氏(かやの・しのぶ)に、モデルプレスがインタビュー。前編では、AKB48や=LOVEの特色を反映した衣装作りやグループの転機となった衣装、印象的なファンからの反響に迫った。
AKB48、=LOVEら手掛ける衣装デザイナー・茅野しのぶ氏
茅野氏は1982年7月9日生まれ、埼玉県出身。服飾の専門学校を卒業後、AKB48の1期生募集ポスターを見かけ、マネージャーを募集していたことから「衣装さんもいないかも?」と考え当時の運営会社に直談判したことをきっかけに、衣装担当を務めることに。2013年に株式会社オサレカンパニーを設立し、AKB48の衣装総責任者及びクリエイティブディレクターに就任。2014年から2017年まではAKB48グループ総支配人、AKB48劇場支配人を務めていた。現在はAKB48のみならず指原莉乃がプロデュースする=LOVE、≠ME、≒JOYなどさまざまなアイドルの衣装や2.5次元舞台の衣装を制作しており、ファンからは厚い信頼を得ている。また、医療制服、学校制服、さらにはフェムテック商材まで、幅広く手掛けている。
茅野しのぶ氏、AKB48×=LOVE融合のドレスは“アイドルの理想”
― これまで衣装本は出されていますが、今回、本書を執筆したきっかけをお聞かせください。茅野:実はこれまで他の出版社の方からも「書籍を出しませんか?」というお話はあったのですが、私は裏方ですし、私自身にファンがいるわけではないので「売れないと思いますよ」と言っていたんです。今回も学研さんから何回かメールでお問い合わせいただいて、何回もお断りしていたのですが、何度も打診してくださったのでそんなに言っていただけるのであれば一度お会いして「本当にありがたいけど、売れないと思います」と断ろうと思っていました。
学研さんにお伺いしたところ、担当者の方がアイドルファンでうちの衣装もすごく好きでいてくださり、今まで私が出した書籍にたくさん付箋を貼ったり、インタビューを勉強したりしてくださっていたんです。その方は本を本格的に手掛けるのが初めてで、「こういう企画がやりたくて頑張ってきた」とお話されていて、若い方がこんなに情熱を燃やしてくださっているのであれば、私が秋元(康)さんにチャンスをもらった当時と同じように、やってみようかなという気持ちになりました。周りにも「私、芸能人じゃないから売れないと思う」と相談したのですが、沢山の方から「出すことに意味がある」と言っていただいたことも後押しになりました。
― オサレカンパニーさんが手掛ける衣装として代表的なグループがAKB48と=LOVEですが、2グループの衣装が融合した表紙のドレスがすごく素敵です。このドレスの制作秘話を教えてください。
茅野:私にファンがいるわけではないので私が表紙になっても面白くないと思い、この本を出すからこそできることをしようと思いました。いろいろな案が出たのですが、私がこの本のために衣装を作ることを提案したところ、担当者の方からも「それが1番いい」とおっしゃっていただき、制作することになりました。そこから、残布の中から衣装を作ろうと考え、衣装が置いてある倉庫に行き、必要なメーター数があるかどうかなどをもとに決めました。
デザインも、アイドルの子たちにフィッティングするときによく言われる“好きポイント”を取り入れています。スカートが前上がりで後ろが長いデザインがすごく人気で、肩が空いていて、フリルが胸元にたっぷりあって、キラキラしていて…と、メンバーが大好きな要素を詰め込んだ衣装になりました。今回、本を作るにあたっていろいろな方にご協力いただいたのですが、アイドルの子たちがいてこその本になったと改めて感じます。
― アイドルの理想が詰まったドレスなんですね。
茅野:そうですね。AKB48とイコラブ(=LOVE)の生地を混ぜることはこの先もないと思うので、この本じゃなければ作ることのなかったものに仕上がりました。双方(AKB48、=LOVE)のファンの方がどう思うか少し心配していたのですが、発表されたときの反響を見たら多くの方に喜んでいただけたようなので嬉しいです。
茅野しのぶ氏が考えるAKB48とイコノイジョイの違い
― AKB48とイコノイジョイ(=LOVE、≠ME、≒JOY)のグループの特色の違いはどのように捉えていますか?また、それをどのように衣装に反映させていますか?茅野:AKB48は大衆的で、ドラマチックでカオスだと感じています。だから、1つ1つのデザインや布の合わせ方が普通のアパレル製品ではないような、衣装っぽい感じで作っています。例えばチェックの衣装でも、いろいろなタイプのメンバーがいるように、1種類のチェックを使うのではなくいろいろなチェックを使うのですが、全員揃ったときにまとまりがあり、ファッション性があるようにしたいと考えています。同一テーマでバリエーションを組んでいくことが多いです。
イコノイジョイに関しては、イコラブ、ノイミー(≠ME)、ニアジョイ(≒JOY)でも少しずつ違うのですが、特にイコラブは本人たちと対峙すると本当に繊細なんです。「もっと自信持ったらいいのに」と思うのですが、その繊細さが、ガラスケースにしまいたくなるような女の子の儚さを感じるので、衣装にも細かい装飾や繊細なモチーフを使用して、ガーリッシュな雰囲気を大事にしています。ノイミーは青春感のある学生をモチーフにしたものが多いのですが、最近はウエスタンなど、テーマ性が強いものを入れるようになってきました。
また、イコノイジョイはメンカラ(メンバーカラー)があることもAKB48との違いです。AKB48は人数が多くメンカラがないので、同一テーマで形のバリエーションが多く、イコノイジョイはメンバーカラーを使った衣装やテーマ性を持った衣装が多くなっていると思います。
― 制服衣装についての部分で=LOVEはリアルクローズ(日常着)寄りというお話もありましたが、制服衣装以外でもリアルクローズを意識しているのでしょうか?
茅野:そうですね。=LOVEはイベントの会場を見ていると7.5割ぐらいが女の子なんです。女性ってライブ当日はもちろん、ライブに行く前に「これを着て、これを持って…」と考えて準備するのも楽しいじゃないですか?だから、そこから楽しめるように真似しやすい要素を入れることには気をつけています。彼女たちがライブに来たときに「自分たちもイコラブの一員」と思えたらいいなと思っています。あと、ファンの方はメンバーと同世代の若い女性が多いので、そのときのトレンドや少し先に流行りそうなものを入れることをイコラブでは特に意識しています。制服にチャームを付けたり、ルーズソックスなど、「これがもっとトレンドになりそう」と思うものを取り入れています。
AKB48の転機は「言い訳Maybe」茅野しのぶ氏が解説
― 日本や韓国などアイドルグループがたくさんいる時代の中で、オサレカンパニーならではの外せないこだわりや差別化ポイントをお聞かせください。茅野:ときめくことです。自分では“ステージ戦略型衣装”だと思っているのですが、例えばテレビに出るときの衣装、ミュージックビデオのときの衣装、ライブの衣装をあえて変えるようにしています。テレビは画角内で映えるものを考えていますし、ミュージックビデオや広告ではプロデューサーやクライアントさんがなぜ、いまこのグループを打ち出したいのか、どういう風に見せていきたいのかに重きを置いています。ライブに関してはファンのものだと思っているので、幕が開いたときに「このグループを推していて良かった」「想像以上の可愛さ」と思ってもらい、近くに来たときに「こんな細かい装飾がしてある」「1人ずつここは違うんだ」とときめくことを重要視しています。縫製工場では縫えない部分や細かい装飾、刺繍などを丁寧に作ることを心がけ、高級感や立体感を大事にして本人たちの魅力を倍増させています。プラス、女の子たちに「着たい」と思っていただけるような衣装作りを心がけています。
― これまで手掛けた衣装で、転機になったと感じる衣装をお聞かせください。
茅野:「言い訳Maybe」(2009)の衣装はAKB48の赤チェックの制服スタイルを確立したと感じます。=LOVEだと「Want you! Want you!」(2021)でガーリッシュな"THE イコラブ"というイメージができたことかと思います。そういうグループのイメージが確立されるタイミングって私自身がグループとしての方向性が見えたときだと思うのですが、同じようにメンバーも自分たちがこのグループでどのように活動していくべきなのかが分かり、合致した瞬間だと思うんです。それをプロデューサーが楽曲に置き換えてくれたり、そのタイミングでイベントを作ってくれたりしたので、すごく良かったです。
「言い訳Maybe」に関しては楽曲が良いのはもちろんですが、ミュージックビデオ撮影のときに晴天になり、緑の芝生と青い空に、赤いチェックや紺のブレザーが映えて、全ての条件が整ったと感じました。AKB48の勢いが来ているかも…というタイミングでのミュージックビデオ撮影だったのですが、モニターでチェックしているときに「これは代表作になるかも」と思った記憶があります。
それぞれのグループに特色があり、最初から掴めるときもあれば、グループが動いていき、本人とコミュニケーションを取る中で「こういう衣装いいな」というのが掴めるときもあるのですが、AKB48の場合は「言い訳Maybe」がそのすべてが合致した瞬間だと感じています。
茅野しのぶ氏が思う“いい衣装” 印象的なファンの反響も
― これまで手掛けた衣装の中で、アイドル本人やファンからの反響で心に残っているものをお聞かせください。茅野:全ての人に肯定されることは難しいので、「今回の衣装あんまり好きじゃないな」「こういう衣装だと思っていたのに」という方もいれば、「ピシッと好み」という方もいます。だから、ファンの方の7~8割ほどの人が「いい衣装だね」と言ってくれたら、それはいい衣装なのかなと思います。本人たちがステージで歌って踊るときに自信を持てる衣装であって、誰かの心に触れるようなもの。「AKB48のこの衣装可愛い」「=LOVEのこの衣装可愛い」とファンではない方も気になってくれることが理想です。
ファンの方はX(旧Twitter)のDMなどで「今回のこの衣装がすごく素敵でした」と長文で送ってくださったり、お気持ちを表明してくれます(笑)。特に印象的だったのは「どうしても推しメンにベレー帽を被せたい」というファンの方からのDMですね。ベレー帽の歴史をコピペして「アイドルグループにとってのベレー帽とは」「だから今、自分の推しに被せるべきだ」とプレゼン形式の文章を送ってきてくれて、すごく面白かったです。そのエピソードも含め、該当メンバーに「ファンの方がこう言っていて面白いと思ったから、立ち位置的にも今回の衣装にも合うと思うから被る?」と本人に聞いたら、「私、本当はベレー帽被りたくて」と言っていたので、ベレー帽を被ることになりました。ファンの方の意見を全て反映させるわけではありませんが、その方が送ってくれたメッセージがあまりにも面白くて、世界でこんなにベレー帽に情熱を燃やした人は1人ぐらいじゃないかなと思うくらいの熱量で印象的でした。基本的に髪飾りは「センターだからベレー帽」と立ち位置で決めているわけではなく、バランスや髪型に合わせて決めています。特にイコノイジョイは髪型から決めるので、指原さんや私など、ビジュアルをコントロールしている人たちが「今回はこういう髪型だからベレー帽にしよう」と話合っています。
あとは、=LOVEのコンサートを後ろで見ていたとき、女の子が「可愛すぎて死ぬ」と悲鳴を上げていて、その子のコメントがリアルで面白すぎて「もっともっと苦しむぐらい可愛い衣装を作りたい」と思いました。それでできたのが7周年コンサートの魔法少女衣装と猫衣装です。ファンの反応からデザインソースをもらうことも多いので、ライブは大体客席から見ており、「やっぱりこういうの好きなんだな」「こういうのは分かりづらいのかな」とキャッチボールしてまた次の衣装を作っていきます。特にライブの衣装は、ファンの方が「この日のために仕事を頑張って、学校も頑張ってきた甲斐があった」と会場に来て良かったと思える衣装をまとったアイドルたちを見せたいと思い、頑張っています。
特に、ライブの後やミュージックビデオが公開された後にはエゴサをして、ファンの方の感想を見ます。MVの考察が100%当たっている方もいれば、100%間違っているけど辻褄が合っている方もいて、「こういう考えがあるんだ」と見ていてすごく面白いです。いい衣装というのはファンの人が語りたくなる衣装だと思っています。今の時代、SNSの効果も大きいので、Xやインスタ(Instagram)などのSNSで「語りたい」「切り抜き動画で出したい」と思わせられるように意識しています。
★後編では、アイドルたちを近くで見ていた茅野氏だからこそ見られた素顔や峯岸みなみの卒業ドレス制作秘話を聞いた。
(modelpress編集部)
提供写真全て/布川航太
【Not Sponsored 記事】
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