Mrs. GREEN APPLE(C)モデルプレス

Mrs. GREEN APPLE、大森元貴の突発性難聴発症当時もツアー続けた理由 決断の裏に3人の絆「なおさら頑張るしかないでしょう」【モデルプレスインタビュー】

2024.12.01 12:00

モデルプレスの独自企画「今月のカバーモデル」で2024年12月のカバーモデルを務めた3人組バンド・Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)。インタビューでは、彼らが1番辛かった時期に前向きで居続けられた理由、そしてこれまでの歩みを経て導き出した三者三様の“夢を叶える秘訣”を聞いた。

Mrs. GREEN APPLE、音楽シーンを席巻した2024年

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ボーカル・ギターの大森元貴(おおもり・もとき)、ギターの若井滉斗(わかい・ひろと)、キーボードの藤澤涼架(ふじさわ・りょうか)からなるMrs. GREEN APPLEは2013年にバンドを結成し、2015年にメジャーデビュー。『青と夏』『点描の唄(feat.井上苑子)』など数々のヒット曲を生み出し人気絶頂の最中、メジャーデビュー5周年記念日となる2020年7月8日に「フェーズ1完結」として突如活動を休止する。

そして、約1年8ヶ月の休止期間を経て2022年3月に「フェーズ2開幕」として活動を再開。ここからさらなる“ミセスの快進撃”がはじまった。フジテレビ『めざまし8』テーマ曲の『ダンスホール』(2022)、映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌の『Soranji』(2022)、「第64回日本レコード大賞」にて大賞を受賞した『ケセラセラ』(2023)、アニメ『忘却バッテリー』(テレ東ほか)オープニング・テーマ『ライラック』(2024)などリリースされた楽曲は軒並みヒット。2024年11月時点で、ストリーミング累積再生数1億回を突破した楽曲が20曲に達するという偉業を達成した。

その功績や注目度の高さから、モデルプレスでは2024年の「今年の顔」にも選出。間違いなく国民的バンドへと駆け上がった彼らはこの活躍をどう感じているのか。バンドを結成して11年、変わらないメンバー間のコミュニケーションや貫いた信念からは爆発的な人気に繋がる納得の理由があった。

Mrs. GREEN APPLE、ヒットの実感はない

Mrs. GREEN APPLE(スタイリング:伊達めぐみ(MEGUMI DATE/UM)衣装協力:LAD MUSICIAN HARAJUKU/TEL:03-3470-6760)(C)モデルプレス
Mrs. GREEN APPLE(スタイリング:伊達めぐみ(MEGUMI DATE/UM)衣装協力:LAD MUSICIAN HARAJUKU/TEL:03-3470-6760)(C)モデルプレス
― 『ライラック』をはじめ、ストリーミング再生回数1億回突破した楽曲が累計20曲に。さらにスタジアムライブ成功など日本の音楽シーンを席巻されましたが、ご自身で実感はありますか?

大森:総じて実感はそんなにないですね。チャートやランキングもありがたいですし、活動している誇りや自信にはなりますが、だからといって制作が変わったり、取り巻く環境が変わったりすることはないので「なんか不思議なことが起きているな」と客観的な気持ちです。曲作りも「チャートで1位を取っているアーティストが次に出す曲って、どんなものだったら世間は面白いと思うかな?」と少し客観的に考えるくらいでしかないので「『ライラック』が1位だったから次はどういうものを作らなきゃ」というような焦った気持ちはないですね。

― Mrs. GREEN APPLEさんの楽曲は、大森さんが作詞・作曲・アレンジを手掛けられていますが、レコーディング前にはメンバー間でのコミュニケーションを欠かさないと伺いました。どのようにお話しされることが多いですか?

藤澤:バンドを組んだ当初から11年間、ミセスの音楽のやり取りは専門用語とか楽譜ではなくて抽象的なオノマトペのような言葉で共有するスタイルで、大森から「◯◯っぽく」「キラキラ」みたいな抽象的な表現で伝えられることが多いです。それは技術的なことではなく、マインドの部分だと思っているので感覚で汲み取っています。たとえ大森が意図していたことではなかったとしても、元貴の言葉を受け取った僕と若井が弾くフレーズやグルーヴが新しいエキスになれば、それがまさしくミセスの音楽になると思います。例えば「若者っぽく」と言われたら、学生の頃に先々のことは分かっていないけどがむしゃらに演奏していた感じとか、その頃に見ていた景色、気持ちを思い出したり「この時代背景の時きっと自分はこうだったよね」と語り合ったりして、それが気づいたら演奏に繋がっているんだと思います。

Mrs. GREEN APPLE、最新ライブの裏側

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― 特に多くの人に聴かれることによって、応援するファンの方の層に変化などはありましたか?

大森:ライブをするとファン層が分かりますね。お子さんを連れた方、「おじいちゃんおばあちゃんと来ました」という方、友達と来ている方もいれば、恋人と来ている方もいるというのは可視化されているので、以前よりすごく幅広い年齢層の方が来てくださっていると感じます。だからこそ、僕らはだんだん皆が平和に見られるライブをやるようになってきましたし、それを僕も望んでいます。「誰もに聴かれる音楽を作りたい」という思いでバンドを結成しているので、その気持ちが少しずつ積み重なっていって評価していただいているという感じがしています。

― ライブというと、10月に開催された“定期公演”『 Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』でも楽しそうに演奏されている姿が印象的でした。

若井:全曲『Harmony』のために新たなアレンジにしていてかなり音楽的なライブになったと思いますし、同じ会場で10公演やるという初の試みになりました。「僕たちが楽しんでいるところにお客さんが皆集まって一緒に楽しんでもらう」というのをコンセプトとして、純粋な音楽の楽しさやその瞬間瞬間の化学反応が肝になっていたので、毎回ソロも決まっているわけではなく全部アドリブだったんです。涼ちゃん(藤澤)が主軸になる日もあったり、ギターソロもロックテイストではないソロ回しもあったり、誰に(ソロを)振るかも全く決めずに演奏しました。それこそ『Harmony』の名前通り、その場の化学反応が現れて、ミュージシャン力が試される場だったと思います。今の僕たちだからこそできたライブでした。

藤澤:1曲の中でも表現の振り幅がすごく大きかったんです。原曲のグルーヴや雰囲気とはまた違ったものだったからこそ、歌詞の世界観や伝えたいことが色濃く出ていましたし、急にピアノと歌だけになる瞬間もすごく多くてメリハリをつけるという部分では難しかったです。曲調が急に激しくなったり、優しくなったりしても、その緊張感をライブに作用させるのではなくて、あくまでも「『Harmony』全体を通してサラッと楽しめるステージにしたい」という話もしていたので、そういう部分も含めていかに自分の手に馴染ませられるかが大変でした。

Mrs. GREEN APPLE大森元貴、突発性難聴と診断 それでもツアー乗り越えられた理由

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― これまで長く活動を続けられる中で、1年8か月の活動休止や、大森さんの突発性難聴などバンドで様々な苦難を乗り越えてきました。振り返って1番辛かったと思う時期はございますか?

大森:僕は、個人的にはやっぱり難聴と診断されてからのツアー後半戦が辛かったかなと思います。2023年の12月から2024年3月まで回ったツアー『The White Lounge』の途中で診断されたので、それを背負ってツアーを回るというのは僕としては1個課題というか、ハードルが高かった気はします。

― 気持ちが落ち込むこともあったのでしょうか?

大森:もうしょうがないというか、どこかにガタが来てもおかしくないような働き方はしていたので、妥当と言ったら語弊があるかもしれませんが、むしろ体調に顕れてくれて少しほっとしたぐらいの気持ちでした。ただやっぱり歌を歌うこと、音楽ということでいうと、歌声はすごく真ん中にあるものなので、それを届ける上でどうしても薬を飲みながら治療しながらのライブだったので、その副作用も含めて身体的な辛さの方が大きかったと思います。(若井・藤澤に)どう?近くで見ていても別にメンタルはやられていなかったよね?

藤澤:一概にどうこう語ることができない部分ではあるけれども、確かにメンバーからしても(大森のメンタルが)やられているという感じは見受けられなかったです。逆に元貴が1番落ち着いていました。

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― ツアーを続けるという決断をされるまでにメンバーの皆さんで話し合ったことはありますか?

大森:もう「続けます!」ということだけ。

若井:そうだね。1番は元貴が心配だったけど、その元貴自身から「ツアーを続ける」という言葉をもらったから、ツアーを全力で回りきるということにフォーカスを置きました。

藤澤:逆に僕らがとやかく言うことの方が1番元貴に対して失礼かなという風に思って。

大森:(おどけた表情で)「休んでもいいよ」とは言って欲しかったですけどね?言ってくれなかったので…(笑)。

若井:いやいや、心はもちろん「大丈夫かな」って心配してたよ!

藤澤:“言って欲しい待ち”だったの?(笑)

大森:全然心配してくれなかった…(笑)。

若井:「全然心配してくれなかった」とかじゃないよ!(記者に向かって)ちゃんと書いてくださいね(笑)。

藤澤:心配しました!大きく書いてください!

一同:(笑)。

大森:僕が後ろ向きなことを言わなかったから、後ろ向きなことを提案するのはお門違いだと思ったんだよね?

藤澤:そう。難聴もバンドのボーカルとして舵を取る立場も、その大変さ、辛さは元貴にしか分からないことなので、本人がやるんだと言っている以上は僕らがどうこう言うのはお門違いだし、失礼だと思った。「ツアーを続ける」という言葉を聞いて、なおさら「頑張るしかないでしょう」と決意しました。

若井:よりぐっと背筋が伸びましたし、元貴が歌だけでなく演技もダンスもいろんなことに挑戦している中で、ツアー中に自分たちがもっと引っ張っていけるところはないかということも考えるきっかけになりました。

― どういう部分で引っ張っていきたいと思ったんですか?

藤澤:サポートの演奏者の方々もいましたし、キャストの方々もいるツアーだったので、僕や若井が、一緒にステージに乗る皆さんや音響さん、ライブスタッフチームと話す機会、キャッチボールがより増えた記憶があります。

Mrs. GREEN APPLEがいろんなメディアに出る理由

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― その『The White Lounge』は『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』として映画化もされました。

大森:あまりライブを映画化するイメージがついていなかったのですが、ライブビューイングのように、ただライブ映像を映画館で流すのではなく、何か違った表現でライブと劇を融合させた“音楽劇”をできないかと話しました。完成した映像を観て「これが成立するんだ」と不思議な気持ちになりましたね。

若井:ライブとは違う映像作品ならではの見え方や細かいギミックがあって、自分たちで回ったツアーではありましたが、すごく楽しく見ることが出来ました。ステージに立っていると、他のメンバーのことはあまり見れなかったりするので、映像で僕らのステージを観た時に「実はここのメンバーこういう動きしていたんだ」「こういう表情をしていたんだ」という発見がたくさんありました。元貴は、あれだけダンスもして演技もして歌っている中でこんなに表情を使い分けていたんだ、細かいところまで表現していたのはすごいなと感心しました。藤澤は演奏している中でも曲に寄り添う指先の細かいタッチやフルートの演奏も素敵でしたし、劇場の支配人役として1人で語るシーンはとても迫力があって、一気に引き込まれました。

― そもそもどうして映画化しようと考えたのですか?

大森:ファンクラブ限定のツアーだったので観られない方がたくさんいたということを聞いて「どうやったら皆に届けられるだろうか」というところから映画化に至りました。ただ『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』に限らず、バラエティへの出演だったり、僕らがいろんなメディアに出ていくのは以前から「いろんなことをできる人たちだといいよね」という構想があったからです。というのも、僕が小学生の頃テレビで見ていた平成中期はアーティストの人たちがすごくメディアに出ていましたが、それ以降に“出る人”と“出ない人”の二分化が始まっていった感覚がありました。最近も新たなフィールドに足を踏み入れるバンドはあまり目にしなかった気がするので、その一環として今作のようにお芝居も絡んだ音楽体験への挑戦があったのかなと思います。

Mrs. GREEN APPLEの夢を叶える秘訣

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― アーティストとして大きく飛躍された今だからこそ、3人が考える「夢を叶える秘訣」とは何でしょうか?ご自身の経験から夢を叶えるためにこれまで努力されたこと、常に意識していることはございますか?

若井:僕が活動の中で「これをやっていたからきっと今に繋がっているんだろうな」と思うのは、地道なことから目を背けないことだと思っています。夢を見ることってどうしても「ゴールを思い描いて、そこでどうしよう」みたいなことばかり考えてしまいがちですが、それまでに自分は何をしなければいけないのか、毎日何を積み重ねなければいけないのか、に向き合うことがすごく大事だと思います。すごく地道なことだと思うのですが、それをいかにできるかどうかで変わってくるのかなと、活動してきて、僕自身とても実感しています。

昔からコツコツ何かをするのが好きだということもありますが、もちろんギターのこともそうですし、日々の習慣として「毎日これを続けているから今の自分があるんだろうな」ということばかりなので、向き合っている最中はすぐに結果が出ないようなことでも、後々に繋がっていることがたくさんあるとすごく思います。

藤澤:自分が振り返った時に「あの時ああいう風にしてよかった」と思うのは「アーティストになりたい」という1つの夢をちゃんと言葉にして、親や周りの人に伝えて、上京するというところまでアクションを起こせたことだと思っています。それで大森と若井にも出会えましたし、アクションを起こせたことは自分の過去の中ですごく肯定できるというか、自分に対して自信を持って「ここは良かった」と思えるポイントです。それまではずっとやらずにモヤモヤしていることばかりでしたが、やらない後悔よりもやってみて色々感じてみることの方が大事だと思ってアクションを起こすことができたので、それはすごく大事なことなのかなと思っています。

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大森:必要なのは“勘違い力”じゃないですかね。我に返ったり、人の目を気にしたりというのは、正常だったら起こる反応だとは思うんですが、そうではなくて「どこまで自分に勘違いしてあげるか」みたいなところが、何かをやり通す上ですごく重要なことな気がしていて、行き切ってしまえばそれってとても美しいと思うんです。僕は「自分が音楽以外で生きるビジョン」というのが学生の時点でなかったので…そんな“勘違い”ないじゃないですか。その根拠のない自信を持って、デビューをするのが夢ではなく「もうするものだ」と思ってやっていたし。改めてこの年齢になると自分にはそういった強さがあったのかもしれないと思います。

もちろんそれに対していろんな皺寄せや責任も伴いますし、後ろ指を差されることも傷つくリスクもあると思います。ある人から見たらとても情けなく滑稽に映るかもしれない。自分を信じることはなかなか難しいし「こう思われたらやだな」「どうしようかな」といろんな理由で1歩を踏み出せない人はたくさんいると思いますが、そんなことは気にしない鈍感力、“勘違い力”がとても必要だと思うんです。だから「とりあえず勘違いしてみなよ」と伝えたいです。

― 貴重なお話をたくさんありがとうございました!

(modelpress編集部)

PHOTO:赤英路

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Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)プロフィール

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2013年にバンドを結成し、2015年ミニアルバム『Variety』でメジャーデビュー。2019年12月に開催された初の全国アリーナツアー『エデンの園』では東名阪公演(8万人動員)を即日ソールドアウトさせるほど人気絶頂だったが、メジャーデビュー5周年記念日の2020年7月8日、初ベストアルバム『5』リリースと同時に「フェーズ1完結」を宣言し、突如活動を休止した。

約1年8ヶ月の休止期間を経て、2022年3月に「フェーズ2開幕」として活動を再開、その後『ダンスホール』『ケセラセラ』などリリースされた楽曲が軒並みヒットを記録。さらに2024年4月より5ヶ月連続でリリースすると、これまでストリーミング累積再生数1億回を突破した楽曲が20曲という偉業を達成。同年7月には日本のバンド史上最年少でのスタジアムツアー『ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~』、10月にはKアリーナ横浜にて10日間に及ぶ“定期公演”『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』を成功させた。これらの活躍から、モデルプレスでは2024年「今年の顔」にも選出している。

モデルプレスのオリジナル企画「今月のカバーモデル」2024年12月表紙:Mrs. GREEN APPLE/PHOTO:赤英路(C)モデルプレス
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