「パリピ孔明」衣装は全て手染め 原作と異なるこだわりポイントとは?<プロデューサー×スタイリストインタビュー>
2023.11.01 07:00
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俳優の向井理が主演を務めるフジテレビ系水10ドラマ「パリピ孔明」(毎週水曜よる10時〜)の八尾香澄プロデューサー、スタイリストのBabymix氏にモデルプレスがインタビュー。キャラクターそれぞれの個性に溢れる衣装について、同作ならではの発想、こだわりをたっぷりと聞いた。
向井理主演「パリピ孔明」
本作は、中国三国時代の天才軍師・諸葛孔明(向井)が現代の渋谷に若かりし姿で転生し、歌手を目指す1人のアマチュアシンガー・月見英子(上白石萌歌)のために、魔法のような作戦を考えては、彼女の前に立ちはだかる壁を軍師のごとく切り崩し、成功に導いていくサクセスストーリー。原作は「ヤングマガジン」(講談社)にて現在も連載中の人気コミックだ。孔明を含め個性的な衣装が勢揃いしている本作。そこには込められた意図やこだわりがたくさん詰まっていた。
「パリピ孔明」孔明(向井理)の衣装で正解だと思ったこと
― まず、孔明のファッションのテーマやこだわりを教えてください。Babymix:着物の襟や、裾のディテールです。それからグラデーションを使っています。これは三国志チーム全員に当てはまるのですが、画に奥行きを出したくてグラデーションを取り入れました。
― 向井さんだからこそ取り入れたアイテムはありますか?
Babymix:向井さんは何を着ても似合うので何でもできると思っていましたが、向井さん自身を大きく見せたことは正解だったなと思います。
八尾:肩パットを4枚ぐらい入れて肩幅を大きくしたり、お腹周りもふっくらさせたり、着物の袖などもかなりボリューム感のある作りになっていて、ご本人が普段より物理的に大きくなっています。英子と並んでいるときや、それ以外のキャラクターと並んだときも含めて、圧倒的な存在感を放つということが1つの特徴として表現できたように思います。諸葛巾とも呼ばれる頭巾を被っているのですが、それも通常より大きく作っています。体型から作り込んだのはBabymixさんのこだわりですね。
― 孔明の衣装は夏用もあると伺ったのですが、どのような違いがあるのでしょうか?
Babymix:背中の部分の厚みを抜いているのと、見えない部分の袖もメッシュになっています。通気性を良くしたり、生地を変えたりと少し細工しました。
「パリピ孔明」衣装を見たときの関口メンディーの反応
― アーティスト役の方々も個性的なファッションですが、共通したコンセプトなどはあるのでしょうか?
Babymix:英子とKABE太人(宮世琉弥)の2人以外は、「キャラが濃い人物が出てきたな」と視聴者にいちいち思ってもらえたらいいなと。孔明に劉備(ディーン・フジオカ)、関羽(本間朋晃)、張飛(真壁刀義)がいるみたいに、役の人がいて、その周りに付随する人、あるいはエキストラの人たちがいて、それが一目でチームだと分かるようにすることを心掛けました。
― 衣装を作る上で一番難しかったキャラクターはいますか?
Babymix:どのキャラクターも意見が分かれました。
八尾:でも、前園ケイジ(関口メンディー/GENERATIONS)は一発でハマりました。
Babymix:フィッティングルームの中でメンディーさんは「え、この短さ履くの…」と言っていましたが(笑)。とりあえず履いてもらって、いざフィッティングルームから出ると皆が絶賛していて、本人もこれでいきましょうと。
八尾:小林(森山未來)は全部をヒョウ柄にするか迷いました。脚本を読む限り、全身ヒョウ柄はキャラクターになり過ぎているではないか、と森山さんとも悩んだのですが。最終的に作品全体の世界観を考慮し、全身ヒョウ柄で勝負しようと決めました。KABEは決めるのに時間がかかりました。周りが個性の強い衣装にどんどん決まっていったので、最初の衣装合わせの時の衣装だとKABEだけが印象が薄くなりすぎるかもと思いまして。試行錯誤して今の形が見えたときにこれだ!とようやくしっくりきました。
Babymix:英子は原作、アニメ、それから実写化とそれぞれ違ってくると思うので、爽やかな感じをドラマでは生かしたいと思いました。英子とKABEが等身大で無理なく可愛く見えたら嬉しいです。本人らしく私服に近い見え方にできないかな、と上白石さんと接しているときに思ったんです。いろいろやってしまうと、良さが消えてしまうので、僕の持っている上白石さんの印象がそのままテレビの向こう側にも伝わってほしいなという気持ちはすごくありました。
― それを伝えるにあたって一番こだわった点はどこでしょうか?
Babymix:周りがモンスターたちなので、いかにニュートラルに見えるかを意識しました。表現方法は違いますが、周りがモンスターであればあるほど、英子がそこにブレずに等身大のままで、屈託なく存在しているという部分は、原作と共通していると思っています。
「パリピ孔明」ならではの挑戦
― 本作だからこそ挑戦したことはありますか?八尾:昨今のドラマは着替えることが多い印象なので、登場人物に対して代表的な衣装を1つ、しっかり作り込むことはなかなか無い挑戦だったと思っています。
― 衣装はどのように作っていったのでしょうか?
八尾:まずBabymixさんに原作、脚本を読んでいただいて、1人1衣装で通そうと思う、という提案をもらいました。このキャラクターといえば“このビジュアル”というベストな一着をずっと着せていくのがこの作品に合っているのではないかと。それは孔明に限らず、赤兎馬カンフー(ELLY/三代目 J SOUL BROTHERS)、KABE、RYO(森崎ウィン)も同じです。他の登場人物も、ミア西表(菅原小春)はトレーニング中とステージ上で衣装を変えたり、久遠七海(八木莉可子)はステージ上と回想シーンは変えていますが、それ以外は基本的に衣装替えはありません。キャラクターを象徴する一着を作る中で、英子だけ衣装が変化していくというコンセプトはBabymixさんのアイディアです。
Babymix:当初は孔明はあえて現実味のないピカピカ、キラキラでいいのかなと思っていたのですが、演出の渋江修平さんのご要望でボロボロにしました。煙を出したいというアイディアも出てきたので、穴を開けてさらにボロボロにして、スタート地点よりはかなり汚しを入れている状態になっています。
― 1から作ったのでしょうか?
八尾:三国志の衣装は全部1から作っています。
Babymix:孔明がある程度決まれば、他の人の着物もそれなりにできますが、劉備の鎧には一番苦戦しました。
八尾:まず、中国の鎧や甲冑は日本になかなか無くて、孔明の漢服は3層4層と重ねて作り込んで、劉備たちの漢服も同じように作っていたのですが、次に出てきた問題が鎧をどう作るかでした。だからといって鎧を着ているシーンを0にはできないと悩んでいたときに、Babymixさんが京劇の衣装を見つけてきたんです。「これを改造したら鎧になる」と言い始めたときは、「何言ってんだろう」と思っていたのですが、レンズを通して見ると本当に鎧っぽく見えるので不思議です。
Babymix:元にした京劇の衣装の二の腕あたりにフリンジが付いていて、ここにフリンジがついているんだったらなんでもありだなと思い、陸遜(市瀬秀和)の鎧を作る時にもいろいろつけました。再現だけにならないように三国志をよりアートにしたいという思いが入っています。最初、着物の上に羽織るベールのようなものは、劉備には作っていなかったんですが、やっぱり寂しいから作ってほしいと言われて(笑)。それは後から作りました。
八尾:リアリティーとは少し離れていますが、作品の説得力が増すものを作ってくれました。
Babymix:京劇にたどり着いたのは個性的な発想だと思うので、それは「パリピ孔明」に合っていたのかなと思います。
「パリピ孔明」衣装染めは全部手作業
― どのくらい製作に時間をかけたのでしょうか?八尾:全部手で染めてますもんね。
Babymix:着物制作の方も染色家の方も全く妥協せずに何回もやり直しをして頂けました。染色家の方は染めを下から上に単純にグラデーションにすることは生地目の状況から単純作業では難しかったので、その手間暇がすごくかかったようです。1着にどのぐらいの費用が掛かったかは言えませんが、労力は実費のおそらく3倍、4倍掛かっています。そのくらい時間がかかりました。
「パリピ孔明」原作と変えた理由
― 原作よりゴージャスな印象を受けますが、原作と違う色使いにした理由はなんでしょうか?Babymix:この作品はアーティストが多く出てくるので、作品そのものがアートだったらいいなという思いからです。一番身近なアートはファッションだと思っていて、それは突き詰めると人そのものがアートなのかなと。原作を読ませていただいたときに、キャラクターたちがアーティスティックに出てくる作品だと感じたので、皆が「アートを着ている」という印象で作れたらいいなと思いました。リアリティーよりは、アートを意識しています。
― トレンドを取り入れた部分はありますか?
Babymix:作っているときは全く考えていなかったのですが、今年の秋冬はヒョウ柄がトレンドらしいです。この仕事をしているとそのようなシンクロをするときがあります。自分のやり方でいくと少し古臭くなってしまうので、今っぽさがなくならないように今シーズンのブランドも使いながら、古着も使っていくようにしています。作品の個性かもしれませんが、「パリピ孔明」ほどカオスなものはないです。映画はコンサバティブに作るので流行がないですが、ドラマは流行を入れることができるのが良さだと思っているのでそこを意識しています。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
「パリピ孔明」第6話あらすじ
月見英子(上白石萌歌)は超大型フェス・サマーソニアの出場権を賭けて、SNSでの10万イイネ企画に参加。諸葛孔明(向井理)の計略により、ライバルである3人組アイドルユニット「AZALEA(アザリエ)」の10万イイネ企画を乗っ取るべく、ゲリラライブ会場を突き止め、AZALEAのフリをして歌うという作戦を決行する。KABE太人(宮世琉弥)が操作するドローンによりQRコードが出現。AZALEAのQRだと勘違いした客たちは100万円を求め、次々にスマホをかざす。これはかつて孔明が「赤壁の戦い」で用いた策だと気づくオーナー小林(森山未來)。英子のSNSのイイネの数は爆発的に伸びていく。しかし観客はステージにいるのが本物ではないと気づき始め…。
そこへ、本物のAZALEAのステージトラックがやって来て、2つのステージが向かい合う。AZALEAのパフォーマンスがスタート。果たして英子はAZALEAの勢いを止めることができるのか?そして、ついに完成した『DREAMER』お披露目の時が迫る。
【Not Sponsored 記事】
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