吉沢亮「立ち上がれなくなるくらいの衝撃受けた」6年前の観劇 「一番怖い」舞台に再び立つ理由<インタビュー>
2021.02.27 05:00
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放送中の大河ドラマ「青天を衝け」でまさに“青天”の如く快活な主人公・渋沢栄一を好演する俳優の吉沢亮(27)が、また大きくベクトルの異なる作品に挑む。来年1月より世田谷パブリックシアターで約7年ぶりに再演される舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』。極限状態であぶり出される人間の残酷さを描くストーリー、白井晃氏による演出、そして一度幕が開けば逃げ場のない板の上で、改めて芝居の本質に真っ向から向き合う決意を固めている。
6年前の鑑賞体験「立ち上がれなくなるくらいの衝撃」
イギリスの劇作家、フィリップ・リドリー氏が2005年に書き下ろし、日本では2015年に白井氏の演出によりシアタートラムで初演。過酷な状況下で生きること、愛することを渇望する兄弟の物語は、これまで白井氏が演出を手掛けたリドリー作品の中でもより過激な表現、挑発的なセリフが次々と繰り出される作風で観客に衝撃を与えた。当時21歳、連続ドラマに引っ張りだこの最中で、高橋一生と瀬戸康史が演じる初演を観劇し「立ち上がれなくなるくらいの衝撃を受けた」という吉沢。
「ドストレートで転換も一切なく、時間を飛ばして描くこともない。その中で物語が進んでいき、色んなことが明らかになっていくという作り自体がすごいなと思いましたし、それをずっと飽きさせずに見せられることに本当に衝撃を受けました。こんなに突き刺さる作品があるのかと。ストーリーもすごくダークなんですけど、そういうのが大好物な僕にとっては刺さる要素ばかりで。皆さんのお芝居も本当に素晴らしかったです。芝居以外何もできない状況というか、何のごまかしもきかない。その中で必死になっている役者の皆さんが魅力的に見えて、『すっごい羨ましい』と思った記憶があります」
そんな忘れがたい鑑賞体験を経て昨年、オファーを受け「素直に嬉しかったです。あの時からずっと『マーキュリー・ファーみたいな舞台をやりたい』とずっと憧れていた世界観だったので、実際にやらせていただけるのはありがたいです」と喜びを語る。さらに今回、吉沢演じるエリオットの弟、ダレン役には映画『さくら』(2020)、『東京リベンジャーズ』(7月公開)などで共演してきた北村匠海(23)が決定。
「エリオットとダレンの兄弟愛には、匠海との信頼関係も反映してくると思うので、そこも楽しみな部分です。役者としての彼は面白いし、無駄なことをしないというか、役者が芝居をする上ですごく理想的なことをやっているなと毎回思わされます。前まではすごく繊細な男の子を演じているイメージがあったんですけど、『東京リベンジャーズ』で三枚目的なポジションもできるんだ、さすがだなと思う部分もあり。舞台は芝居で会話をする瞬間が今まで以上に長いと思いますし、今まで一緒にやらせてもらった作品とは全然違う関係性なので、また新しい表情が見られるんじゃないかとすごく楽しみです」
同じ役者として圧倒的な信頼を置く北村とは、複数回の共演を経て「こんなご時世でなければ週に一回は飲みたいくらい(笑)」とプライベートでも交流。「『さくら』で兄弟をやったのが大きかったと思います。撮影後はほぼ毎日お互いの部屋で飲んでいたので、すごく居心地のいい存在になりました。最近現場で会ったときは、お互いの仕事の話とか、それこそ『また次の舞台楽しみだね』って話とか。普通に同い年の役者と話している感覚ですし、彼の方が賢いので、はたから見たら全然僕の方が弟みたいな感じになってると思います(笑)」とその関係性を明かしてくれた。
「一番怖い」舞台に再び立つ理由
デビューから約11年のキャリアの中で、その出演歴には定期的に舞台作品が並ぶ。昨年末には自身初のミュージカル『プロデューサーズ』で歌と踊りの新境地を魅せたことも記憶に新しい。吉沢にとって舞台作品は「やらなければ」という意識で自らに課すもの。
「舞台がやっていて一番怖いんですけど、学べることが一番大きいのも舞台なので。『プロデューサーズ』もかなり大きな経験になりました。コメディというのもあり、お客さんの反応も毎回変わるんです。わかりやすく反応が返ってくるから、芝居しながら『今のは違うんだ、今のはいいんだ』という風に探っていくことの繰り返しでした。言ってしまえば、自分の役に入っているように見せかけて意識はずっと客席のほうにあるんです。自分で言うのもあれなんですけど、器用なことやってるなと(笑)。
だから今までにないくらいセリフを噛んだり、セリフがいきなり出てこなくなったり、したことのない経験をした舞台でもありました。一回、歌ってる時に全く声が出なくなった瞬間があって。本当にあの時は『夢かな』と思いました。夢でも見てるんじゃないかってゾッとするような瞬間だったんですけど、そういう瞬間も見えている部分は変えちゃいけない。あの回に来てくださった方にはすごく申し訳ないと思いますが、どんな状況だろうとその場でやり遂げるタフさみたいなものは大事だと改めて思いました」
『マーキュリー・ファー Mercury Fur』公演中には28歳に。30歳という節目も見えてきた吉沢は同作でどんな姿を見せてくれるのか。
「こういう作品は何も嘘がつけない。ただその場で生きていなければいけないじゃないですか。その場で流れる出来事をちゃんと拾って感情を動かしていくという、当たり前のことなんですけど、それがどの作品よりもごまかしがきかないという気がするので、本当に役者として当たり前のことを見直す機会になりそうです。新しい一面を見せてお客さんに楽しんでもらいたいという気持ちはもちろんあるんですけど、今はどちらかと言えば役者として基礎の部分を鍛え直してもらいたいという気持ちです」
目下撮影中の「青天を衝け」は初回視聴率が20.0%(※ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、2013年の「八重の桜」以来8年ぶりの初回20%越えという快挙。「安心はしました。でもこういうご時世というのもあるし、(前作の)『麒麟がくる』があれだけ話題になっていたこともあるので、すごく嬉しいしありがたいことではありますが、やることは変わらず、気を抜かず、全力でやらなければと思っています」と改めて気を引き締めていた。(modelpress編集部)
『マーキュリー・ファー Mercury Fur』公演概要
作:フィリップ・リドリー演出:白井晃
翻訳:小宮山智津子
出演:吉沢亮 北村匠海 ほか
日程:2022年1~3月
会場:世田谷パブリックシアター
※長野(松本)、新潟、兵庫(西宮)、兵庫(神戸)、愛知ほかツアー公演あり
<ストーリー>
ボロボロの部屋にエリオット(吉沢亮)とダレン(北村匠海)の兄弟がやって来る。ふたりは急いでパーティの準備にとりかかる。そこに青年がひとり偶然顔を出し、「バタフライ」が欲しいので手伝うと言う。しばらくするとローラと呼ばれる美しい人物と、パーティの首謀者らしき男が謎の婦人を連れてやって来る。彼らの関係は…?そして彼らの会話の中で語られる、バタフライの秘密とは…?やがて、きょうのパーティゲストが到着するが、用意した「パーティプレゼント」に異変が起きて、事態は思わぬ展開に…
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